首相府人権諮問委員会の「マイノリティ・レポート」執筆の教授、起訴される(Radikal紙)
2005年11月16日付 Radikal 紙

 トルコ首相府人権諮問委員会委員任期中に「マイノリティ・レポート」を執筆したバスクン・オラン教授とイブラヒム・カボウル教授に対する訴訟が起こされ、それぞれ懲役5年が求刑された。

 思想に対する刑罰がEUからの激しい批判にさらされている中、アンカラ検察庁は「トルコ国人性」を上部アイデンティティと位置づける「マイノリティ・レポート」を理由としてバスクン・オラン教授と前トルコ首相府人権諮問委員会委員長のイブラヒム・カボウル教授に対する訴訟を起こした。検察庁はトルコ刑法第216条(旧トルコ刑法第312条)および第301条(旧159条)の適用により懲役5年を求刑した。被告の罪状はトルコの分割と同様とみなされるセーヴル条約を想起させるレポートを執筆したことである。

▲また第312条と159条
 トルコ首相府人権諮問委員会の付属組織である文化権・マイノリティ委員会委員長オラン教授によって執筆されたレポートは大変な議論を呼び、レポートが発表された会議はサボタージュされ、委員のなかにはオラン教授とカボウル教授について検察庁に訴える者もあった。検察庁はこうした状況を鑑み、トルコ刑法第312条および第159条を適用して捜査を開始した。思想に対する刑罰においてもっともよく適用されるこれらの条項は新トルコ刑法では第216条と301条となっている。

▲二つの異なる罪状
 被告の教授たちには二つの罪状が挙げられている。検事ナーディル・カラアスランは教授たちに対し「人民に向けた犯罪への扇動行為」(旧トルコ刑法312条)への罰則を定めた216条と「国家の司法組織に対する侮辱罪」を定めた301条(旧159条)を適用し求刑を行った。これに従い、オラン教授とカボウル教授にはそれぞれ1年6ヶ月から5年までの懲役が求刑されたことになる。

▲重い罪状
 告訴状では、オラン教授とカボウル教授に対し、国を占領下に置き「祖国に対する裏切り」と同様のものとみなされるセーヴル条約の規定に似た提案を行ったという非常に重い罪状が科された。告訴状ではまた、「マイノリティ・リポート」で「トルコ人の代わりに『トルコ』人(Türkiyeli)」という用語を提案したことがなぜ罪に当たるのかについても次のように説明が加えられている。すなわち、「ここで使われている『トルコ人』という単語はエスニック的、社会学的な意味の単語ではない。法律的な意味の単語であり、エスニックな背景はなんであれ、トルコ共和国国民全てを包含するものである。今日イギリス国家の国民を『イギリス』人(İngiltereli)などとは呼ばず、『イギリス人』と呼ぶ。ドイツ国民は『ドイツ』人(Almanyalı)ではなく『ドイツ人』と、フランス国民ならば『フランス』人(Fransalı)ではなく『フランス人』と言うのである。これらの国もまた単一民族国家ではない。たとえば、フランスの民族は、つまりフランスを形成するエスニックな要素は、ケルト、フラマン、アルザス、カタラン、バスク、ブレトン、ノルマン、そしてその他の民族から成り立っている。ここでフランス国民が「私はフランス人だ」といって自らがフランス人であることを表明するのには問題がないのに、トルコ国民をわざわざ『トルコ』人などと呼び表したがる理由は一体何であろうか?」

■「セーヴル恐怖症は当然のこと」
▲主張が似ている
 オラン教授はレポートで「セーヴル恐怖症」に言及している。検事はこの点をつき、被告を次のように追及している。「セーヴル条約はオスマン帝国の終焉を導いた条約である。この条約によって国土は分割され事実上占領下に置かれた。この条約はその後建国されたトルコ共和国によって認められた文書ではない。このような文書に対して神経を尖らせるのはなんら驚くべきことではない。このレポートのマイノリティに関する主張は、祖国を占領に導いたセーヴル条約のマイノリティに関する条文に大変似たものである。このような類似性を前にセーヴル恐怖症を起こすことは少しもおかしなことではないのである。」

▲検事の「マイノリティ」認識
 カラアスラン検事はマイノリティについて次のように規定した。「ローザンヌ条約によれば、トルコのマイノリティはムスリムでない国民のことである。マイノリティ認識はギリシャにおいてムスリムに認められる権利に基本的には準ずるものである。ローザンヌ条約で認められたマイノリティ概念以外に新しくマイノリティを認め措置を講ずることはカオス状態につながる。複数のエスニック・グループを含む国家の統一性の基礎と国民の不可分な一体性を危険に陥れる結果につながるだろう。」

▲その他の告訴理由
 被告の教授たちが、憲法裁判所がトルコの民主主義に仇となっているという見解を述べたことも、「憲法裁判所は多くの決定によってトルコの民主主義と自由を実現する近代的な解釈を行っている」として責任を問われることになった。また、オラン教授とカボウル教授は、レポートと国は全く関係ないにもかかわらず「国が告白したがっていることであるかのように首相府レポートとして世論に訴えた」ことも別個に追及されている。

■オラン教授「後悔するのは彼らだ」
 オラン教授は訴訟について当ラディカル紙に次のように語った。「私が個人的に信じてきた原理原則の観点から大変うれしく思っている。私が法廷で陳述をすれば彼らは後悔するだろう。私の持論を聞いていなかった人も聞くことになるのだから。しかし、見方を変えてEU加盟交渉の観点からは、祖国にとって残念だと思う。この国にこんなことをする権利は彼らにはない。」


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( 翻訳者:宇野 陽子 )
( 記事ID:1309 )