インドの紙幣廃止でバングラデシュ人も混乱

2016年12月05日付 Prothom Alo 紙

(11月23日付)数日前インド政府が500ルピー札と1000ルピー札の紙幣を廃止したことでインド中が大騒ぎとなっているが、その影響は現在インドを旅行しているバングラデシュ人観光客にも及んでいる。インドはバングラデシュ人に人気の旅行先のひとつだ。バングラデシュ人は主に病気の治療、観光という二つの理由でインドを訪れる。それ以外に1947年の印パ分離独立後、離ればなれになってしまった家族や親戚と会うため西ベンガル州をはじめとするインド各地を訪れるヒンドゥー教徒もいる。
インドを旅行中の約9割のバングラデシュ人は紙幣の使用が認められなくなったことで困難な目にあっている。コルカタにあるバングラデシュ総領事館は、そうした人たちを援助する手段を全く講じていない。救済に乗り出したのはショナリ銀行のコルカタ支店のみだ。
今回インドに行ったバングラデシュ人は様々な問題に直面している。500ルピー札や1000ルピー札を持っている人は(ほとんどの人が持っているのだが)、病院での治療費の支払いや処方箋のある薬を買うとき、航空券の購入にしか使うことができない。インド政府はこの他にいくつかの‘特例措置’を認めているのだが、ホテルやゲストハウスの支払いには使えないので、家族全員泊まっていたホテルやゲストハウスから出なければならないなどということも起きている。
バングラデシュ旅行客にとって最大の問題は外貨だ。コルカタや他のどの都市でもすべての外貨両替店が閉まっている。店にインドルピーの現金が全くないからだ。つまり、100ルピー札や2000ルピー札を大量に銀行から入手できていないのだ。各銀行では廃止された紙幣を新しい2000ルピー札や従来の100ルピー札と交換しているが、それも上限が決められており、選挙投票のときのように右手に黒いインクでしるしをつけることになっているので一度しか換金できない。しかも、限られた少額のルピー札を交換するのに銀行に行って約4~5時間列に並ばなくてはならない。
しかもバングラデシュ人を含む外国人にはこのような得点は認められていない。新札に交換できるのはインド人だけである。そのためバングラデシュからドルを持っていっても、何の役にも立たない。ドルもバングラデシュタカも両替できない。すべての外貨両替店が閉まっていて、いつ再開するかは誰も知らない。このような状況のなか、非合法で1ドル30~40ルピー(為替市場では66ルピー)、1000バングラデシュタカにつき500インドルピーで両替を行なっている両替商もいる。これより悪いレートのこともある。お金のやり取りはあくまで極秘に行われていて、表に出ることは決してない。こうした違法取引は2~3人の手を経由して行われる。しかし多くの途方にくれたバングラデシュ人はこのレートでもインドルピーに飛びつく。食事やタクシーの支払いに使う現金が手元にまったくないからだ。家族そろってひもじい思いをしているケースもある。
コルカタの新聞によると、病院エリアにあるいくつかのレストラン、ゲストハウス、食料雑貨店の経営者のなかには、バングラデシュ人にはつけによる支払いを認めている人もいる。「私たちが普段食べていけるのも、バングラデシュの人たちのおかげです。そのバングラデシュ人が困っているというとき、私たち以外誰が救いの手を差し伸べるんです?」経営者たちはそんなふうに話しているという。
銀行のクレジットカードやデビットカードを利用するバングラデシュの人たちは大きな被害は被っていない。こうしたプラスチックのお金はどこfでも有効だからだ。しかし、バス、地下鉄、タクシーではカードが使えない。小さなレストランでも同様だ。これらの場所ではカード保有の恩恵を受けられない。ATMから一定の額は引き出すことが可能とはいうものの、大部分のATMは現金が不足しているため停止している。
このようなときには、在コルカタバングラデシュ総領事館は、緊急の必要性や招待でない限りインドやコルカタ行きを控えるようにとバングラデシュ国民に通知すべきだった。在コルカタ総領事館に限らず、デリーのバングラデシュ大使館もそういった趣旨の公告を出すべきだった。実際のところ、こうした在外政府機関は大臣や国会議員、VIP、官僚の来訪への対応にかかりきりで、ビザ発行を除けば一般人の問題にはさほど熱心でない。
そうした中、ショナリ銀行コルカタ支店は賞賛に値するサービスを提供している。この困難な時にバングラデシュ人旅行者のパスポート1冊につき100ドルをインドルピーに換金しているのだ。緊急に必要なことが証明されれば、200~300ドルの両替にも応じている。ホーチミン通りにある同銀行の支店前には、早朝6時からバングラデシュ人の客が列を作って並んでいるのが見られる。両替が行われるのは11時から夕方までだ。ショナリ銀行のアリ・モルトゥジャCEOによれば、中央銀行であるインド準備銀行から需要に見合うインドルピー(100ルピー札)が得られないため、旅行者の需要に見合った対応ができないでいるとのことだ。
今回の紙幣廃止で一般人に大きな害が及ばないよう、インド政府はさまざまな‘特例措置’を設けている。毎日のように新たな‘特例措置’が公表されている。それは良いが、インドは‘観光客に優しい国’として知られていて、多くの都市は約一年中旅行者でにぎわっている。突然の紙幣廃止表明は旅行者にとって大問題だ。多くの人はインドを離れ、速やかに他の国へ移って行ってしまっている。インド政府の政策立案者は外国人旅行者のことを全く考えていない。今回の高額紙幣廃止にあたっては、観光(または病気治療)の目的で数か月前にインドに入国した(パスポートで確認可能)外国人については、各都市の指定された銀行で、最低500ドルを両替できる‘特例措置’を設けてもよかったのではないか。そうすれば多くの観光客が困ることもなかったし、外国人観光客がインド政府に腹を立てることもなかったろう。
今回の凸ごとでは、大部分(およそ9割)の外国人旅行者(バングラデシュ人は少ないが)はクレジットカードを持っていることだけが救いだ。

ムハンモド・ジャハンギル(ジャーナリスト兼社会発展運動家)


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翻訳者:山田純恵
記事ID:599