エジプト大統領選 ワフド党候補、ムスリム同胞団指導者を訪問(アル・ナハール紙)
2005年09月01日付 Al-Nahar 紙

■ ワフド党大統領候補、ムスリム同胞団指導者を訪問
■ コプト教徒、ムバーラク大統領を支持 コプト教徒に「行動指針」あり

2005年9月1日付アル・ナハール紙(レバノン)HP1面

【AFP、ロイター】

 エジプトの野党ワフド党の大統領候補ヌウマーン・ジュムア氏が昨日、ムスリム同胞団の最高指導者ムハンマド・マフディー・アーキフ氏を訪問した。二人は会談の目的が選挙に関する取り引きのためであるという説を否定した。また、エジプト当局はムスリム同胞団幹部5人を懲役刑の執行期間が満了する前に釈放した。そしてコプト正教会総主教はコプト教徒国民に、ホスニー・ムバーラク大統領の再選を呼びかけた。コプト教徒の多くはムスリム同胞団の伸張を憂慮しており、この呼びかけを支持した。

 ワフド党の歴史は1919年革命にまでさかのぼり、ムスリム同胞団はハサン・アル=バンナーによって1928年に創設された。両団体は、1952年の7月23日革命、すなわち自由将校団による王制の打倒以前のエジプト最大の政治勢力だった。

 ジュムア候補はアーキフ氏を訪問した理由として、「両団体の間には強く深い、かつ古くからの強固な安定したつながりがある。我々はムスリム同胞団と意見を同じくすることもあれば異にすることもある。だが我々は、ムスリム同胞団への対応を治安問題として扱うことに反対だ。我々は拘束や軍事裁判や、治安上の理由によるムスリム同胞団弾圧を拒否する。ムスリム同胞団とのやりとりは、政治的なやりとりでなければならない」と語った。

 ムスリム同胞団は選挙でジュムア氏に投票するのかとの問いに対しアーキフ氏は、「我々は国民に、誰でも自分の望む候補に投票するように言っている」と答え、ジュムア候補もそれに賛意を示し、「我々は投票についての話はしない。それは個人の自由である」と語った。

 ムスリム同胞団は政党設立の権利獲得を目指しているが、ワフド党とムバーラク大統領は、宗教を背景とする政党を設立するべきではないという点で同意している。ジュムア候補はエジプト国民のみが「政治勢力の権利」を決定する主体であるとし、「私は認めるとか認めないなどいう事は言えない。ムスリム同胞団は実際に存在しており、尊敬をかちえている。その存在には力があり、尊厳がある。…この問題は国民的議論を経て決められるものであり、私が決定すべきものではない。というのは、たとえ個人の役割というものがあるとはいえ、個人が国民のことを決定することはできないからである」と話した。

 自由主義政党である野党ガドゥ党党首で大統領選に出馬しているアイマン・ヌール候補はすでに先月、アーキフ氏を訪問している。しかし、ヌール候補の選挙公約に政党設立の障害となっている全ての規制を撤廃することが含まれているにも関わらず、ムスリム同胞団は同候補に支持を与えず、ムバーラク候補に対抗する9人の候補の中から誰にでも投票するよう呼びかけていた。
 
■ ムスリム同胞団幹部5人釈放

 こうした中で、ムスリム同胞団は、エジプト当局がマフムード・ガズラーン指導局局員、マフムード・イッザト指導局局長を含む同団体の幹部5人を釈放したと発表した。この5人は2001年11月に逮捕され、2002年7月に「非合法団体への所属」と「政府転覆の計画」の罪により5年の刑を宣告された。その一方、アレクサンドリアでムスリム同胞団団員1人が逮捕され、幹部1人を含む4人の拘留期間が延長された。

■ コプト教徒

 コプト正教会総主教シュヌーダ3世は、選挙戦開始直前に「コプト教会の全ての指導者は、ホスニー・ムバーラク現大統領を次期大統領候補として擁立し、深い経験と知識をもち、アラブ諸国、欧米諸国、その他の国々の首脳と良い関係を築いている同大統領を支持する書類に署名した」と発表した。

 コプト教徒は、イスラム主義者が政権の座についた場合に二級市民の地位に落ちることを危惧している。宗教書専門書店店主のアシュラフ・ワフバ氏は、「ムバーラク大統領が10人の候補の中で一番いい…。我々は残りの候補を知らない。何人かはムスリム同胞団を支持しているかも知れない」と話した。

 しかし、ムバーラク大統領が間違いなく当選するであろうことを知りながらも、シュヌーダ総主教のムバーラク大統領への公然たる支持に警戒感を表す人もいる。コプト教徒の知識人らは教会に対し、1952年の革命以来その役割が限定されている非宗派主義政党に代わって、コプト教徒の宗教的権利の保護に加えて世俗的権利を守る姿勢をとるように求めている。

 コプト教徒の政治活動家ラフィーク・ハビーブ氏は、「総主教の声明は、コプト教徒をさまざまな政治路線から隔離するものである」「コプト教徒をさまざまな路線から隔離するということは、彼らを教会の中に引きこもらせることであり、こうなればますますコプト教徒とイスラム教徒の間の溝が深まることになる」と語った。

 また、政治活動家マムドゥーフ・ラムズィー氏は、「我々はムバーラク大統領を支持する。だが我々は、我々の行動指針にもとづいて支持するのである」とコメントし、政権への参加と世俗的憲法制定を希望していることを明らかにした。

 一部のコプト教徒の知識人はムスリム同胞団に対する懸念を否定している。シュヌーダ総主教さえも、大統領は多数派の宗教、すなわちイスラム教徒の中から選出されるべきである、と述べている。



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( 翻訳者:村山誓一 )
( 記事ID:799 )