国連から国際法廷草案が到着、レバノン国内各派協議会の議題に(アル・ナハール紙)
2006年11月11日付 Al-Nahar 紙
■ 国際法廷問題が国内協議のスケジュールに闖入
■ 3・14勢力は国際法廷と「全閣僚数の3分の1」との交換取引を拒否
2006年11月11日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
ラフィーク・アル=ハリーリー元首相ほかの命を奪った一連の犯罪に関与した者全員を裁くための国際的性質を有する特別法廷に関し、設置基本規定の草案が昨日突如として届き、本日第4ラウンドを再開する国内各派の協議会の作業スケジュールに急遽組み込まれることになった。国連からの草案がコフィー・アナン事務総長を通じてフアード・アル=セニョーラ首相に届いたことは重要な出来事であった。なぜなら、レバノンが長い間注目してきた原則的問題に関する論争が決着を見ることになるからである。法廷の誕生をめぐってはいまだ国内的、地域的、国際的な論争が、特に国連安保理において続いている。国連安保理ではこの草案に対し、ロシアが数週間にわたって次々と意見した。さる有力な閣僚筋の推測によれば、本日こうしたロシアの意見を乗り越えたことは、ロシアの立場に変化が起きたことを明らかにするものであるという。また、この草案がもたらされたタイミングは、ヒズブッラーが「保証のための全閣僚数の3分の1」を得る代わりにこの国際法廷に関する原則を順守することに合意すると発言し、これに対して3・14勢力の指導者らが、国際法廷の問題が「交換取引」の対象外であると激しく主張し、ヒズブッラーの申し出を拒否している最中であった。
■ 閣僚会議
本紙が得た情報によれば、昨日セニョーラ首相はゲイル・ペデルセン国連事務総長代理から国際法廷草案を渡された後、草案のコピーをエミール・ラッフード大統領、ナビーフ・ビッリー国会議長、シャルル・リズク法相に送った。今朝9時には別のコピーを閣僚らに手渡す予定である。したがって、緊急事案の協議に定められた法的期間内に議決するために、来週月曜日にはこの草案の提出と承認を行う臨時閣僚会議が招集される可能性が大きいとみられる。
セニョーラ首相は昨夜ラッフード大統領に連絡をとり、これから草案のコピーを送ることを伝え、月曜日の閣僚会議開催を提案した。ラッフード大統領は検討すると回答した。両者は再度連絡をとることで合意し、その連絡は今朝行われる見込みである。ラッフード大統領は月曜日には所用があると伝えられている。
こうした迅速な措置は、本日午前中に行われる国内各派の協議会に先んじようとするもので、現在の展開を受けて必要な措置をとる必要があることを強調する狙いがある。
■ ハリーリー議員
本紙が国際法廷草案について質問したところ、「ムスタクバル・ブロック」代表であるサアド・アル=ハリーリー議員は、「唯一明らかなことは、国際的性質を有する法廷の草案が届いたことにより、この法廷を恐れている者たちにとってはでっち上げや捏造の手段が出来た、ということである。ラフィーク・アル=ハリーリーの流した血と全閣僚数の3分の1とを交換すると言われている取引に関して流布している言葉はいずれも、策略として作られた言葉である。いかなる取引であろうと、取引を語る言葉で汚されるほどハリーリー元首相の血は安いものではない。国際法廷はレバノン国民全員が一致して合意しているものであり、政治指導者たちも国民対話会議において合意を表明し、法廷の設置が確固とした国民的意思であるとの認識を示している。今後もこの合意が全閣僚数の3分の1やその他の政治的事項に関する取引の場に上ることはない。今こそ、レバノンの上に訪れた真実の長い朝の真実の時だ。あらゆるレバノン人は、誰がラフィーク・アル=ハリーリーの殺害者を保護し、国際法廷の妨害を望んでいるのかを見守ってゆくであろう」と答えた。
■ 3・14勢力
3・14勢力のさる情報筋は、「その意図が明らかな一部の政治勢力が、故ラフィーク・アル=ハリーリー元首相、故バースィル・フライハーン議員と同行者たちの暗殺を裁く国際法廷の問題を、複数の問題をめぐって現在行われている協議のための政治的取引の場に持ち込もうとしている」「国際法廷の問題は、交換取引にもいかなる種類の取引にも乗せられない。我々はこれらの勢力に対し、無益な目眩まし作戦にメディアを利用することはやめるように要請する」と述べた。
