核問題に関するイラン側の提案、アフマディーネジャード大統領のニューヨーク訪問の際に発表も シャルグ紙
2005年08月29日付 Sharq 紙
シャルグ紙5面(外交面)
【政治部=ニールーファル・マンスーリヤーン】アーセフィー外務報道官は昨日、核問題に関するイラン側の新提案が、マフムード・アフマディーネジャード大統領のニューヨーク訪問の際に発表される可能性があると伝えた。同報道官はまたヨーロッパ三カ国に対して、核問題に関するイランとの協議から離脱することは適当ではないとの見解を示した。ハミード・レザー・アーセフィー氏が述べているのは、数日前に大統領及が示した核問題に関する新たなイニシアティヴのことで、アリー・ラーリージャーニー国家安全保障最高評議会書記はウィーンを訪問し、ムハンマド・アルバラーダイーIAEA事務局長と会談した際に表明している。イラン側の新たな提案は、今後1ヵ月から1ヵ月半の間にイランとの交渉相手国及びIAEAに対して示される予定であり、国家安全保障最高評議会の新たな書記に就任したラーリージャーニー氏及びアーセフィー外務報道官は、この提案によって、我が国が現在直面している核問題から脱するための条件が用意されると考えている。
ところで、マフムード・アフマディーネジャード大統領が初めての外遊として、国連本部の置かれているニューヨークを訪問し、原子力の平和利用を目的とした核燃料サイクルに関して自らのイニシアティヴを提起するのに先立ち、アリー・ラーリージャーニー国家安全保障最高評議会書記は先週木曜日ウィーンを訪問した際に、同提案の詳細について、ムハンマド・アルバラーダイーIAEA事務局長と話し合いを行った。同書記によれば、この提案は交渉当事者に対して一つの完全なパッケージとして提出される予定との由である。昨日週間定例記者会見を行ったアーセフィー外務報道官は、2日間にわたるラーリージャーニー書記のウィーン訪問を肯定的に評価した上で、同訪問は前向きなものであり、両者とも自らの見解を表明する良い機会を得ることができたとの見方を示した。ムハンマド・アルバラーダイー氏もアリー・ラーリージャーニー氏との会談の後、会談の成果は建設的なものであったと説明している。
■ ヨーロッパ三カ国との対話継続を支持
国家安全保障最高評議会書記はウィーンに発つ前、インタビューの中で核協議が英仏独ヨーロッパ三カ国に限定されていることに批判的な見解を示していた。同書記はまた、イランはIAEA理事会35カ国と話し合うことを歓迎する旨表明していた。このことに関して、昨日の定例記者会見で記者たちからアーセフィー外務報道官に対して、さまざまな質問が出された。イランとの交渉相手国がヨーロッパ三カ国に限定されていることに対するラーリージャーニー書記の批判は、交渉相手の変更を意味するのかとの質問に対し、アーセフィー報道官はこの問題は正しいかたちで報道されていないと指摘し、「われわれは依然として、ヨーロッパ三カ国との話し合いが継続されるべきだと考えている。ただ話し合いがこの三カ国に限定されるべきだとは考えていない」と付け加えた。アーセフィー報道官は、イランとの協議の中心から外れるかどうかを決めるのはヨーロッパ次第であると強調する一方、次のように説明した。「この交渉におけるイスラーム共和国のアプローチは、ヨーロッパ三カ国とも、その他の諸国とも協議を行ってきたし、今後もすべての国と協議を行っていくというものであり、このことに変わりはない。ヨーロッパは自らの責任において、『われわれは交渉しない』などの言明を控えるべきだが、最終的にわれわれと交渉するつもりがあるかどうかは、彼ら次第である」。
■ 他国と交渉する権利は保持されている
マヌーチェフル・モッタキー新外務大臣就任披露式典が行われた1日後に記者会見に臨んだアーセフィー外務報道官は、われわれは〔交渉相手国として〕誰かを排除したいと考えているわけでは決してないと述べた上で、「結局のところ、何らかの理由で自らの約束を果たすことなく、パリ合意に反した行為を行ってきたのはヨーロッパであり、そのために我が国としても、このことについて、もしヨーロッパがわれわれとの協議を進展させることができないのならば、他国との協議に入らざるを得ないのではないかとの懸念が生じている、というのが現在の状況である」と付言した。同報道官は、もしヨーロッパに自ら始めた行程を継続することが可能だというのであれば、そのように行動すべきであると述べ、さらに「しかし他国と交渉を行う権利は、つねにわれわれに保持されている。このことは明らかに、過去においても、現在においても、また将来においてもそうあり続けるべきものである」と言明した。他方、アーセフィー報道官は再度、交渉から離脱しようとしているのはヨーロッパ自身であると強調した。
