昨年発生した2件の「名誉殺人」 シャルグ紙
2006年04月03日付 Sharq 紙

2006年4月3日付シャルグ紙27面

【社会部】「名誉殺人」は我が国で発生する殺人事件の中でも、比較的大きな部分を占めている。新年に入り、〔昨年発生した〕2件の名誉殺人の被告をめぐる裁判が、地方刑事裁判所で開かれる予定である。

〔*訳注:「名誉」(ナームース)は「家族の名誉」を意味すると同時に、「女性の貞操」を意味することばで、アラビア語の「ナマサ」(隠す)に由来するとも、ギリシア語の「ノモス」(法)に由来するとも言われる。「名誉殺人」の詳細については、「女性の貞操と『名誉の殺人』」をご参照下さい〕

 一つは、昨年シャフリーヴァル月8日〔2005年8月30日〕の夕暮れ時に発生した殺人事件。ネザームアーバード地区の住民らは、近隣宅から聞こえてきた騒ぎ声が気になり、様子を見に外に出た。騒ぎ声は若い夫婦宅から出ていた。近所の住民らが夫婦宅に入ると、そこには切り刻まれ、血まみれになった死体が横たわっていた。

 その後、通報を受け、警察関係者が現場に到着した。死体は男性のもので、激しく切りつけられた跡が残っていた。死体は風呂場から出たところに横たわっており、凶器となった短刀が死体近くの風呂場に落ちていた。また、携帯用の短銃も、現場近くで発見された。

 現場宅に住んでいたのは、マスウードとアァザムの若い夫婦であった。警察による取り調べで、発見された死体はアリーという名の男性であることが分かった。アリーは以前に、マスウードの妹(大学生)とインターネットを通じて知り合い、この関係は電話を通じて続いていた。

 〔中略=この間、以下の内容が詳細に記述される。マスウードは、結婚を考えている男性として、妹から警察官のアリーを紹介される。ちょうど携帯電話を手に入れたいと考えていたマスウードは、このことをアリーに相談、アリーは助力を約束した。〕

 マスウードは時間上の都合から、妻アァザムに本件のフォローを頼んだ。アリーは約束を果たすために、マスウード宅に連絡すると、妻が応対、アリーが書類を受け取りに、アァザムのいる彼らの自宅を訪問することになった。アリーはアァザムと話しているうちに、マスウードとアァザム夫婦に子供ができないなどの、二人の夫婦生活の詳細について知るようになる。アリーはアァザムに「何だったら、助けてあげてもいいよ」と言い寄り、アルコール入りのジュースを差し出し、酔ったアァザムに睡眠術をかけ、ついには暴行を働いたのであった。さらに数日後、携帯電話の件でアァザムはアリーとともにテヘラン北部のタジュリーシュに行って帰宅した後、アリーは再びアァザムに暴行、あまつさえその様子をビデオにとり、彼女をゆするに至る。

 しばらく後、アァザムはその一部始終を夫に打ち明けた。それを聞いたマスウードは怒り狂い、ビデオの入ったCDを買い取るのでアリーに連絡を取るよう、妻に指示。夫マスウードは自宅に金を取りにきたアリーを、風呂場に短刀を持って待ち伏せた。アリーは家に来ると、「女は信用できない」といって、夫婦宅を探索、風呂場のドアを開けた。すると、手に短刀を持ったマスウードに遭遇、マスウードはアリーに襲いかかった。アリーはその前に、武器を携帯している旨、アァザムに伝えていた。そのためマスウードは、間髪入れずに、短刀で彼を襲ったのであった。しかし襲撃後、彼らはアリーが武器を携帯していると言っていたことが事実ではなかったということに、気が付くのであった。

 捜査終了後、マスウードとアァザムはテヘラン州地方刑事裁判所第71法廷に出廷、二被告に対する判決が下される予定だ。

 ▼ バイク乗りの若者に対する殺人

 「名誉」が原因で起きたもう一件の殺人事件も、若い夫婦によるものであった。それはバイク乗りの若者をナイフで刺し殺した事件で、今年テヘラン州地方刑事裁判所第74法廷で裁かれる予定である。

 モハンマドとサミーラーの若夫婦は昨年ティール月〔2005年6〜7月〕、キャラジのメフル・ヴィーラー地区の路地を歩いていた時、二人のバイク乗りとぶつかった。サミーラーは身ごもっており、モハンマドはサミーラーのことを大いに気にかけていた。彼らが二人のバイク乗りにぶつかったのは、そのような時であった。そして、彼らバイク乗りが発したことばが、悲劇の始まりであった。「よかったら、俺がお相手してやろうか」。これを聞いたモハンマドは怒りに震え、「私と一緒にいる女性は、私の妻だぞ」と返答。しかしそれだけでは物足りなかったのか、モハンマドは二人と取っ組み合いとなり、バイク乗りの一人をナイフで刺してしまったのだ。

 数分後、黒のサマンド車が現場近くを通りかかり、怪我人に応急措置を施し、キャラジ・ガーエム病院に連れていった。しかしその甲斐なく、彼は命を落とした。

 〔後略〕

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:2152 )