ジャコウネコの一日
2015年11月20日付 Prothom Alo紙
4~5人の子供たちが家の前の中庭に座ってビー玉で遊んでいる。中庭から少し離れたところにヤシの木がある。その木の根元に澄んだ水をたたえた池がある。池のまわりにはイバラのやぶが広がっている。池に熟れたヤシの実が落ちて大きな音をたてた。その音に驚いて、やぶの中から5匹の動物が飛び出してきた。それを見た子どもたちはビー玉を放り出し、わあわあ叫びながらあとを追いかけた。中庭にいた3匹の犬もそれを見て、吠えながら走ってくる。5匹の生き物はあわてふためいて、遠くの庭を目指し、命がけで逃げていく。犬たちに捕まえられそうになったその瞬間、生き物たちは尻尾を少し持ち上げ、臀部にある分泌腺から黄色っぽくて臭いガスを噴射した。まるで催涙ガスだ。ひどい臭いの刺激性のガスが目や鼻に入って、犬たちは一時的に視界を失ってしまった。そのチャンスに5匹は牛小屋に走り込み、棚の上に難を逃れるが、それでも危険が去ったわけではない。子どもたちが杖や棒を手にしてやってきて、犬3匹も追い付いてきたからだ。そのため5匹は牛小屋のヤシの葉で葺いてある傷んだ屋根のすきまから屋根にのぼった。そして牛小屋の上におおいかぶさるように枝を広げているマンゴーの木に移り、てっぺんまで登った。そこからすぐ横の木をつたって下の方向に走り、さらにもう1本の木の上に跳び乗り、転がるようにして地面に降りると、近くに山積みになっていた古い煉瓦の中に姿を消した。
こうして母親とまだ若い4匹の仔は、その日は何とか生きながらえたのだった。
バドロ月の30日、西暦の9月14日、バゲルハト県フォキルハト郡のある村での出来事だった。催涙ガスは自衛のためだ。そのガスが噴射された部分のすぐ横にはもうひとつの穴があって、そこからは粘りけがあって良い香りのする物質が出る。その物質は麝香と呼ばれる。
この動物―ジャコウネコは、顔つきや長い尻尾など、見たところ家庭で飼われるネコによく似ている。身体は茶色で、尻尾には大きめの黒くて丸い模様が7つある。喉のところには黒くて幅広の線が2本。背骨に沿って茶色の6本の模様があり、尻尾の付け根に向かって走っている。丸い斑点が全身に広がり、身体は長めで足は短い。温和な性格のジャコウネコは、バングラデシュでは地域によりゴンドゴクル、チョトバグダシュ、チョトカタシュ、ゴンドグロ、ハイルタラなど様々な名で呼ばれている。フォキルハトやバゲルハトあたりではゴイラとして知られている。英語名はSmall indian civet。学名はviverricula indica。体長は尾を含めて90センチメートル。体高は22センチメートル。重さは2~3キロで寿命は15年ほど。
ジャコウネコが暮らすのは人間の住まい近くのやぶ、草地、人が住まなくなった家の棚などだ。しかし人間はジャコウネコを受け入れるどころか、まるで仇のように駆除を続けてきた。我が国では伝統的に行われてきたことと言える。ジャコウネコは様々なものを食べる。各種のネズミやリス、鳥とその卵、カエル、カタツムリなどがその食料となる。機会があれば人間が飼っているアヒル、ニワトリ、子やぎも狙う。果物は何でも食べる。ヤシやココナツの汁を好む。噛みつく力は信じられないほど強い。危機に瀕したとき、犬の鼻や顔に噛みつけば振り払うのは容易ではない。
ジャコウネコは年に少なくとも二回出産する。毎回の出産で三匹から四匹の仔が生まれる。太い木のうろや山地・丘陵地の地面の割れ目で子どもを産む。地面に穴を掘って産室とすることもある。
50年ほど前まではバングラデシュのどこでもジャコウネコの姿を見ることができたが、今はほとんど見られなくなってしまった。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
(翻訳者:シャンティ)
(記事ID:458)