オルハン・パムクの受賞へ祝福の声―ヤシャル・ケマルほか(Hurriyet紙)
2006年10月12日付 Hurriyet 紙

トルコ文学界の重鎮たちの多くは、オルハン・パムクのノーベル文学賞受賞の報をうけて「誇るべきこと」との談話を発表した。しかし、詩人で作家のオズデミル・インジは厳しい批判を本紙に寄せている。

ヤシャル・ケマル(作家)―海外滞在中のパムクに電子メールで次のようなメッセージを送った。「心からの祝福を君に送ります。君はこの賞にふさわしい。受賞の報に心からうれしく思いました。これからもずっと変わらぬ情熱で新作をかいてくれることと思います。君が信じるとおりの自分であり続けることを確信しています。」

ドアン・フズラン(文学評論家)―トルコ文学がノーベル文学賞を受賞することは、小説という分野からみて、とても喜ばしいことだ。私個人としてもとてもうれしい。よいトルコ人作家がこのような国際的な賞を受賞することは、間違いなく、みんなを喜びに包む。同時に、この文学賞はトルコ文学の名を世界に知らしめることになるだろう。今後、多くの人々がトルコ文学のほかの作家たちの作品も翻訳することだろう。

アダーレット・アーオール(作家)―フランスがトルコに敵対する法案を可決した悲しむべき日にこの受賞の報が入ってきたことは、私を落胆から救った。今後、人々はオルハン・パムクの背後には何があるのかと、トルコ文学に目をむけるようになるだろう。パムクの作品も、さらに多くの言語に翻訳されるだろう。

ハールク・シャーヒン―トルコ文学の名において、これほど誇らしいことはない。パムクは、かねてよりこの賞にふさわしい作家だった。この賞が今日発表されたことは、とても重要だ。人生はこんなものだ。フランス議会で例の法案が通ったあと、パムクがノーベル賞をとったという報が入ったことは、この国の人々を勇気付ける。ノーベル賞とともに、世界中の目が、トルコ文学に、さらにはトルコにそそがれるだろう。トルコ文学のなかには、他にもだれかいるにちがいない、と思うことだろう。パムクは、どのような文学伝統の中から現れたのかと考えることだろう。その結果、他の重要な作家たちにも光があたることだろう。トルコが文学や芸術の点でも無視できない国であることがわかるだろう。パムクを心から祝福します。

アフメト・テッリ―知的に考えて、この受賞はとても重要だ。それは、オルハン・パムク個人がどうこうという問題以上に大事だ。この国が世界にひられるための扉となることだろう。トルコの潜在能力を示した点でも重要だ。

トゥールル・エルユルマズ―オルハン・パムクはとてもいい作家だ。小説の技法にすぐれ、読者を楽しませる。あらゆる点で成功している。トルコの大地が生んだ、ひとつのイコンだともいえよう。暮らしている町を愛し、祖国を愛する、普遍的な作家だ。彼以外に賞に値する作家はいない。

アフメト・ユミット―とても誇らしく、うれしく思いました。トルコ文学としても、成功です。他にもパムクに匹敵する有力な作家はいたとしても、彼がこの賞を取ったことは大きな意味を持ちます。トルコが、そしてトルコ文学が世界で知られるようになることでしょう。

ムラトハン・ムンガン(作家)―とてもうれしいです。トルコ語で書く作家がこの賞をとったのだからうれしくないはずがありません。パムクについての、あるいは、彼の文学についての考えがいかなるものであろうとも、我々は彼の側にいなくてはなりません。この賞は、ある意味で、トルコ文学に与えられた賞ともいえます。今後、またこの賞をとれるほか作家もでてくるでしょう。パムクは、長い時間をかけて、この賞の獲得に向けてのプログラムを実践してのだと思います。作品により、またその行動によって。それが報われことの喜びを味わうことに、異を唱えるものではありません。

ズリュフ・リバネリ(音楽家、作家、政治家)―とてもうれしい。オルハン・パムクに対しても、また、トルコ文学のためにも喜ばしい。パムクにこの賞が与えられることによって、トルコには、近代的で力のある文学が存在することを、世界に向けて再び証明することになった。なぜなら、トルコが何世紀にもわたって築いてきた確固たる文学伝統と、近代文学における潜在能力は、このような賞の受賞に値するものだったからだ。ヤシャル・ケマルも30年以上にわたってノーベル賞の有力候補としてあげられてきた。しかし、この受賞は、(パムク)個人のものだけではなく、トルコ文学に与えられた賞としても見なくてはならない。この点からも、とても喜ばしい。

オズデミル・インジ(詩人)―オルハン・パムクは平凡な作家だ。トルコ文学が文学賞をとったわけではない。オルハン・パムクに与えられたものだ。ノーベル賞受賞者のパムクはアルメニア人虐殺問題を肯定している。これはとても重要なことだ。乗り越えられねばならないが、乗り越えられない重荷となるだろう。トルコを売り飛ばしたような行為だ。トルコの歴史が競りにかけられた。そして、競りの最も安値で売り落とされたようなものだ。それゆえ、恥ずべきことだ。これを言わずにはおれない。

トルコ文化観光省事務次官ムフタファ・イセン―文化観光省として、オルハン・パムクを祝福する。たいへん喜ばしい。トルコ語は世界の重要な言語のひとつである。この賞は、オルハン・パムクに与えられたものであるが、同時にトルコ語に対して与えられたものだ。トルコ語は、世界の多くの人々によって知られるようになるだろう。


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( 翻訳者:林佳世子 )
( 記事ID:3703 )