「死のリスト」まで:ハッキャーリの爆破事件続報(Radikal紙)
2005年11月13日付 Radikal 紙
共和人民党(以下CHP)のエサト・ジャナンが存在を明らかにした、105名の「死のリスト」には80人が「要注意」、25人が 「民兵」として名を連ねている。さらに民主市民党(以下DTP)の18人の党員の写真と「親国家派」を記したリストもある。
ハッキャーリのシェムディンリ郡ウムット書店爆破事件後、市民によって破壊された軍警察の車両(ナンバー:30 AK 933 車種:ルノー19)のトランクから発見された書類の中に105人分の名前が掲載されたリストが見つかった。その「要注意」と記された名簿の他、DTPの党員18人の顔写真が掲載された別の書類も出てきた。報告書によれば、車両で発見された記録には「親国家」派のリストもあった。
「死のリスト」の存在は、市民によって襲撃されたルノー車を検事とともに調査したエサト・ジョシャン議員(CHP:ハッキャーリ選出)が明らかにした。検事が押収した「死のリスト」を確認した民主人民党(以下DEHAP)のセレフィ・ユルマズ、とエミン・サル、セゼル・オクテムも、「リストの中に自分たちの名前があった」と語った。
■4冊の書類
市民によって破壊された車のトランクから発見された計300頁にも及ぶ4冊のバインダーの中には、計画書、地図、身分証、許可証の他、105名の名前が記載された3つのリストが見つかった。表題のないリストには80人が、「民兵」という題名のリストには25人の名前が載っていた。また報告によれば、車両捜査で押収された記録の中に「国家に協力する、スパイになりうる」人物のリストもあった。エサト・ジャナン議員は、車両捜査でこれらのリストを見たことを証言し、次のように述べた。「“要注意”だったか、その意味の表現があった。名前にはアンダーラインが引かれていた人もいたし、住所や電話番号のメモがある人もいた。この文書は検察に提出された。」DTPのドアン・エルバシュも「そのリストは私も見た」と、エサト・ジャナンの情報が真実であることを述べた。
■リストの一番目はユルマズ
問題のリストの第一番目は、書店を爆破されたセレフィ・ユルマズである。ユルマズはこの書類に自分の名前を見たことを語った。「私の名前は赤いアンダーラインが引かれていた。」ユルマズは緊迫感を感じ、自身に危機が迫っているのを感じていると述べた。DEHAPの元(シェムディンリ)郡支部長であるエミン・サルは、「家を出るときは常に周りを確認し、しょっちゅう後ろを振り返っている。」と話した。また同様にDEHAPの元指導者であったセゼル・オクテム(30歳)はリストの“要注意”人物の1人である。オクテムは次のように述べた。「1ヶ月半ほど前、警察が道ばたで私を脅迫した。犯行予告を受け、それが決行されたのだ。ラマザン祭りの1週間ほど前には脅迫電話がかかってきた。私とセレフィ(ユルマズ)、エミン(サル)を殺すと言っていた。そして今このリストが明らかになったのである。」
********************本記事への解説********************
トルコ東南部のハッキャーリ県シェムディンリ郡では今月に入って爆破事件が相次いでいる。そうした中、市民が容疑者のものと思われる車を襲撃し、車の所有者3名を警察に引き渡したところ、彼らが軍警察諜報機関の私服警備であることが判明した。(そこでテロ事件への国家への関与が疑われ始めたのである。さらに押収された車両の中からは、「要注意」人物のリストも発見され、その中にはクルド地域で支持を得る DEHAPの党員の名前も記載されていた。もしこの情報が正しければ、国家がテロ事件に見せかけて、反国家的な人物を「処分」しようとしていたことになる。
ススルルク事件とは、1996年11月にブルサ近郊のススルルクという町で起きた交通事故から始まったスキャンダルである。4人の乗った乗用車がトラックと衝突し、乗用車の3人が死亡、1人が重傷を負うという一見普通の交通事故であったが、犠牲者の身元がヒュセイン・コジャダー(死亡:前イスタンブル警察副署長)、アブドゥッラー・チャトル(死亡:トルコ民族主義組織でテロ活動を行っていた指名手配犯、トルコ出国後はローマ法王暗殺未遂疑惑で国際警察であるインターポールからも逮捕状)、セダット・エディップ・ブジャック(重傷:シャンルウルファ選出正道党議員、正道党は当時の与党)、ゴンジャ・ウス(死亡:コンパニオンの女性)であることが判明すると、トルコ国内には大きな衝撃が走った。この一件で政治-警察-マフィアの関係が明らかになり、国民の政治不信はより深まったのである。
これに対し「きれいな社会、きれいな政治」というスローガンが掲げられた。しかし当時の与党はイスラーム系の福祉党(首相エルバカン)と正道党の連立内閣であり、福祉党はそのイスラーム的言説によって軍からの圧力で揺さぶられており、正道党もまた、その直前に明るみに出たチルレル前党首(元首相)の汚職事件で糾弾され、連立政権は歩調を合わせることなく政局は混乱を極めていた。
なおこの時に事件との関係を追及され法務大臣を辞職した正道党のメフメト・アアルは、現在正道党党首として復活している。
また本文中の民主市民党(DTP:Demokratik Toplum Partisi)は最近結成された政党で、レイラ・ザナ(議会でクルド語を話した罪で逮捕、投獄を経験)、オルハン・ドアン、ハーティップ・ディジュレ、メフメト・オジャラン(PKKの指導者アブドゥッラー・オジャランの弟)などクルド系の有力者が参加している。
(文責:大島 史)
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( 翻訳者:大島 史 )
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