バングラデシュのブラジル・アルゼンチンへの熱狂に世界が驚愕
2018年06月14日付 Prothom Alo紙
ブラジルファン?それともアルゼンチンびいき?ワールドカップの時期、バングラデシュではお馴染みの質問である。しかしながら、この問題は今や、質問やどちらを応援するかといったことにとどまらなくなってきている。この国でブラジルとアルゼンチンのサポーターたちは、流血を伴う衝突まで繰り広げているのだ。この状況は世界メディアの目に留まることになった。
ワールドカップに熱狂は付き物である。それが明るいお祭り騒ぎなら恐らくよかったことだろう。しかし、その熱狂ぶりが暴力沙汰になったら、それは恐ろしいものである。バングラデシュでは多くの場合、ワールドカップの応援になると人は善悪の判断が出来なくなってしまう。
ブラジルもしくはアルゼンチンと何のゆかりもないのにも関わらず、サッカーのワールドカップの時期になると、この国の人々は命を賭してまでこの2国に対する見境のない応援に没頭することになる。そう聞いて驚くだろうか。しかし、事態は文字通りの意味で命を捧げるような醜い様相を呈していて、そのことが今、世界の注目を集めているのだ。
前回のワールドカップ開催中にも、ラルモニルハットで起きたブラジルとアルゼンチンのサポーターの間の衝突で、ホテルの従業員が亡くなるという事件が起きた。しかし、今回はサポーターたちは、ワールドカップが始まるまで待つことはできなかった。先週、ナラヨンゴンジュのボンドル郡でブラジルとアルゼンチンのサポーターがナイフや鉈を持って流血騒ぎを起こした。AFP通信社によれば、これは2つの国というより、リオネル・メッシとネイマールという個人の選手のサポーターたちの争いだったというのだが、それはともかくとして、この衝突で重傷を負った父子は今も死の淵をさまよっている。
それだけではない。ワールドカップの時期になると必ず新聞に、どこぞのチームの国旗を掲揚しようとして電線に触れ、感電して誰々が亡くなった、といった記事がでる。犠牲者が子供、青年、年配者なのかに限らず、このように死を迎えることは望むところなのだろうか。断じて違うはずだ。しかしそうしたことが実際に起きているのだ。今回は電柱にブラジルの国旗を掲げようとした12才の男の子が感電して、若い命を散らせてしまった。
AFP通信は、ラテンアメリカの強豪国と何のゆかりもない、自国のチームはFIFAランキングで211か国中194番目で、自国が大会に参加しているわけでもないのに、バングラデシュの国中がワールドカップフィーバーに浮かされている、と伝えている。好みのチームの国旗をかけることに対するこの国の国民のおかしがたい無知蒙昧さについてAFP通信はさらに次のように述べている。「1億6千万の人々の住むこの国の都市はブラジルやアルゼンチンの国旗で溢れている」
実際には都市だけではなく、村でも国旗をかかげるお祭り騒ぎが起こっている。そして特定の選手または国を応援する人たちのグループが作られ、いたるところでミーティングに次ぐミーティングが開かれている――愛するチームのためにさらに何ができるのか、ライバルのグループは今日これをやっている、だから俺たちは明日それ以上の何かをしなければならない、といったことがミーティングの話題である。そして町の一番交通量の多い道路を占拠してオートバイで行進をしたり、炊き出しをしたりするのはお馴染みである。しかし、世界のメディアにとってそれは恐らく目新しいことなのだ。例えばAFP通信が、マダルゴンジュでは何千人もの人が好きなチームの国旗を手にオートバイで行進していた、と伝えたように。
ある弁護士は、ワールドカップの時期に外国の旗を掲げることの禁止を求めて、裁判所の処分を申請することさえ行った。ワールドカップでのバングラデシュ人サポーターの熱狂ぶりについて、AFP通信はこう書く――「バングラデシュは一度としてワールドカップ出場の機会を得ていないにも関わらず、4年毎にこのイベントに熱狂する」
・この熱狂ぶりの起源は?
80、90年代の学校の教科書には、ペレのことが載っていた。ブラジルの「黒い宝石」は当時から、バングラデシュで知られた名となり、ブラジルに対する応援熱も高まった。そして1986年のワールドカップでアルゼンチンはバングラデシュ人の心を奪った。ディエゴ・マラドーナの魔法にかかったのだ。まさにこの時期からこの国では、ブラジルとアルゼンチンのサポーターによる対決が始まった――あるベテランのバングラデシュ人スポーツ記者は、AFP通信にこのように説明した。ペレとマラドーナの対決だけでなく、ロナルド・バティストゥタ対ロナルド・オルテガ、今ではメッシ対ネイマールをめぐってサポーターたちの間で対決が起きている。「しかしそうしたサポーターたちの多くは、ブラジルやアルゼンチンがどこのあるのかさえ知らないのです」こう話すのはダカ大学社会学部のネハル・コリム教授である。あるバングラデシュ人作家はこう問いかけている――「アルゼンチンのサポーターが家の屋根に国旗をかけることに喜びを見いだしているとしたら、それに文句をつける権利は誰かにあるのだろうか」
いや、その趣味嗜好自体には誰もそれほど反対するわけではない。ただ、応援の名の元に流血騒ぎが起きることは誰も望んでいない。にもかかわらず、ワールドカップの時期になると、この国ではそれが定期的に起きているから、世界の名のある報道メディアがAFPの提供した記事を大々的に取り上げたのである。これにより、バングラデシュの名は上がったのか、はたまた下がったのだろうか?
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(翻訳者:宗優樹)
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