ヨーロッパは失敗を認めようとせず、アメリカははったりをかける シャルグ紙
2005年08月31日付 Sharq 紙
2005年8月31日付シャルグ紙5面(外交面)
〔訳注:以下の記事は、8月28日にシカゴ・トリビューン紙に掲載されたTom Hundley記者が執筆した分析記事“High-stakes showdown looms on Iran”(イランをめぐり危険な勝負が行われる可能性)の訳文であるが、この訳文もまた、これまでと同様、「イランは核兵器を開発しようとしている」などのイランに対して批判めいた文章は訳さない、自国にとって都合のよい情報や見解を付け加える、文章の趣旨・意図を恣意的に変えるなど、原文を断りなく改変する行為を繰り返しているので、その点留意ありたい。英語の原文はhttp://www.chicagotribune.com/news/nationworld/chi-0508280278aug28,1,4013752.storyで読むことができる〕
【外交部:アーザーデ・エフテハーリー訳】国際原子力機関(IAEA)のアルバラーダイー(エルバラダイ)事務局長は、今週末にも、ウラン転換作業停止の要求に対するイラン側の拒否に関して、報告書を通じてIAEA理事会に通知するであろうと専門家はみている。そうなった場合、外交ゲームの舞台は整い、そこではアメリカとそのヨーロッパの同盟国がイランのセンシティブな核活動を停止させるために、イランに対して威嚇的なポーズをとることになるだろう。
しかし、米欧はこの外交の場にあっては、必ずしも圧倒的な力を享受しているわけではないと、一部専門家は見ている。一方で、イラク戦争によってアメリカは自国の地位を弱めている。ジョージ・ブッシュ大統領がイランへの軍事攻撃という選択肢の活用を主張しているにもかかわらず、イラクにおいて米軍が大きな圧力に晒されていること、そしてイラクの状況をイランに拡大することに世論の、あるいは政治的な支持が得られていないことを考え合わせると、ワシントンの威嚇が実行に移される可能性は低いといえる。他方、石油価格の上昇によっても、アメリカの外交上の立場は弱体化している。中東石油に対するアメリカの依存を考えれば、ブッシュ政権は新たな危機的状況を創出することで、石油価格を高騰させるリスクを引き受けるようなことはないだろうとアナリストらは考えているのだ。
ここにきて、イギリス、フランス、ドイツのヨーロッパ3大国の外交ゲームは、最悪の状況の中で、最終の段階を迎えようとしている。ヨーロッパ諸国は、イランに核開発計画を断念させるべく、2年間という月日を説得に費やしてきたが、今や状況は変化し、彼らがこのゲームの輪から外される可能性が増大している。目下のところ、自国の選挙戦の渦中にいるゲルハルト・シュローダー独首相には、アメリカの「カウボーイ外交」に対するヨーロッパ側代替策が失敗に終わったことを認める気配はなく、イギリスのトニー・ブレア首相とフランスのシラク大統領もまた、EUの従来の外交的イニシアティヴの失敗を認めることは避けている。このような中で、シュローダー首相は最新の選挙演説の中で、アメリカとヨーロッパの政策が一枚岩ではないことを強調して(イランへの軍事攻撃に対するアメリカの威嚇をポーズにすぎないと説明することで)、ヨーロッパの〔独自の〕立場を強化しようとしている。同首相は、イランへの軍事攻撃はあまり有効ではないとの理由から、アメリカは対イラン政策の選択肢として、軍事攻撃という選択を排除すべきであると明言したのである。
アナリストらは、イランに新政権が発足したことを考えると、国連による対イラン制裁についての新たな協議ラウンドが始まることは、〔イラン新政権にとって〕幸先のよいスタートとは言えないだろうと考えている。現在イランは、ヨーロッパとの交渉に関心はあるものの、核燃料サイクルの製造に関しては議論の余地はなく、どのような状況においても核燃料サイクルは追求するとの姿勢を崩していない。イランが自国の立場を固持する場合、アメリカやヨーロッパはイラン核問題の安全保障理事会への付託、及びありうべき制裁案の提出というチャンスを、わずかながらでも得ることになるであろうとアナリストらはみている。
