イラク宗派間暴力を終結させるためバグダードと3県で外出禁止令(アル・ナハール紙)
2006年02月24日付 Al-Nahar 紙

■ 本日、宗派間暴力を終結させるためバグダードと3県で封鎖措置
■ スンナ派・シーア派間の信頼関係を構築し危機を終結させるため国際的な努力

2006年2月24日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【AFP、ロイター、APその他】

 内戦の勃発を危惧する指導者らが冷静な行動を呼びかけているにもかかわらず、イラクの諸都市、特に首都バグダードとバスラでは宗派間での流血の事態が横行し、サーマッラーでのアリー・アル=ハーディー、アル=ハサン・アル=アスカリー両イマームの廟が爆破された後の抗争により130人以上が殺害されるに至った。この両イマームの廟の爆破について、当局はアル=カーイダ組織のメンバーらが実行したと見ている。

 平静と自制とを訴える国際的な呼びかけが高まり、またアメリカのイラク侵攻以来最悪となる今回の危機に対し、アメリカのジョージ・ブッシュ大統領とイギリスのトニー・ブレア首相の介入が要請されている。ブッシュ大統領は「イラクに暮らす人々皆からは理性的な声が聞かれ、彼らはこの爆破攻撃の狙いが宗派間の暴力行為を引き起こすことだと理解している(…)この行為は卑劣な行為である」と述べた。今回の新たな危機は、アメリカ軍の撤退帰国につながる挙国一致政府組閣のための努力を脅かしている。特にスンナ派アラブ人のリーダーらは、国内を支配しているシーア派がスンナ派モスクに対する何十回もの攻撃に関与したと非難して、アメリカ政府の主導による組閣の協議から撤退した。

 スンナ派系の「イラク統一戦線」はシーア派政府に対し、謝罪しなければ組閣交渉に戻らないと要求している。また異例なことにスンナ派リーダーらは、デモ参加への呼びかけを通して暴力を煽っているとして、シーア派最高権威の大アーヤトゥッラーであるアリー・アル=シスターニー師に公然と非難の矛先を向けた。一方のシスターニー師は、イラク民衆に対し団結と暴力の放棄をあらためて呼びかけた。

 こうした中、アメリカ軍発表によればアメリカ兵7人が別々の2つの攻撃で死亡し、アメリカ軍は表通りへ姿を現すことを控えている。またイラク警察は、サーマッラー近くで誘拐されたアトゥワール・バフジャト特派員(30才)ら、衛星TV局「アル=アラビーヤ」で働くイラク人ジャーナリスト3人の遺体を発見したことを発表した。

 2003年のイラク侵攻後に深刻な分裂に見舞われて以来、イラク問題では滅多に団結することのない国連安全保障理事会は、不快感を表明し、イラク人が非宗派主義的な政府に結集するよう呼びかけた。

 アシュラフ・カーディー国連特使も介入し、イラク人指導者らに対し、会談の要請を受け入れるよう求めた。カーディー特使は「政治・宗教・民間の指導者らに対し、状況への統制維持を確かなものにするために信頼関係を構築する措置を検討するよう要請した」と述べた。

 イラクのジャラール・タラバーニー大統領は、イラクが内戦に陥ることを回避するために会議を招集し、 スンナ派がボイコットしたにもかかわらず、この会議を進めた。タラバーニー大統領は、シーア派、クルド人、スンナ派の小グループと協議した後、もし全面的な戦争が勃発すれば、無事でいられる者は一人としていないと述べ、アリー・アル=ハーディー、アル=ハサン・アル=アスカリー両イマームの廟を攻撃したのは「国外から入ってきたタクフィール主義者[※タクフィール:不信心者であると断定すること、異端宣告]やザルカーウィー派である」と強調した。

 一方で「イスラーム宗教者協会」は、スンナ派モスク184ヶ所が被害を受け、宗教者10人が死亡し、15人が拉致されたと述べた。また「アル=カーイダ」組織を含むサラフィー主義の7つのグループから構成される「ムジャーヒド評議会」は、報復は「激震を呼び起こすもの」になるだろうと警告した。

 多国籍軍報道官であるリック・リンチ将軍は、イラクで「内戦」が起きていることを否定した。リンチ将軍は「これまでにイラク全体でモスクに損害をもたらし攻撃は7件発生し、導師2人とスンナ派部族の重要人物1人が死亡した」と述べ、「モスクも銃撃を受けた。それ以上のことではない。我々はイラクに内戦が勃発したとは見ていない。この国で77とか、80とか、100とかいった数のモスクに損害がもたらされたということはないし、通りで死者が出ているわけでもない」と説明した。一方でイラクの治安部隊は、スンナ派モスク30ヶ所が攻撃されたと語っている。

■ 金曜礼拝の説教

 イラクのイブラヒーム・アル=ジャアファリー首相は、スンナ派およびシーア派の宗教関係者に対し、金曜礼拝の演説ではイラクの結束を強調するよう要請した。ジャアファリー首相はスンナ派ワクフ局責任者アフマド・アブドゥルガフール・アル=サーマッラーイーおよびシーア派ワクフ局責任者サバーフ・アル=ハイダリーと面会した後、「金曜礼拝を利用して、人々を方向付け、導かなければならない。説教では団結を強調しなければならない」と述べた。首相は聖廟を保護するための治安計画の策定を発表した。

 首相および内相官房の情報筋によれば政府は本日、暴力停止の目的でバグダード市内と周辺の3つの県において日中の外出禁止を課し、警察はモスクへ向かうためであっても通りに出る者を拘束する予定だという。



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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:1990 )