日本の志村けんはこうしてベンガル語で「カイシャ」となった
2020年04月01日付 Prothom Alo紙


日本のコメディアン・志村けんがコロナウイルスに感染し去る3月29日に亡くなった。1950年2月20日に日本の東京市 [訳者注:東京都] で生まれたこのベテラン俳優はバングラデシュの多くの人に「カイシャ」の名で知られている。「パグラ・ディレクター(おかしなディレクター)」という名のYouTubeチャンネルが彼を有名にした。志村けんがベンガル語でどのようにして「カイシャ」となったのか、チャンネルを運営する2人の技術者に話を聞いた。
「パグラ・ディレクター」はモルシェド・アフメドとモンスール・アフメドという2人の兄弟が運営するYouTubeチャンネルだ。モルシェドはシュジョンという名前で人々に知られており、モンスールは皆がショジブという名で知っている。2017年、モルシェド・アフメドがお笑いのビデオを公開しようと「パグラ・ディレクター」チャンネルを立ち上げた。それ以前民間テレビ局のビデオエディターだったモルシェドによると、2人はもともと、YouTubeの著作権基準を順守して、色々な言語の古いコメディシリーズを吹き替えていた。その一環として2018年1月に志村けんのシリーズ作品を始めたのだ。ベンガル語に吹き替える時には、モルシェドと共に彼の家族のメンバーらが色々なキャラクターの声を担当した。しかし志村けんの声は初めからモンスール・アフメドが担当していた。
「世界で最もおかしなドア」という名前で最初のビデオをYouTubeにアップロードしたところ、良い反響があった。2018年1月23日に公開されたこのビデオはこれまでに900万回以上視聴されている。モンスール・アフメドは「その後『世界最高の列車強盗』という名前のあるエピソードを私は吹き替えました。そこでは志村けんが老人に扮していました。初めのビデオには生まれつきの声を当てましたが、そのビデオでは声も少し変えて当てました」と語った。

「カイシャ」と名付けた
ビデオが人気になり始めた頃モンスール・アフメドは考えた-メインキャラクターに面白い名前を付けたらどうだろう!そして兄のモルシェド・アフメドにその考えを話してみた。するとモルシェドは提案した―「カイシャ」はどうだろう。なぜこのような名前だったのか?モルシェドは言う。「私たちは(バングラデシュ東南部の)ノアカリの人間です。ノアカリではカイシャという言葉を、『ダメなやつ』というような見下した意味で使うのです。色々なエピソードで志村けんは警察、医者、会社の幹部、泥棒など様々なキャラクターとして登場しますが、ほとんど場合キャラクターは失敗する人であり、何かしようとしても大抵しくじってしまいます。それでカイシャという名前が頭に浮かんだのです」。
それからカイシャという名前でモンスール・アフメドは新しいエピソードに声を当て始めた。2人はこれまでに200以上のエピソードを作った。「私たちのチャンネルは今までに約3億9000万回以上視聴されました」とモルシェドは言う。

モルシェドの日本旅行
 志村けんの名をモルシェドが初めて知ったのは2005年だった。モルシェドが19歳の時である。その年、モルシェドは家族の一人の協力で日本に行った。人生を変えることを目的としたその日本滞在は長期のものではなかったが、滞在中にテレビで志村のかなりの数のシリーズを見た。ただ、この日本人俳優のエピソードを吹き替えたいと思うようになったのは、ある知人がきっかけとなった。モルシェドは言う-「YouTubeチャンネルを立ち上げて少したった頃、ある人がひとつのリンクを送ってくれたんです。それは志村けんのシリーズのひとつでした。私は日本語がいくらか分かるので、その能力を役立ててスクリプトを作りました。内容は自分なりに変えていますけどね」。

夢は叶わないまま
 モルシェド・アフメドとモンスール・アフメドは今、ノアカリの自分たちの家にいる。3月30日、(記者は)2人の兄弟と話した。志村けんの訃報に兄弟の家族たちが悲しみに暮れている。モルシェド・アフメドはプロトム・アロ紙にこう語った-「あるYouTubeチャンネルが人気になるということは、経済的に利益を得るということ、社会的に名声を得るということを意味します。私たちはそれを志村けんを通じて得ました。昨夜彼の訃報を知りましたが、それを私たちは受け入れることができません」。
 モンスール・アフメドは言う。「志村けんの声と私のしゃべり方はもともと似ていました。だから声を吹き替えることには苦労しませんでした。私たちは楽しんで仕事をしました。ある時点で、知らないうちに志村けんと自分が一体になったような気がします。志村けんと連絡を取りたいと強く願っていましたし、そのための努力もしたのですが、あれほどの大物俳優と連絡を取るのは簡単なことではありません。でも今やその期待も永久に断たれてしまったのです」。
夢を実現できなかっただけに、ユーチューバーの兄弟は志村けんの作品をもっと広めていきたいと思っている。2人は「カイシャ」シリーズの新しいエピソードを通して、この人気俳優をバングラデシュの視聴者たちの内に生かし続けていくだろう。

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(翻訳者:高橋瑞季)
(記事ID:869)