ベイルートのハムラー通りに新しいカフェ「ター・マルブータ」登場(アル・ナハール紙)
2006年12月15日付 Al-Nahar 紙

■ カフェ・モドカがなくなり、ウィンピー閉店の可能性が伝えられるなかで開店
■ カフェ「ター・マルブータ」、ハムラー通りの記憶に灯りを取り戻す集いのサロン

2006年12月15日付アル=ナハール紙(レバノン)HP文化面

【ラーミー・アル=アミーン】

 若い男女がテーブルを取り囲んで歌っている。「こうなったんだよ、そういうことさ、あんたに責められる言われはないさ」サイイド・ダルウィーシュの歌だ。それを歌うファイルーズの声が店内の隅々から微かに聴こえてくる。

 あなたがここで聞くことができるのは、こういったアーティストたちの歌である。別のテーブルでは、若者がノートパソコンに向かってインターネットを利用している。店内ではインターネット使用の無料サーヴィスがあり、ここへ勉強したり情報を探しにやって来る大学生たちに提供されている。

 バーの前では若い男女が座ってワインを飲んでいる。巨大なスクリーンがあり、天井に据え付けられた機械から映像が映し出されている。ハサン・ナスルッラー師の演説が流れている。スクリーンの前に大勢の若い男女が集まって、ナスルッラー師の演説に喝采を送っている。

 ここハムラー通りの「パヴィヨン」ビル2階にあるカフェ「ター・マルブータ」では、ナスルッラー師の支持者が多い。そのような落ち着いた場所で大きなスクリ-ンにナスルッラー師が映し出されていることに不快感を覚える人もいるだろう。この国では政治があらゆる場所の空気をかき乱しているのだ。

 しかしこの店の所有者の一人であるビラール・アル=アミーン氏は、この店はそもそもイラクやパレスチナでの事件やイスラエルの対レバノン戦争などの政治的問題に関わる活動を核として始まったカフェであると弁明する。ハムラー通りを選択したことについては、ベイルートの他の地域が宗派や政党で色分けされるようになる中、この通りに未だ存在する混淆と多様性ゆえであると語っている。

 若者たちは共に集まり、自分たちの問題や悩み事や夢を語り合える場所を探していた。そして7月の戦争が終わった後に最近開店した「ター・マルブータ」が、この若者たちの熱い夢や議論の避難所となったわけだ。

 「ター・マルブータ」はハムラー通りのカフェや酒場の中にその位置を確立し始めている。この店が多少遅きに失したとは言うものの今はなきカフェ「モドカ」や、閉店の可能性が伝えられている「ウィンピー」の後を補うために登場したのだと語る人々もいる。ハムラー通りは最近、自らを再び創出しつつある。「ター・マルブータ」はそのプロジェクトに寄与するものだと言ってよいだろう。「ター・マルブータ」は郷愁と思い出と時の流れが宿るこの通りに若者たちの暮らしや文化的な生活の空気を何がしか取り戻させる存在である。若者二人(そのうちの一人がビラール氏)が所有するこのカフェは、その多様な彩りと夜にきらめく灯りを今なお保つこの通りに、時の流れをあらたに積み重ねてゆくことに寄与する存在である。

 「ター・マルブータ」はカフェと酒場と図書館が一つに集まった場所である。三つの相異なったものがここで日常生活の混淆をかたちづくっている。恋人たちがいれば学生がおり、酔っ払いや知識人たちもいる。カーテンで仕切られた部屋が一つあり、そこには開店の日に何人もの人々が持ってきて寄贈したかなりの数の図書を所蔵するライブラリーがある。内部には大きなテーブルと多数の椅子が設置されている。

 このテーブルを囲んでさまざまの活動や会合が行われる。たとえば「永続的な民主主義のためのセンター」が主催する「人民カフェ」という催しがあり、そこでは政治的あるいは社会的な問題について議論がなされる。また「アル=アーダーブ」誌のような雑誌の刊行について長きにわたる議論が展開された。さらに数多くの若者たちが集まり、この街を豊かにする文化的なプロジェクトについて検討が行われたりする。

 ナスルッラー師の演説が流れているスクリーンではこれまでに、数々のレバノン映画や外国映画が上映され、ここで定期的にすぐれた映画を上映するための映画サロンを開設する計画もある。

 平日には朝も夜も「ター・マルブータ」の雰囲気は静かなものであるが、週末には喧騒と踊りと歌声に包まれる。このため店の常連客、とくに店内で仕事や読書をしたり静穏を求める人々は多少の不快感を覚えることになる。ともあれ、理想的な場所などというものは存在しない。「ター・マルブータ」は喧騒と素朴のあいだを調和させつつ、店の隅々から栄光をかき集めようと試みているところなのだ。


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( 翻訳者:南・西アジア地域言語論(アラビア語メディア翻訳) )
( 記事ID:4185 )