第51回ユーロヴィジョン、アルメニア問題の影響は皆無(Hurriyet紙)
2006年05月22日付 Hurriyet 紙
アテネで開かれた第51回ユーロビジョン歌謡コンテストの携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を使ったお茶の間投票で、トルコの人々はアルメニア代表歌手に10ポイントをつけた。これにより、いわゆるアルメニア人大虐殺の事実を法的に認めようとする西欧諸国の議会に対し最も意味ある返答をした。またフランスからもトルコに満点の12ポイントが与えられた。
フランスでいわゆるアルメニア人大虐殺を否定することを犯罪とみなす法案が審議されている中、第51回ユーロビジョン歌謡コンテストが行われた。その中で、アルメニアがトルコから10点を得たことや、フランスがトルコへ12点満点を付けたことは大きな反響を呼んだ。視聴者が携帯電話のSMSを使って投票するユーロビジョンで起こった驚くべき結果について、政界や音楽業界の著名人は、これらを「人々の政治家への返答」とみなした。
■デニズ・バイカル(共和人民党党首)「トルコ国民は政治の壁を飛び超えた」
私はユーロビジョンを観ることができなかったが、アルメニアにトルコ人が与えた10ポイントは、トルコ人が音楽と政治を切り離して考え、音楽を音楽そのものとして評価したことを示している。今回の出来事は、トルコ人が政治的問題の壁を飛び超えていることを表わすものであり、トルコ国民の成熟性という観点から見れば喜ばしいことだ。トルコ人がアルメニア問題に起因するコンプレックスを抱いていないということを明らかにしたという点で重要な意味を持つ。
■フラント・ディンク(新聞発行人)「これは平和のメッセージである」
アルメニアの出場作品を一度だけ見たことがあるが、アナトリアの音楽のようなメロディーだった。トルコ人が10点を付けたのにはこのことの影響があると思う。これを、トルコからアルメニアの人々に送られた平和のメッセージととらえることは間違いではない。人々の生活が政治と無縁の状況に置かれとき、どれだけ協調と親愛の感情を抱くことができるかということを示す重要な事実である。
■ガロ・マフィヤン(音楽家)「トルコ人の心は清らか」
大変好ましい出来事だ。人々がお互いに与え合った得点は、ヒューマニズムの価値が優先されたということを示している。政治のせいでつまらない出来事が起こっているが、ご覧の通り人々はこれに抗議しているのだ。トルコの人々の心は清らかであり、こうした純真な心に基づいて行動するのが我々の社会である。この一件は政治家にとても良い教訓を示した。音楽の前には宗教も、言語も、民族もない。
■セゼン・ジュムフール・オナル(作詞家、DJ)「歌がすばらしかった」
私は長年多くのアルメニア人ミュージシャンに曲を提供し、彼らからも曲の提供を受けた。アルメニア音楽はすばらしかった。だから10点を獲得したと思う。フランスからトルコへの12点や、トルコからアルメニアへの10点の得点はすばらしい友愛の表れだ。人々には互いに敵対心がないのだ。この人々の声に政治家も耳を傾けてほしい。
■アルメニア人の反応:トルコから我々へのウインク
ユーロビジョンでアルメニアがトルコから10点を得たことは、(アルメニアの首都)エレヴァンにおいてと同様に、多くの国へ散らばったアルメニア系の人々からも様々な反応をひき起こした。インターネット上では、ユーロビジョンでの得点について主に2つの意見が挙がった。
1つは、トルコからの10点は歌が良かったからというもの。あるホームページ上では次のような意見が載せられた:「ユーロビジョンで初めてアルメニア代表を務めた若いミュージシャン、アンドレの歌った『私と一緒にいてくれ』は、ポップ音楽のスタイルでありながら我々の文化を反映する民族音楽的モチーフも含んでいた。トルコの人々も民族音楽を好むため彼らがこれを身近に感じ、いかなる他の意図も含意せずに10点を付けた可能性がある」。
もう1つの意見は、トルコがアルメニアに「ウインク」のジェスチャーをしたというもの。この見方をとった意見は次の通り:「ユーロビジョンで音楽そのものがいつも二の次にされていることを念頭に置くとすれば、トルコのアルメニアへの投票は単に政治姿勢としてだけでなく、国民レベルで良い意図を持つ「ウインク」のジェスチャーを示したと考えることができる。興味深い歩みである」。
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( 翻訳者:堀ノ内夏子 )
( 記事ID:2490 )