ヴェールの起源を執筆し告訴されたシュメール学者、無罪放免(Radikal紙)
2006年11月02日付 Radikal 紙
シュメール学者ムアッゼズ・イルミイェ・チュー氏と出版元は、著書『一国民としての私の反論』が原因で裁判にかられていたが、初公判で無罪判決を言い渡された。92歳になるチュー氏は、裁判所の出口で応援してくれた人々に対し「この国が滅びることはないだろう。」と言い、謝意を表した。
トルコ初のシュメール学者の1人である92歳のムアッゼズ・イルミイェ・チュー氏は、『一国民としての私の反論』という著書の中で「人の悪意と敵意を挑発した罪ならびに侮辱罪」を犯したとされ公判中だった裁判で、無罪判決を言い渡された。チュー氏に対する無罪判決は、「犯したとされる罪の法的根拠が無い」という理由で下された。また出版者イスメト・オーウテュジュ氏に対しては「第5187条11項によりこの事件に対する責任はない」と判決理由が述べられた。
シュメール学者ムアッゼズ・チュー氏と、氏の本を印刷したアナリズ印刷出版株式会社の担当理事イスメト・オーウテュジュ氏の裁判は、1日、ベイオール第2下級裁判所で行われた。裁判のため警察が広範囲にわたって警備体制をとる一方で、女性団体や近親者、一部の芸術家がチュー氏を支持するため裁判所に集まった。5名用の法廷で裁判が行われたため、弁護士らと裁判官の間で短い議論が起こった。チュ-氏の弁護士のほかに、およそ30名の弁護士も同席した。
■問題となった表現
チュー氏は次の表現が原因で告訴された。それは著書『一国民として私の反論』の48ページと100ページにある表現だ。
48ページには、「ヴェールをかぶるという行為がどこから来たのかを知ったら、あなたは被るのを恥ずかしいと思うでしょう。寺院にいる売春婦達が他の女性たちと見分けてもらうためにヴェールをかぶったものでした。」とあり、100ページには次のように書かれている。「最も良い方法は、ファーティフ区の一部の住宅で行われているように(そこに行った人が説明してくれたのですが)、売春宿に聖職者をひとり常駐させておいて、来た客を結婚させ、そして帰るときには離婚させる。または結婚手続き専用の聖職者と離婚手続き専用の聖職者と二人でもよいと思います。こうして女性の名誉は守られますし、お金を稼ぐことができるので飢えることはありません。そしてまた男性は自分の欲望を満たすために性的倒錯に陥らなくてもすみますし、聖職者にも仕事が増えます。アッラーも大変お喜びになることは疑いのないことです。こうしてあなた方は善行を積むことができますし、その一方で市役所は税金を確保することができるのです。」
チュー氏は著書のなかでヴェールについて、シュメール時代に神聖なものと考えられていた寺院の売春婦が被っていたと述べている。そしてヴェールをかぶるという伝統がアッシリア王の命で流布し、ユダヤ教を経てイスラームにまで至ったと書いていた。
チュー氏とオーウテュジュ氏には、「人の悪意と敵意を挑発した罪ならびに侮辱罪」でトルコ刑法第216条の2ならびに218条により9ヶ月以上1年以下の禁固刑が求刑されていた。
チュー氏は1日の公判で、自らについてアタテュルクの原則を大切に思っている知識人であると述べ、次のように続けた。「私は人の悪意や敵意を挑発しようとする頭の持ち主ではありません。ですから私に問われた罪を絶対に認めません。」 本を出版したオーウテュジュ氏も罪を認めないことを明らかにし、単に本を印刷しただけだと主張した。
■「罪ではない」
共和国検察官のメフメト・アクッル氏は基本原理を説明し、「特定の市民層を対象に悪意と敵意を挑発する」行為が言動のみであった場合、法的な罪とされるには不十分であると説明した。イルファン・アーディル・ウンジュ裁判官は、罪を犯していると主張された文章にある批判は、この本の解釈や本全体を詳しく調べてみると法的には罪とみなされないと述べ、このためチュー氏に無罪判決を言い渡した。ウンジュ裁判官はイスメト・オーウテュジュ氏に対しても第5178条出版法の11項にしたがって責任がないことから無罪判決を言い渡した。
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( 翻訳者:住永千裕 )
( 記事ID:3828 )