最高裁判所の歴史的な判決
2022年04月09日付 The daily Jang紙

国民議会(=下院)に提出されたイムラーン・ハーン首相に対する不信任案が下院副議長によって破棄された後に起こった状況、事実憲政上の危機が浮上した訳であるが、ウマル・アター・バンディヤール最高裁長官を長としてエージャーズル・アへサン、マズハル・アーラム・ハーン・ミヤーンヘール、ムニーブ・アフタル、ジャマール・ハーン・マンドゥーヘールの計5人の判事から成る大法廷は即座にこれに注意を払いつつ、4日連続の審理で両当事者に主張に耳を傾けた後、全員一致の歴史的な判決を下しつつ、副議長の裁定が違憲であると断じて、これを無効とするにとどまらず、国民議会を元の状態に回復しつつ議長にイムラーン・ハーン首相に対する不信任案の採決で本日4月9日に国民議会を召集するよう命じた。最高裁判所はイムラーン・ハーン首相に対する不信任案を破棄するというカースィム・ハーン・スーリー副議長の4月3日の裁定と首相の勧告に基づきアーリフ・アラヴィー大統領による国民議会解散の行為は憲法と法律に抵触し、如何なる法的な効力も有しないものと断じた。また最高裁判所は、首相の議会を解散するようにという助言も無効であるとし、国民議会を4月3日以前の形に回復した。最高裁判所の命令に従い、本日土曜午前10時に国民議会が開かれる予定である。そこで野党連合が共同で提出した不信任案の採決があり、不信任案可決の場合にはすぐさま新首相選出に移る。ただ、もし不信任案否決の場合は現政権が従来通り政権を担当する。野党連合は、この歴史的な判決を自身や与党ではなく、憲法の勝利と位置付けた。憲法や法律の専門家によると、このすばらしい判決では民主主義と法の優越を顧慮し、再度頭をもたげてきた「必要性の法理」*を未然に抑えたという。最高裁判所のこの判決に照らして与党は否応なく不信任決議に直面せざるを得ない。これにしくじれば与党は下野する。また、先延ばしになった多数の憲法上の問題に目を向ける必要がある。与党野党を問わず勝敗を自分やもしくは自分党の問題とするべきではない。このプロセス全体は憲法、議会、そして民主主義の優越に条件づけられている。すなわち、ただ与党となってこそ国家と国民に奉仕するのではなく、野党もこのプロセスにおいて与党と同じくらい重い責任を負っているからである。現在世界の目はパキスタンの動向を注視している。なぜなら世界的な状況の中で政治的、経済的そして地理的な点でこの国は世界にとって重要性をはらんでいるからである。不運にも74年間に亘り続いた政治的不安定がもたらした経済的損失については誰に目にも明らかである。民主主義と憲法の尊重をバネにこの法を巡る戦いに勝利した野党連合と与党両者の手に国の将来が委ねられている。当面最大の難題はインフレへの対処である。ドルに対してルピーの価値が1日で3ルピーも下落し1ドル190ルピーの相場にまで到達したことや不信任案のこの1ヶ月間で4億ドルを超える資本が海外に流出したことは懸念される。経済の専門家の試算では国家の持続的な経済発展のためには毎年64億ドルの海外直接投資FDIが必要である。与党野党を問わずその狙いは、現在の経済的、政治的行き詰まりを打開し、あらゆる点で状況を正常化することでなくてはならない。これこそが真の課題なのであるが。
*訳注:公共の秩序や国家の安全を維持するために行うことが必要である場合、その行為の違法性が阻却され、合法なものとして正当化されるという法理で、パキスタンにおける度々の軍事クーデターなどの際にその正当化のために度々持ち出されてきたという経緯がある。

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(翻訳者:小野三冬)
(記事ID:1056)