また、同外務報道官は「ヨーロッパはどのくらい、イランとの協議から撤退しようとしていると考えるか」との質問に対し、「もしヨーロッパがイランとの協議に前提条件を加えたいと表明するのならば、当然のことながらイランはこれを受け入れず、他国との交渉に移ることになるだろう」と回答した。同報道官はさらに「イランは交渉のための交渉は望まない」と強調し、次のように続けた。「すでに述べてきたように、イランとの交渉に参加する意思があるかどうかを決めるのは、ヨーロッパ自身である。他方、イランは交渉のための交渉は望まない。同様に、協議は一定の適当な期間内に結論に達するべきである。これまでの話し合いはこのようなものではなく、ヨーロッパ側の遅延行為を伴うものであった。そのために、われわれはエスファハーンでのウラン転換作業を開始したのである。ともあれ、もし他のイランとの交渉相手国が同じような手法をとるのであれば、当然のことながらイランがそれを受け入れることはない。また、エスファハーン問題についてはすでに終わったものであり、後戻りはできない」。
〔中略〕
■ イランの基本的交渉相手
アーセフィー報道官はさらに続けて、IAEAが核問題をめぐるイランとの基本的な交渉相手であるとの見方を示し、このことはアリー・ラーリージャーニー書記のウィーン訪問の際、IAEA事務局長に伝えたと述べた。その上で同報道官は、同書記のアルバラーダイー事務局長との会談後可及的速やかに〔イランとIAEAとの間での〕話し合いが開始され、またイラン核問題の曖昧点に関して残されたきわめて少数の問題について、9月3日の会議でIAEA事務局長より提出される予定の報告の中で明確にされることを望むとの見解を表明した。
■ アメリカとは交渉しない
他方、交渉相手の拡大はアメリカとの話し合いの可能性を意味するのかとの問いに対しては、アーセフィー外務報道官は否定的な見解を示した。同報道官はまた、現在の核問題をめぐる状況から脱するためにイランが用意する予定のイニシアティヴの全体像に関する問いに対して、次のように答えた。「この提案の基本は、一つに核燃料サイクル問題についてイランの権利を正式に認めること、もう一つは客観的で確固とした保証をはっきりとした形で提示することである。さらにわれわれは、我が方のカウンターパートとしてIAEAと作業し、IAEAもまた自らの責務を果たすことを希望している。最終的には、最大で1ヵ月半後までに提示される予定の同提案が、相手側に口実を設ける余地をなくし、もし相手側が誠実な態度をとり、適切に対応するならば、この提案は現在の状況から脱するためのよい方法となるものと考えている」。
同報道官はさらに、ラーリージャーニー氏のウィーン訪問では、IAEA事務局長に対してイラン側の新たな考え方や状況についての説明があったと述べた上で、「われわれはすでに交渉に約2年間という十分な時間を費やしてきたと考えている。我が国の世論もこれ以上我慢することはできない」と表明した。
■ ヨーロッパに対する勧告
アーセフィー報道官はまた、ヨーロッパに対しても「イラン核問題を安保理問題とすることは、必ずしやヨーロッパにとっても、世界全体にとっても、大きな対価を要求するものとなろう。ヨーロッパはわれわれと彼らの関係について、バランスのとれた手法をとるべきだ」と注意を促した。
〔中略〕
■ ナタンズの施設稼働は予定していない
これまでの記者会見と同様、ナタンズのウラン濃縮施設の稼働問題についてアーセフィー外務報道官に質問があったが、同報道官の回答も「ナタンズを始動する予定はいまのところない。この問題に関しては、今後の交渉相手の対応如何によって決定する」と、従前通りのものであった。
■ 日本大使館の協力
ところで、テヘラン刑事検察庁代理長官は2日前、「テヘランの日本大使館はこれまでのところ、モガッダス判事に対するテロ事件当日のフィルムをイラン側に提供してくれていない」と述べたが、他方アーセフィー外務報道官は昨日、「すでにイラン〔外務省〕儀典局は日本大使館に対して口上書を発出し、同フィルムの関係当局への提出を要請した」と述べた。同報道官はこの点について、日本大使館の協力に謝意を表明し、「日本大使館はこのことに関し、われわれと協力し、同フィルムを警察に提出してくれた。必要な調査を行った上で、すでにフィルムは日本大使館に返却済みである」と説明した。
〔注:8月2日の午後4時頃に、テヘラン高等司法センター長官を務めていたモガッダス判事が、アフマド・ガスィール通り(通称ボハレスト通り)にある同センターから出た際に、バイクに乗った犯人によって銃で暗殺される事件が発生した。犯行現場が在イラン日本大使館の斜め向かいにあったことから、イラン政府は日本大使館に対し監視カメラのフィルムの提出を要望したものと思われる。なお暗殺された判事は、著名なジャーナリストで現在服役中のアクバル・ギャンジー氏をめぐる裁判やイラン反体制テロ組織であるMKO関連の裁判を多く手がけてきた人物。〕
〔以下略〕
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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:764 )