バグダードで自殺攻撃、警官24名死亡(アル・ナハール紙)
2005年09月16日付 Al-Nahar 紙

■ バグダードで新たに自殺攻撃、警官24名死亡
■ シリアとの国境制圧のためアメリカ人がアル=カーイムへ

2005年9月16日付アル・ナハール紙(レバノン)HP1面

【AFP、ロイター、AP】

 タルアファルの町を攻撃したアメリカ軍の軍事作戦への報復として「メソポタミア聖戦アル=カーイダ機構」が実行声明を出した一連の自殺攻撃による流血の事態に引き続き、首都バグダードで自殺攻撃によってイラクの警官24名が死亡した。ヨルダン人過激派アブー・ムスアブ・アル=ザルカーウィーはこれに先立って、多数派であるシーア派、米政府が支援するイラク政府、さらに政府に協力する全ての者に対する戦争を表明している。

 アメリカ軍は「予期されていた暴力のエスカレート」を、イラクにおける政治的プロセス完了の道を整備するイラク新憲法の国民投票の日が近づいていることに結びつけている。またアメリカ軍は、シリアとの国境を掌握し外国人戦闘員がイラク全土の隅々にまでに侵入するのを阻止するための計画の一環として、この国境に近いアル=カーイムの町で新たな軍事掃討作戦を始めると語った。

 バグダード南部のアル=ダウラ地区では3つの爆弾攻撃があり、こちらも21人の負傷者を出している。アメリカ軍とイラク軍がイラク北部の抵抗運動拠点に対して攻撃を繰り返しているにも関わらず、スンナ派アラブ人の抵抗の制圧に失敗した政府にとって新たな打撃となった。

 この前日には、バグダードで160人が死亡、そのうち114人は労働者が大勢集まっている中でバンによる自爆攻撃によって倒れ、イラクにおける流血の最大の日のひとつとなった。

 ザルカーウィーのものとされる声明では、これらの攻撃は、現在権力をクルド人とともに支配しているシーア派に対する戦争の最初の攻撃であるという。

 石油精製所があり暴力の中心とみられているアル=ダウラ地区では、自殺爆弾攻撃の後、警察と武装勢力の間で戦闘が起きた。

 最初の自殺攻撃者は自動車をトラックに衝突させ、警察官15人が殺害された。彼らは武装勢力に対する戦闘に参加している特殊部隊の隊員である。金属片が散らばった通りでは燃えるバスの近くでは遺体に白い覆いが掛けられ、爆発地点に近い民家からは煙が立ち上っていた。

 警察によればその数時間後、2人の自殺攻撃者が数分違いで2つの攻撃を行い、警察特殊部隊の隊員や士官9人を殺害した。

 アル=カーイダ機構は、どの攻撃についてかは特定せずに、最近の攻撃について実行声明を出し、「偉大な誇り高い獅子たちは彼らの純粋な血によって勝利の夜明けを生み出し続けている。タルアファルのスンナ派の人々のための復讐の攻撃は止まず、神のお許しによって続く。他の勇敢なる町々は神の唯一性に殉ずる獅子たちとして、殉教者の大群に次々と加わるのだ」と述べている。

 バグダードから南へ100km離れたヒッラの町の近くでは、政府を支配するシーア派政党のひとつに所属するシーア派の有力な宗教者マフディ・アル=アッタールの遺体を発見したと警察が報告している。アル=アッタール氏と3人の随行者は銃弾に打たれたうえ、刃物で刺されて死亡した。

■ アメリカ軍

 リック・リンチ司令官は報道陣に対し「この一連の暴力は民主主義への道において重要な成果が近づいているがゆえの、予期されたものだ」と発表し、「民主主義が抵抗勢力の失敗を意味することを忘れないでほしい。我々が国民投票へと前進しているために、彼らは恐れているのだ…これは民主主義への一歩である」と述べた。さらに、アメリカ軍はザルカーウィーが拠点を構えているとおぼしき町々に攻撃を仕掛ける準備をしていることを明らかにし、「我々はザルカーウィーの運動の拠点や安全な避難場所を構えようとしている場所について重要情報を得ている。…彼が安全な避難場所を構えようとしているのを見つけ次第、我々はタルアファルで実行したのと同様の作戦を実行するだろう。…我々はイラク治安部隊と協力し、我々に与えられている全ての手段を用いてザルカーウィーを発見し、殺害する。」と述べた。

 また司令官は、アメリカ軍とイラク軍はタルアファル制圧後、シリア寄りの国境地区を再び制圧するために、特にタルアファル南部の主な抵抗の砦であるアル=カーイムの町近くで戦闘を行っていると説明し、「現在の目標は国境、この場合具体的にはシリア国境近くの支配を取り戻すことである」と述べた。さらに「テロリストや外国人戦闘員はシリア国境を超えてユーフラテス川沿いを経由してバグダードへ至っていると考えている」とも述べている。

 アメリカ軍は、イラクの軍隊・治安部隊が自ら責任を担い、アメリカ人が自国へ帰還できるようになることを期待して、彼らの訓練を請け負っている。アメリカ軍は実際にイラク軍の19万人を訓練し、戦闘準備のできているイラク軍115個大隊が存在すると述べた。

 しかし、武装勢力の攻撃の後退を示すものはない。治安部隊の一部の要員は武装勢力が、仲間を何百人も殺害した彼らの顔を見分けることを恐れて、顔を覆面で覆っている。

 暴力は政治的プロセスの展開に影を落とし、10月15日に実施することが決定している新憲法への国民投票が宗派間の緊張度を軽減し安定が実現するだろうとイラク人たちに納得させようとしている政府の努力を打ち砕いている。

 宗派間戦争を開始するとのザルカーウィーの声明は、スンナ派過激派があらゆる政治的行為を無効にして内戦を勃発させるためにシーア派を攻撃しているとの政府の訴えを裏付けている。

 スンナ派の有力な宗教者らは、シーア派民兵が治安部隊とともに行動することを許したとして政府を非難しているが、政府はこの訴えを否定している。

 イラクの住民の20%を占めるスンナ派は数十年間にわたってイラクを支配してきたが、2003年4月にサッダーム・フセイン元大統領が打倒された後、自分たちの影響力喪失を拒否しており、新憲法が北部でのクルド人同様に南部でシーア派に自治を許し、自分たちがさらに周縁化されることを恐れている。



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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:964 )