イスタンブルのバイパス・トンネル計画に反対意見 (Radikal紙)
2006年03月01日付 Radikal 紙

「7つの丘に7つのトンネルを」というスローガンが掲げられたトンネル建設計画に反対の声が上がった。「地下鉄1本で12車線の道路に匹敵する。トンネルを作ったり橋を架けたりするということは、車を増やし交通量を増やすということだ。道路の建設に固執することは、問題を解決不可能にしてしまう。」


交通渋滞の問題で窒息状態のイスタンブル市民を救うため、イスタンブル市は「7つの丘に7つのトンネルを」のスローガンのもと、長さ68kmに及ぶ計31本のトンネルを建設する準備をしている。交通問題に関する唯一の解決策は地下鉄の建設であると識者は見なしており、道路の建設計画には反対している。土木技師協会は、税金の浪費であると主張している。計画を停止させるため、声明を出すことを明らかにした。

イスタンブルに存在する自動車数は280万台に及び、一日当たり600台増加している。この数値は更に増加が見込まれると広域市当局は明らかにし、管轄する3600kmの道路網の延伸を決定した。広域市当局は、「116の交通問題緊急解決策」というスローガンのもとに都心の主要道路116本で新規の立体交差事業を開始していたが、今月に入り、「7つの丘に7本のトンネルを」というスローガンのもと、更なる道路事業を開始する。長さが500mのトンネルから5.8kmのものまで、31本のトンネルで丘をバイパスする予定だと広域市当局は明らかにし、タクスィムとアタテュルク空港の間は、自動車で15分短縮されると主張している。

■バイパスは都心への自動車流入を加速させる

1997年に「イスタンブル輸送主要計画」をまとめたイスタンブル工科大学運輸学専攻の教授ハルク・ゲルチェッキ博士は、立体交差事業に対して強く反対している。ゲルチェッキ教授は、計画によって逆に問題は解決不能になると述べ、以下のように続けた:

「イスタンブル市民は、渋滞から解放される計画を以前から期待しています。しかし、市は解決策と称して更に道路を作る計画です。提示されたトンネル道路計画は、計画としてふさわしくありません。実行可能性の検討がなく、どの道路でどのように渋滞が緩和されるのかがはっきりしていません。計画に示されたトンネルは、自動車用のトンネルです。開通当初には、特定の箇所の車の流れはスムーズになるでしょう。しかし、増加する交通量にともなって、やがてその地点はもっと渋滞するようになります。イスタンブルの交通問題を解決できるのは、自動車専用のトンネルや立体交差、インターチェンジではなく地下鉄です。環状道路とのインターチェンジも作ることになるでしょうが、近代的な都市にあって、これほど、橋や、インターチェンジ、海底トンネルを作ることはありえません。なぜなら、新しく建設するインターチェンジによって、都心により多くの自動車が流入して交通量が増加するためです。交通輸送の問題について、市当局がこのような計画を続けるならば、しばらくのちにはイスタンブルの交通事情は、解決不能の状態となるでしょう。」

■市長の釈明

カーディル・トプバシュ・イスタンブル市長は、自動車専用トンネルと地下鉄のトンネルを比較することに反発して以下のように述べた。

「費用の面、物理的な可能性の面でも、トンネルに鉄道を通すのは不可能です。道路を新たに敷設することができないので、イスタンブルの地形に適合するよう、丘をバイパスして道路と道路をつなげるトンネルを我々は通そうというのです。1時間に35,000人が利用するというような、はっきりとしたニーズが見込まれる箇所には地下鉄を建設します。自動車専用トンネルの規模は、一方向で68km、両方向で120kmを超えます。トンネルの建設には合計20−25億ドルの費用がかかり、1kmあたりの建設費は4000−5000万ドルです。トンネルは長さ400mから1.5kmの規模で掘る予定です。800mの長さのために地下鉄など作れません。トンネルは自動車通行のためのものです。地下鉄と自動車道路はそれぞれ異なるコンセプトに属します。2.5%の勾配では、地下鉄建設は難しい。勾配4%では無理です。ドラプデレ[の窪地]に降りて上がるルートを通るわけですが、あの勾配のきつい土地に地下鉄は作れません。この計画は、世紀の構想プロジェクトなのです。」

■イスタンブルの特異な交通手段の構成

3方向を海に囲まれ、交通手段の90%を自動車が占める特殊な都市、イスタンブルの交通問題を解決するために、何をなすべきかという問題は、数年来の課題である。

イスタンブルの交通インフラの構成は、90%が道路、6−7%が鉄道、3%が海上交通となっている。この巨大都市の地下鉄網の総延長は45kmである。この数値は、ニューヨークと東京では800km、ロンドンとパリでは450kmである。イスタンブルでは、2010年までに、総延長250kmの鉄道網を巡らせることを目標にしており、9路線54kmの鉄道建設が継続中で、7路線105kmの地下鉄建設の工事入札が待っている。

■地下鉄1路線で12車線道路に匹敵

巨大化する我が国の大都市における高額の予算にも関わらず、これほど広範な地下鉄網が建設される理由は、個人による自動車の使用を減らして、大量輸送を実現するためである。自動車道路では1車線につき、1時間に2000台の自動車が通過可能だ。イスタンブルでは、自動車1台あたりの輸送人数は1.7人で、1時間に4000人の輸送が可能ということになる。しかし、その車線を地下鉄が通った場合、1時間で7万人を輸送することが可能で、過密な交通の大幅な緩和を確保することが可能となる。識者は、地下鉄1路線で約12車線分の道路と同じ人数を輸送できると指摘し、新たに道路を開通させて自動車の使用を増加させる代わりに、都心の既存道路を狭めて自動車の使用を減らし、かつ地下鉄を拡充することを求めている。

[中略]

建築家協会のエユプ・ムフチュイスタンブル大都市圏支部長の見解:

「この自動車専用のトンネルは、イスタンブルの町にも輸送手段としても貢献せず、国民の税金の無駄遣いです。自動車専用トンネルの代わりに、マルマライと一体化させた地下鉄を建設すべきです。」

【参考】☆トンネル計画の地図☆ (Radikal紙より)
     ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
http://www.radikal.com.tr/veriler/2006/03/01/metro.gif


【参考記事】
(マルマライ):
2006-02-20  マルマライ(海底トンネル)、2009年完成予定 -国会議員らが現場視察(Milliyet紙)
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006220_1935.html

2006-01-15  マルマライ・プロジェクト第二期(郊外鉄道)工事入札、1月30日実施へ(Milliyet紙)
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006115_1717.html

(渋滞問題):
2006-01-12  イスタンブルの交通渋滞はきわめて深刻(Milliyet紙)
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006112_1703.html

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( 翻訳者:高田 利彦 )
( 記事ID:2000 )