■ ハマーダ通信相
マルワーン・ハマーダ通信相は法廷問題について、「(法廷問題は)倫理的問題であり、政治的問題ではない。故ラフィーク・アル=ハリーリー元首相の血はいかなる協議の場にも売りに出されてはならない。協議の目的は新しいレバノン国家を実現することであり、始めに共和国大統領職、続いて政府、そして議員選挙を刷新していくことである。全閣僚数の3分の1について言えば、我々としては国家のトップ[大統領]が拒否権を行使していることだけでもう十分である」と述べた。
■ アマルとヒズブッラー
本紙の得た情報によれば、法廷草案のコピーはヒズブッラーとアマルにも送られ、両党は専門の委員会に草案の検討を委任した。この草案に彼らの強迫観念を強めるものが何もないことがヒズブッラーとアマルにとって明白になれば、草案を承認するための閣僚会議開催の呼びかけに対し彼らも同意する旨、関係者に通達するであろうとの情報がある。
ヒズブッラーとアマルによる検討の結果は、本日の協議会における論争の行方に反映されると予測されている。
国民対話会議においてヒズブッラーの代表を務めるムハンマド・ラアド議員とムハンマド・フナイシュ大臣は、協議会の第3ラウンドの折に国会議事堂内のビッリー国会議長の執務室で行われた秘密会談の際、サアド・アル=ハリーリー議員に対し、ヒズブッラーが国際的性質を有する法廷に対して原則的には反対していないこと、ただし「草案を通じて国際社会が忍び込み、レバノンの支配権を握ることがない」ように、全員で草案を徹底的に読む必要があることを伝えたと言われている。
■ ビッリー国会議長とジュンブラート議員
昨夕、「民主主義会合」代表であるワリード・ジュンブラート議員はアイン・アル=ティーナにある国会議長官邸を訪れ、ビッリー国会議長と長時間の会談を行った。情報によれば両氏は、協議の席で本日話し合われるであろう事項を取り上げ、全体に目を通し俯瞰的な確認を行ったという。
(中略)
■ アウン議員
「変化と改革ブロック」代表であるミシェル・アウン議員は、昨夕「アル=マナール」[※ヒズブッラー系TV局]への談話において政府における「全閣僚数の3分の1」を再度要求し、多数派に「保証」を提供することを確約した。アウン議員は繰り返し、多数派が「空想上の多数派」であると表現している。また、この多数派が「仲間以外は敵、という秘密連合と化した」と述べた。
アウン議員は、自身が「レバノン軍団」執行部代表であるサミール・ジャアジャアと先日会ったことは、「政治ゲームの決まり事」であると説明した。また、自身がイランやシリアと関係しているとの疑惑を否定し、早期選挙を要請した。また国際法廷問題に触れ、政府の閣僚数が30人であれば、「変化と改革ブロック」は5つの閣僚ポストを要求すると述べた。また特に財務相のポストについて、主要省庁であるがゆえに「マロン派のポストである」と主張した。
アウン議員は、「ボールは彼らのフィールドにある。我々が街頭行動ばかりを考えているなどと彼らが言い出さないように、我々はあらゆるチャンスを与えてきた」と述べ、「なぜ彼らが大統領の座を得るのか?(…)我々は国民を参加させる解決策以外は受け入れない」と主張した。
またアウン議員は、協議の失敗へと向かう動きについて、まずシーア派閣僚らが辞職し、ヒズブッラーその他とともに街頭行動にうったえることを検討することから始まると述べ、反対派勢力は殉教者広場は多数派勢力のために残しておくと述べた。
アウン議員は、ラフィーク・アル=ハリーリー元首相暗殺事件が「テロではない」とする見解を否定し、国際法廷草案の検討に先立って草案に対する立場を示すことを避けた。
(後略)
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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:3939 )