EU拡大担当レーン氏:裁判にかけられるのはオルハン・パムクではなくトルコ(Milliyet紙)
2005年12月16日付 Milliyet 紙
作家オルハン・パムク裁判に関連して、EUの様々な機関から反発が寄せられているが、これに欧州委員会も加わった。欧州委員会のオッリ・レーン拡大担当委員は「裁判官の前にたつのはオルハン・パムク氏ではなくトルコだ。」と発言した。レーン委員は、この裁判をトルコにとってのリトマス試験と位置づけ、次のように述べた。「裁きを受けるのはパムクではなく、トルコだ。この裁判は、トルコにおける法の至上性、そして全国民が恩恵を受ける表現の自由、そして改革に全力で取り組んでいるかどうかの尺度となる。」
レーン委員は、トルコが欧州人権条約とコペンハーゲン基準に対して敬意を払うことを期待すると述べ、パムク裁判は表現の自由を裁く他の裁判の見本となりえると強調した。
レーン委員は、最近、話題になる裁判数(の多さ)は、改正トルコ刑法が表現の自由を十分に保護していない印象を与えていると述べ、第301条の解釈の仕方を批判した。また同氏は、第301条については、トルコ政府が欧州人権条約にそって解釈する必要があること、そして裁判官と検事に(その解釈を)明確に説明することを求めた。さらに表現の自由に関して行き詰った解釈を導いてしまう改正トルコ刑法の不足点を改良するよう要求した。
■加盟交渉にも影
レーン委員はEU加盟交渉とパムク裁判を関連付け、「非暴力で意見を述べる作家の起訴は、加盟交渉に影を落としている。」と話した。
同氏は改革がきちんと実行されることが加盟交渉の進展を容易にする最も重要な要素になるだろうと述べた。同氏はこれ以前の発言でも、パムク裁判がEUサミットと同じ日に設定されたことを挑発だと述べている。
■BBCも批判
BBCのインタビューでオルハン・パムク氏は、「我々は過去を話せるようになる必要がある。」と述べた。BBCは「この裁判はトルコをテストすることになる」とし、この裁判がブリュッセルで大きな反響をよんでいることを明らかにした。
□裁判は今日
オルハン・パムク裁判の初公判が今日(16日)行われる。パムク氏には「トルコ性(Turkishness)を公の場で侮辱した」かどで3年以下の禁固刑が求刑されている。
欧州議会から6人の議員がパムク裁判を傍聴するためにイスタンブルを訪問した。一行には、トルコ担当報告者のカミエル・アーリングス氏のほかに、緑の党のダニエル・コーン・ベンディット氏、ジェム・オズデミル氏、ジョースト・ラジェンディック氏、「アタテュルクの写真は壁から下ろされるべき。」発言で反発を集めたアンドリュー・ダフ欧州議会議員(英国自由民主党出身)、キリスト教民主同盟のイギリス人議員ジェフリー・ヴァン・オーデン氏も参加した。パムク氏は一行を宿泊先ホテルの入口で迎え、ラジェンディック氏と30分間の面談をした。
□公判で法廷問題
多数の傍聴人が予測されるため、裁判所ではどの法廷を使うかが問題となった。シシュリ第2初級裁判所の法廷(25平方メートル)では小さいということで、裁判所で最大の法廷(45平方メートル)がある第1初級裁判所で行われることが決められた。一方、検察総局は、警察に文書を送り、周辺警護を求めた。パムク氏をトルコ刑法第301条に反したかどで審理するため、裁判所は法務省の許可を求めていたが、昨日の夕方時点で裁判所から法務省へ届けられた文書はないことが分かった。
現地の新聞はこちらから
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:山口南 )
( 記事ID:1519 )