トルコ初のグルメ雑誌「グスト」のミシュランは鼎談形式(Radikal紙)
2005年08月20日付 Radikal 紙

■批評というよりは食事のおしゃべり
 「トルコ初の酒文化雑誌」グストのテーマは、酒だけに限らない。酒文化に関する知識を集めた記事はワインをはじめ多くの酒を紹介し、そのほかに飲食業界のニュースや新しい店や味覚も掲載されている。そして「レストラン批評」も…。

 この「レストラン批評」のコーナーは、みなさんが考えるような身元不明の誰かが書いたものではない。ほとんどはグスト誌ジェネラル・コーディネーターのアフメト・オルス氏をはじめ3名がレストランに集まって歓談し、その内容がすべて余すところなく記録され雑誌で掲載されるという仕掛けの批評なのである。つまり、オルス氏の言葉によれば「おしゃべり」というわけである。

 2年ほど前から準備されてきたというこのコーナーは、グスト誌の総編集長メフメト・ヤルチン氏のアイディアだった。「トルコには真の意味でのレストラン批評というものはありません。これは大変難しい仕事なんです。執筆者の多くは自分の性向や文化、趣味に基づいて記事を書きます。たとえばある人はレストランの内装や雰囲気を気に入るが、料理にはあまり関心がない。またある人は料理を重視するが内装には興味がない。批評には具体的な基準がなく、非常に主観的なものになってしまいうるのです」と話すヤルチン氏は、重要なのはレストランを批評することよりもむしろその場を紹介することだと語った。このため、グストの「レストラン批評」のコーナーは3人で行うことになった。オルス氏の他に、グスト編集部のメフメト・ヤルチン氏、執筆主幹のエスィン・スングル氏が食事に同席する。「我々の目的はいろいろな視点を紹介することにあります。たとえばアフメト・オルス氏のような美食の大家や、エスィン・スングル氏のような若い世代の仲間、それからそのときのテーマの専門家の方に来ていただいています。起こったことはすべて生放送のように読者に見せています」とヤルチン氏は語る。

■新しい店は選ばない
 今まで行ったレストランのほぼ全てに行っているアフメト・オルス氏は、「これは実のところ、概して『レストランのおしゃべり』なんです」と話す。「『テーブルの上にちりがたまっている。店員のスカートにしみがある』といった細かいことにはあまりこだわらず、その店を紹介したり、メニューを吟味したり、読者をあまり退屈させないようなやり方で料理について話したり、もしあれば欠点についても話しますし、その欠点をまとめたり、なければならないものについても話します。そして、最後には何らかの教訓が得られるように努めています。」
 「行くレストランはどのように決めているんですか?」との問いには、「行かないレストランをどのように決めているか、ということをお答えしましょう」と答え、説明してくれた。「開店したばかりで複数の人が『とても流行っているレストラン』などと言うような場所にはできるだけ行かないようにしています。私はそういう店を評価することには大変抵抗があるんです。エスィンはいいじゃないかと言うけれど。そういう場所に行って何もかもけちょんけちょんにけなすのは、あまりいいことだと思わないんですよ。というのは、そこに行ってとても幸せな気持ちになる人もいますから。でも私はそんなに幸せにはなれない。非常に多くのことが気になってしまうのです。」このオルス氏の言葉にスングル氏は、「アフメトさんがそうやって店にチャンスを与えるのは、実にもっともなことです。数ヶ月経てばその店はもっとよくなるでしょう。開店したての時期にレストランを批評するのはあまり正しいことではないかもしれません」と話す。他方メフメト・ヤルチン氏は、「よい舞台批評家は、舞台の初日の直後には批評せず、少し待つものです。俳優が慣れて演技が落ち着いてから評を書きます」と、この件について意見を述べた。
 おしゃべりに参加する人々は、批評をするときに自分を抑えることをしない。おしゃべりはたいていオルス氏の司会で進められる。テーマが散漫になったときにはまとめられる。そもそもテーマは飲食文化以外のところにはほとんどそれないが。教養的で面白いこのおしゃべりは、時々シェフや支配人が挨拶に来ることで中断される。おしゃべりの参加者たちは、たいていその店で顔が知られているからである。そのうえ勘定では割引までされることがある。しかし彼らはこの状況に不快感は持っていない。シェフやオーナーの多くはそもそも友人で、特別割引も読者に秘密ではなく(レシートの写真も掲載)、雑誌で説明しているということである。他方スングル氏は、読者の中には「どうやって割引をしてもらったのですか? 我々にもやり方を教えてください」と聞く人もいると笑った。「レストランでは好むと好まざるとに関わらず我々のことを知っているのです。しかし予約を入れるときには偽名を使うように注意しています」とオルス氏は言う。「記者たちが来るからといって事前に準備をされるのは困ります。我々だとわかってしまったときには、シェフやオーナーが『これを召し上がってください』と主張してきても、あまり聞き入れはしません。」
 平均して2,3時間ほどの食事の後、レストランや料理、サービスについて最後の総括を行う。その後テープは止められ、また別の食事を共にするために一行はレストランを後にするのである。


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( 翻訳者:宇野 )
( 記事ID:758 )