イラン核問題を安保理に付託することは、ブッシュ政権がつねに望んできたオプションである。しかし問題は、制裁は〔武力による〕威嚇という側面を有する場合にのみ、実際の制裁よりも有効なものとなる、というところにある。アメリカ国家安全保障会議軍縮問題担当の前顧問で、現在〔イギリスの〕国際戦略研究所上級研究員であるゲリー・サモア(Gary Samore)氏は次のように述べる。「ヨーロッパ諸国、ロシア、中国は、イラン核問題を安保理に付託することは望んでおらず、唯一アメリカのみ、それを望んでいる。ロシアはブーシェフルの原子炉の建設に手を貸しており、中国もイランの石油、天然ガスの利権をのどから手が出るほどほしがっている。そのような現状下では、イランの核開発に関して懸念は抱いているものの、両国ともにアメリカの安保理付託への要求と同一歩調をとることはないだろう」。同氏は以下のように続けた。「心配なのは、安保理への付託が現実となれば、安保理にとって対応が難しくなり、イランは報復的行動に出る可能性があるということだ」。さらに彼は、「安保理への付託は深刻な対立・亀裂へと発展するだろう」と付け加えた。
ワシントンの軍縮研究所〔the Nonproliferation Policy Education Center〕所長のヘンリー・ソコルスキー〔Henry Sokolski〕は「IAEA理事会が自らイランの核問題を処理すれば、対立を未然に防ぐことも可能だ」と語る。同氏は「IAEA理事会がイランとの核協力をメンバー各国に禁ずるような決議を行えば、中国やロシアもイランを非難するための格好の政治的隠れ蓑を得ることができる〔*注:この部分のペルシア語訳はcensure(非難する)をcensor(検閲する)と読み間違えるなど意味不明の訳となっていたので、英語の原文を参照して訳した〕」と主張している。
このような中で、イランは核に関する合意書を手に入れたいと考えている。イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は先週、イランはヨーロッパとの交渉を他の諸国にも拡大することを考えていると言及した。同大統領はさらに、核燃料生産活動継続の許可を得る代わりに、イランの全核施設に対する〔IAEAによる〕監視を受け入れるという内容の、イラン側新提案を提出する意向であるとも述べた。
サモア氏はこの点に関し、「この提案はヨーロッパにとって魅力的なものとなるかもしれないが、あまりよい取引ではないだろう。というのも、ヨーロッパはウラン転換作業の破棄を望んでいるにも関わらず、イラン側の新たな条件では、この作業は継続されてしまうからだ」と語る。
アナリストらは、自らの核活動が平和利用を目的としていることを強調するイランに対して、国際社会が制裁を加える場合には、イランはNPTから脱退し、IAEA査察団を追放してしまうだろうとみる。その一方で、イラクやサウジアラビアへのイランの影響力は強まることが予想される。他方、イランのコントロール下にあるホルモズ海峡の封鎖を含めた、石油供給源を脅かすような危機が発生することは、いかなるものであれ、石油価格のさらなる高騰を招くことになる。イラン当局は自らの核活動が平和利用を目的としたものであることを強調しているにも関わらず、一部アナリストらは、イランがロシアやパキスタン、インド、そしてイスラエルといった核保有国を隣国として抱えていることから、核兵器を製造する十分な理由をもっていると考えている。
ソコルスキー氏は、「イランのNPT脱退が危険なのは、それが他の諸国に対して、同条約から脱退するための不名誉な見本を与えてしまうからだ」と語る。同氏は、エジプトやサウジアラビア、トルコ、韓国といった諸国がイランの例に倣って行動する可能性があると指摘している。同氏が見解によれば、これらの諸国のNPTからの脱退は、イランの核爆弾製造よりもはるかに危険なのである。〔注:なお、英語の原文でのソコルスキー氏の発言の趣旨は、NPTを無視した行為をイランに許してしまうと、それがNPTを利用して核技術を獲得し、核兵器製造が可能になれば同条約から脱退するというモデルを他の諸国に示してしまうことになりかねない、ということにある〕
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( 翻訳者:柴田愛子 )
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