野党の共和人民党党首、エルドアン発言を批判(Hurriyet紙)
2005年11月22日付 Hurriyet 紙

レジェプ・タイイプ・エルドアン首相が昨日シェムディンリ住民に行った演説で、「トルコ人は『私はトルコ人です』と言い、クルド人は『私はクルド人です』と言い、ラズ人は『私はラズ人です』と言い、ボスニア人は『私はボスニア人です』と言うだろう。しかし我々みんなの一体性を持った上部アイデンティティはトルコ共和国国民なのである」と述べたことに対し、共和人民党党首デニズ・バイカルは反論する。バイカルは「トルコ共和国国民」という上部アイデンティティは存在しないと述べ、「トルコ共和国国民であることはトルコ人であることにとって代ることはない。トルコ人概念をきちんと理解すればトルコ人だと自称することを恥ずかしく思ったりはしないだろう」と言った。

 バイカル党首は、党の議員会議で講演し、エルドアン首相がシェムディンリとユクセコヴァ訪問が「地域の内情を表出させた」と述べた。
 さらにバイカルはエルドアン首相を「みじめな首相そのもので、途方にくれており、何をしたらいいのかわからない状態になっている」と評し、「国家の中に国家があってもそこに行ってみることもできず、公権力の統制を保持することもできず、人々との絆を強める方法も知らない」と切り捨てた。
 トルコ共和国国民であることは上部アイデンティティではないと話し、「だれか総理に説明してやってほしいものだ。トルコ共和国国民とは法的なアイデンティティである。トルコ共和国国民であることはトルコ人であることに取って代わることはない。トルコ人概念をきちんと理解すればトルコ人であると自称することは怖くないし、恥じることでもない。トルコ人であるということは、エスニック・アイデンティティを侵害するものでは全くないことがわかるだろう」と呼びかけた。

■「不安を与えるような状況」
 バイカルはエルドアン首相のシェムディンリ・ユクセコヴァ訪問を評し、首相の訪問は地域の内情を顕在化させ、むしろ不安を与えていると述べた。
 また、与党が司法、教育、社会的安全保障の分野において「非常に有害な方法」をとっていることを指摘しつつ、こうして現れた危機に全く対応がなされておらず、重大な結果を招きかねないと述べた。
 バイカルはまた、アナトリア南東部の権力構造は法的正統性のある公権力の統制から逸脱していると指摘した。そしてこれは新しい動きではないが、公正発展党政権になってから急速に進んでいると述べた。
 バイカルによれば、地方公務員の「影響力が低下し、地方の私的な勢力に依存する」ような地域は拡大傾向にあるという。また、「状況はアンカラが考えるような状態ではない」と国が派遣した知事が口にしたことを紹介して、知事がこのように話すよう仕向けているものは何かを知る必要があると指摘した。
 バイカル党首は、地域において正統な警察力、つまり法的な、現実的な統制が脅かされていると述べ、「脅かされているなどと言うのは乱暴な言い方かもしれない。しかし現在の状況は、政府の混乱から発している。つまり、この問題に対して固い決意をもって適切なタイミングで対応できないでいることから発しているのである。このような地域の状況は見るに耐えないものだ」と話した。

■「希望を失った」
 国民を支える権力とは国家の権力であり、国民は国家に保護されることを期待しているとバイカルは述べている。バイカルによれば、こうした保護を与えないことは、すなわち法的な正統的権力が責任を果たさないということであり、結果として地域住民は選択肢が十分にない状態に陥ると述べた。バイカルはまた、実際にこうした状況は始まっており、この状況を皆が深刻に受け止める必要があると呼びかけた。
 バイカル党首はまた、この問題はもはや政府の手に負える問題ではないと指摘する。そして政府はこの問題の重大性を理解してもおらず、ただ解決を先延ばしにしているだけであり、動揺しながらただ事態の収拾につとめているだけだと批判した。

■「現実に力を持っている勢力の存在が顕在化した」
 シェムディンリの事件では、国家のほかに「現実に力を持っている一連の権力分子」が問題を引き起こした形跡があるということである。バイカルによればこの権力の中心を明らかにする必要があるが、しかし捜査は全く進展がないということである。また、この問題ではバイカルは希望を完全になくしているという。
 バイカル党首は、「演説が行われたり訪問がなされたりするが、何の意味もない。必要なことができないのではないか」と問いかける。
 さらに、エルドアン首相はシェムディンリ訪問で「みじめな首相」であることを露呈しており、「何をしたらいいのかわからない、決意とは何なのか、人民への責任とは何なのか。人民の望みはすぐそこにある。はっきりと、何が間違いかを言うがいい。その間違いに対し何をするのか宣言するがいい。率直に、勇気を持て。あの地域ではそれが求められている。真剣な姿勢が求められているのだ。なのに首相は朝令暮改だ」とこぼした。

■「国民とは何なのかだれか首相に教えてやってくれ」
 バイカル党首によれば、トルコ共和国国民であることは上部アイデンティティではなく、法的なアイデンティティであるという。そしてこのことを誰かが「首相に説明する」必要があると述べた。
 トルコ共和国国民であることは、トルコ人であることに取って代わるものでないと述べ、さらに次のように続けた。
 「トルコ人意識をそれぞれが消化すれば、トルコ人と表明することを恐れたり恥ずかしいと感じたりはしないだろう。トルコ人であることは、エスニックなアイデンティティを侵害するものではないとわかるだろう。トルコにはアルバニア人もグルジア人もいる。つまり、アルバニア系やグルジア系の国民がいるのである。しかし彼らはアルバニア系またはグルジア系のトルコ人なのである。グルジア人やアルバニア人であることは、トルコ人の一部であることを妨げるものではない。アメリカにはあらゆる民族的出自をもった人々や州がある。しかし彼らは自分がアメリカ人であることを受け入れている。首相はトルコ人という言葉をエスニック・アイデンティティ、つまり下部アイデンティティに格下げしようとしている。アルバニア系の人は、「自分はアルバニア人だ」と言うようになるだろう。そんなことになればトルコ人はどこに存在するのだろうか。政府はこんな大きな過ちを犯しつつ、ディヤルバクルを申し訳なさそうに訪れてその過ちを償いましょうといいながら『一民族一国家』などと言っている。ではこの民族とはなんだ?トルコ共和国国民か? この民族が何なのかということについては、憲法を読み、歴史を振り返ればすぐわかる。誰にもアイデンティティはあるものだが、誰もがこの民族の一部なのだ。ハッキャーリで生活する国民もアンタリヤに行けばアンタリヤ人になるし、イスタンブルに行けばイスタンブル人になるのである。」


Tweet
シェア


現地の新聞はこちらから
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:宇野陽子 )
( 記事ID:1399 )