部屋は手放しても希望は捨てない
2021年01月10日付 Prothom Alo紙


 3月の初め、ショフィクッラは多くの学生と同じように村の実家に帰った。ダカにあるジョゴンナト大学の学生、ショフィクッラの父親は1年前に亡くなった。村に戻ってはみたものの、兄のごく僅かな収入では生活するのが困難だ。家族のそんな状況を知ってショフィクッラはまたダカにやってきた。前やっていた家庭教師の仕事をまた始めた。家族を支えるために就職の準備をするにはダカにいることが必要だ。今はオールドダカのナリンダ地域で暮らしている。
 
 ショフィクッラは言う。「こちらに戻ってきてからは大家さんが家賃を下げてくれました。でも年が明けた早々、また家賃をあげると言ってきています。前は学生10人で一緒に下宿の共用部屋を借りていたんですが、今は6人になりました。下宿代も上がりそうだし、食費も増えています。だから下宿を引き払って、みんなで別の家を探しているところです」

 ショフィクッラのようなカレッジや大学に通っている多くの学生と話をしてみた。キャンパスは長い間封鎖されたままだ。通学のために下宿の共用部屋 や家を借りている学生たちは今どうしているのかを知りたかった。

新たな年、新たな始まり

 昨年の3月、政府は教育機関の閉鎖を発表した。実家に帰っていった学生の多くは借りていた家や下宿を引き払った。しかし今ではInternational University of Business Agriculture and Technology (IUBAT) や Northern University Bangladesh のような私立大学では4年生の実習や試験が始まっている。ダカ大学でも様々な学部・学科がそれぞれの取り組みとして試験を開始した。そのため学生たちはふたたびキャンパス近辺に戻り始めている。 もちろん、勉強や就職の準備、家庭教師の仕事 など様々な用事でそれ以前に戻ってきた学生もいる。学校の寮が閉鎖されているので、学生たちは自分の手で住むところを都合せざるをえない。

 家庭の経済的な理由でダカに戻ってアルバイトを探している学生も少なくない。携帯のネットワークやインターネットの問題で田舎にいてはオンライン授業を受けることが難しいことから、いったん下宿などを解約した学生が再びダカに来て家探しをするケースが多い。ほぼ1年田舎で過ごして退屈してしまったため、新たな年に新たな生活を始めようと戻ってきた学生もいる。

 ジョゴンナト大学のマスコミ・ジャーナリズム学部のでは、54名の学生が大学院一年生として在籍している。そのうちの少なくとも半分がダカに戻ってきた。ほとんどが家庭教師やアルバイトのためだ。同大学の英語、歴史、観光、経済、会計学、心理学、薬学部などの学生と携帯電話で連絡したところ、いったんダカから実家に帰っていた学生の半分以上がまた戻ってきていることが分かった。

 ダカ大学の会計学部の学生アラウッディンは、バングラデシュ上級公務員試験(BCS)の試験を受けて公務員として働くことが夢だ。そのための準備も始めた。コロナの始まりごろ、クミッラにある実家に帰ったが、12月になって再びダカに戻ってきた。12人の学生と借りていた下宿の共用部屋は昨年8月に解約して、今はまた新しい下宿で暮らしている。

つらい下宿の家賃

 下宿に住んでいないにもかかわらず、長期間にわたって溜まった家賃を払い続けている学生も少なくない。大家の中には、学生がいないうちに家具や書類を廃棄してしまった人もいるということだ。このようなトラブルの後もまた新しく部屋を探し、新しい住所に落ち着こうと頑張っている多くの学生がいる。長い間一つの共用部屋で一緒に暮らして馴染んでいた人たちと別れた学生たちは、また新しい環境に適応することを強いられている。

 オールドダカのリシケシュ・ダシュ通りで貸家業を営むカラム・ボコシュは言う。「家作は2軒あって、20の部屋のうちの15部屋を近隣のカレッジや大学の学生に貸しています。コロナ禍のなか5部屋解約ということになりましたが、また学生が暮らし始めています。そうした人たちのために月2000タカずつ家賃を下げました」

 首都ダカの公立コビ・ノズルルカレッジのセリム・ウッラ学長は「政府の制限が行われている今、学生たちは戻ってこないほうが良いと思います。しかしすでに戻ってきている者に対しては、学校側からは健康上の安全策を順守し、気をつけて行動をするようメッセージを送ります」と語った。一方ジョゴンナト大学のモストファ・カマル管理官は「学生たちは生活のためにダカに戻ってきています。戻ってきた者には安全に気をつけるように言うつもりです。大学では各部局が開いているので、管理部としては必要に応じて学生の支援を行っていきます」と話している。

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(翻訳者:エムディファヒム)
(記事ID:931)