与党AKP、エルバカン元首相の恩赦を準備?(Milliyet紙)
2006年01月21日付 Milliyet 紙

 公正発展党の幹部は、「政治は司法に干渉すべきでない」などと発言する一方で、司法による最終判決がすでに出されているネジメティン・エルバカンを刑務所から救出するために「特別恩赦」に向けた準備を進めている。

 メフメト・アリ・アージャの釈放に関する批判に対して、公正発展党は「政治は司法に干渉すべきでない。人によって対応が変わるようなことがあってはならない」と応じてきた。にもかかわらず、司法によってすでに最終判決が出ているネジメッティン・エルバカン元首相を刑務所から救い出すために「特別恩赦」に向けた準備を進めている。トルコ国会議長ビュレント・アルンチの要求の後共和人民党との交渉に入った公正発展党は、エルバカンが罰金を支払うことなく刑を自宅で受けることのできる方法を模索している。
 法務大臣のジェミル・チチェキは、アージャの釈放について政府も批判の的になった際には、「官僚も政治も司法に干渉するべきではない。私たちにはそんな権限はないのだ」と述べたのだった。
 外務大臣アブドゥッラー・ギュルもまた、「法の適用が個人によって異なるということはありえない。過去の政府が発布した恩赦法は多くの問題を悪化させた。私たちは恩赦に反対だ。人は罪を犯せば罰を受けるものだ」と説明したものだった。
 だが、エルバカンを救う努力は、政府の内部分裂を浮き彫りにした。
 これまで2年4ヶ月の刑を言い渡されながら執行を4回延期したエルバカンに「降参」を呼びかけるエドレミット市検察庁長官の書簡が弁護士たちに届いた。弁護士たちは、5度目の刑執行延期手続きを行うため、週明け早々に申請を行う。しかし、エルバカンにとっては刑罰執行法(CIK)上、今回が最後の刑執行延期権の行使となるため、今後は持続的な方法が模索されることになる。
 アルンチ議長と協議した至福党代表レジャイ・クタンは、「彼は私に私たちが共和人民党と会談を行ったと語った。彼らは刑を自宅で執行するために奔走している。」と語った。

■打開策は刑罰執行法にあり

 公正発展党議員グループ代表のサドゥッラー・エルギンと共和人民党グループ議員代表アリ・トプズがこの件に携わっている。公正発展党は、議員の票数としては圧倒的多数のため、数の上で共和人民党の支持を必要としているわけではないが、「『ミッリー・ギョルシュ』の支持者が師であるエルバカンを救った」という批判にさらされることを防ぐため、野党の支援を重視している。
 救出方法の模索のために、刑罰執行法が「75歳を超えていて3年以下の懲役を受けたものは、刑を理由とする損害賠償を払ったうえで自宅で刑を受けることができる」という表現を含む第110条に関する働きかけがなされている。
 提案では「損害賠償を行う」という条件が削除されると考えられている。



********************本記事への解説********************
「ミッリー・ギョルシュ」とは「国民(民族)の視座」という意味である。1969年にコンヤから無所属で国会議員に選出されたネジメッティン・エルバカンは1970年に国民秩序党(MNP)を結成した。エルバカンはトルコ共和国の世俗化、西欧化を批判しイスラーム的な規範、道徳、美徳に依拠した体制や政策を通じて社会的公正と経済発展を両立できると説き、この思想はその後エルバカンが設立したイスラーム系政党の党綱領に取り入れられた。そのため彼が主導してきたイスラーム運動は「ムスリム国民の視座」という意味で「ミッリー・ギョルシュ」と呼ばれる。
 しかしエルバカンの諸政党はその後「世俗主義とアタテュルクの革命の原則に反する」という理由から、憲法裁判所によって閉鎖させられた。

・1971年国民秩序党(設立1970年)
・1980年国民救済党(設立1972年)[軍事クーデターによる全政党閉鎖、エルバカンは1987年まで政治活動禁止]
・1998年福祉党(設立1983年)[エルバカンには政治活動禁止令]
・2001年美徳党(設立1997年)

エルバカンは政治活動を禁じられていた時期にも党へ多大な影響力を及ぼしてきたが、90年代半ばから党の若い世代との政策方針の相違が目立つようになってきた。その若手の代表が現首相で当時イスタンブル市長として成功を治めていたタイイプ・エルドアンである。ミッリー・ギョルシュ運動はエルバカンの意向を継いだレジャーイー・クタンを中心とした伝統派とエルドアンを中心とした革新派に分裂し、2001年に美徳党が閉鎖された後、両者はそれぞれ至福党と公正発展党を設立した。しかしエルドアンはトルコのイスラーム運動に大きな影響を及ぼしたカリスマ的人物であり、彼への敬意は袂を分かった公正発展党でも失われていないと言えよう。
(解説文責:大島 史)



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( 翻訳者:藤巻 晋也 )
( 記事ID:1749 )