トルコ政府見解ふたつにわかれる:アルメニア学術会議中止の審判に波紋(Milliyet紙)
2005年09月24日付 Milliyet 紙

 エルドアンは「官僚が変化への抵抗を示している」と述べ、ババジャンは「10月3日」の前であることに注意を喚起した。しかしジェミル・チチェキの姿勢には微妙な差異があり、「10月3日」に結びつけるのは誤りであるとした。

 「オスマン帝国崩壊期におけるオスマン朝のアルメニア人:科学的責任と民主主義の問題に関する会議」が、司法判断のもとで中止された件に関し、政府が行った種々の説明に微妙なずれがあることが指摘されている。タイイプ・エルドアン首相およびアブドゥッラー・ギュル外相、そしてEU加盟交渉担当代表に任命されたアリ・ババジャン国務大臣は、判決についてトルコのEU加盟へ向けた努力を妨害するものだというメッセージを出す一方、ジェミル・チチェキ法相はこの見解には賛成しかねると述べた。
 会議について「これはトルコ国民を背後から刺すような行為である」との考えを述べたことのあるチチェキ法相は昨日、ミッリイェト紙に対し、全ての出来事を10月3日に結びつけることは誤りであろうと述べた。
 チチェキ法相は記者団の質問に対しても「大学に対して初めて出された判決であるがゆえに、衝撃的だっただけである。トルコでは判決までが議論されうる。この判決を正しいと思う者も誤りだと思う者もあるだろう」と述べた。会議に関する見解を支持するかどうかを尋ねた記者を叱責したチチェキは、「政府内に見解の相違があることを露呈させるような罠にはかからない」と述べた。
 NTVに出演したチチェキ法相は、エルドアン首相とギュル外相の見解との差異に関する質問に対し、「私は法律上の解説をしているわけですが、ただ、政治的にもこの会議の開催時期が適切だとは思いませんね」と答えた。

■エルドアン:官僚は抵抗している
 ATVにおいて昨晩、質問に応じたエルドアン首相は、今回の騒動が「法律と司法を混同したこと」に起因するとの見解を述べ、「トルコにおける民主化プロセスと自由に、影が差した点を残念に思う」語った。またエルドアン首相は、次のような見解を述べた。
 「より一層の自由や民主主義にあっては、忍耐強く抵抗していかねばならない問題もある。イデオロギー的な振る舞いをして進展を妨げようとするなら、特に国の機関がこうした人々の道具とならないようにしなければならない。官僚はトルコの変化に抵抗を示している。議会で多数派だからといってすべてを解決することはできない。人の意見にはかならず敬意を示さねばならないのだ。でなければ、意見はなかったことになってしまう。誤りがあれば、学長たちや高等教育機構がこの説明を行う。干渉が必要な状況なら、イスタンブル県が関与する」。

■ギュル:最後の奮闘
 国連総会のためニューヨークに滞在しているギュル外相も、この判決に対し「自分で自分にこれほどまでにダメージを与える国家はめったにない。10月3日を迎えるにあたり、国の内外で、EU加盟を阻止しようとする人たちが、最後の奮闘をしている。それに新しくもう一つ加わったとしても、驚くには当たらない」と語った。

■「10月3日が近づくにつれて」
 ババジャン国務大臣も「まだ表明されていない考えの芽を摘むことは、トルコが獲得しようとしている権利や自由の水準に合致しない」ことを強調しつつ、次のように述べた。
 「10月3日が近づくにつれ、『一体どうなるのかわからないが、トルコが足を踏み入れようとしている、この全く異なった環境を阻止することができる』などという試みが、残念ながら国の内外で行われている。我々はEUに完全加盟するために、何故話し合いのプロセスを望むのか、何故この諸改革を望んでいるのかという問いの答えを、おそらくある程度理解した。トルコはすでに、明文化された法が実施され、実行も法制化された国になっているのである」。

■政治家たちは混乱
・メフメト・ドュルゲル(トルコ大国民議会外務委員会会長‐公正発展党):EUの出した条件のうち、困難なものの一つが司法であることはよく知られている。私はEU加盟交渉を妨害する判決だとは思わない。トルコの法曹界の当然の反応である。
・サリフ・カプスズ(公正発展党グループ長代理):トルコ国民の名において下された決定では、司法にせよ政治にせよ、重要なことはトルコの国益が守られることである。完全加盟交渉を目前にこのような干渉が入ったことが、トルコに何をもたらしたのか、皆よく理解すべきだ。
・ムラト・メルジャン(欧州委員会トルコグループ長‐公正発展党):トルコがその門戸を外へ開き、自由化すればするほど、その分成長することができるのである。この議論を妨げることは誰にとっても有益ではない。
・オヌル・オイメン(共和人民党副党首):判決を尊重すべきである。どれほど異なっていようとも、みな見解を明らかにすべきだ。陰謀説は考慮しない。
・ムスタファ・オズユレキ(共和人民党副党首):間違った判決が下された。大学は自治組織であり、干渉は正しいことではない。
・メフメト・アアル(正道党党首):判決を批判するような態度はとらない。訴える場所はまた司法である。わが国の歴史は、裁判所の判決が擁護する必要がないほど、輝かしい素晴らしいものである。
・ケナン・エヴレン(第7代大統領):いずれにしても中止になったことはとても良いことである。
・ムフシン・ヤズジュオール(大統一党党首):アルメニア会議に関し司法が下した判断は、トルコ社会の感情と反応に合致している。
・ヤシャル・オクヤン(自由党党首):アルメニア会議はトルコを裏切るものだ。トルコの地でトルコに背信する会議に許可を与えることはできない。

■裁判所の判決に対し世界のメディアは
 アルメニア会議が裁判所の判決により二度目の中止に追い込まれたことを、世界のメディアも取り上げた。BBCは「これは普通の会議ではない。参加者たちは90年前のオスマン朝のアルメニア人が被ったことについて議論するはずだった」と伝え、アルメニア問題がトルコにおいてタブーであることも明らかにした。
 会議が一部のナショナリスト弁護士が提議したために中止され、エルドアンも反発を示した判決が、EUとの交渉が始まる10月3日の前になされたことが強調された。
 VOAラジオも「公式の発言が議論されるはずだった」という表現で、判決が10月3日の前になされたことを指摘する一方、作家のオルハン・パムクもこの問題に関し告訴されていることにも言及した。

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:927 )