■インジルリクにアメリカの90基の核兵器があるとレイポルド博士は言う。「これらの核兵器がバルケスィルからアダナに運ばれる際、全く誰にも通告がなかった」

〈デリヤ・サザク：環境問題はますます人に脅威を及ぼすものになってきました。環境問題はすでにグローバルな安全保障問題として挙げられます。グリーンピースは無報酬で活動を行い続けていますね。あなた方の環境保護活動は現在どのような局面にありますか？〉

ゲルト・レイポルド：持続可能な環境は完全に安全保障問題です。地球温暖化のような問題にも解決の手段はあるのです。例えば、エネルギーをより効率的に使うことなど。もしくは、自然の中に無限に存在する再生可能なエネルギー源を利用することです。核燃料によるエネルギー生産の増加を図る代わりに、再生可能なエネルギー、例えば風力、ソーラーパワーなどの使用を考えていくことは我々がさらされる危険を避けることにもつながります。エネルギー資源を秩序正しく使用する方法を模索することを無視してはなりません。

■環境難民が増える見込み
水の供給は乾燥地帯では大きな問題です。清潔な水への需要はますます多くの環境難民を生み出すでしょう。人々は自分達が暮らした土地を放棄することをせまられています。グリーンピースは環境問題を世界に知らしめる組織となりました。ここ十年でグリーンピースは大きく発展しました。そして、北米だけでなく世界規模で活動を展開しています。
グリーンピースは単にデモ活動を行なうだけでなく、国家間の重要な取り決めに際しても交渉面で重要な一歩を踏み出しています。たとえば、京都会議でも影響力を発揮しました。同時に、解決手段の策定にも関わっています。例えば、地球温暖化に対しての解決法として再利用可能な資源の使用を支持しています。中国が再生可能資源の使用を受け容れた際には、グリーンピースが大きい役割を担いました。

■〈インジルリクの基地でアメリカの90基の核兵器があることに注目しましたね。グリーンピースはこのことに関して何か特別な情報を持っていますか？〉

通常の方法で知識を得る権利を全ての国の人々が有するように、アメリカの核兵器が世界のどこにあるかという軍事情報を知る権利をトルコの人々も持っています。アメリカの核兵器を国土に保有する六つのNATOの国があり、そのなかの一つがトルコです。2005年に公表されたクリステンセン・レポート(www. nukestrat. com/ pubs/ EuroBoms. pdf)では、核兵器がどこからどこへ運ばれたかに関する詳細な情報があります。

■核兵器はアメリカが引き取るべき
〈グリーンピースはインジルリクの事に関してなにか活動を計画していますか？〉

このことに関して最初に行った活動は情報提示でした。というのも、インジルリクにいる人々がまず核兵器の存在を知る必要があったからです。インジルリク基地の真正面に「平和大使館」を作りました。核兵器がバルケスィルからアダナに運ばれた際に全く誰にも知らせませんでした。このことに関してインジルリクで暮らす人々と相談がなされることもありませんでしたからから。トルコはEU加盟候補国であり、民主主義については中東に対する良い見本です。もし、インジルリク基地の核兵器がアメリカの中東地域での覇権を握る手段になり、これが脅威になるのであれば、この情報が完全にこの地域の社会に共有されなければなりません。兵器がアメリカに返還されて解体されることを我々は望みます。これが我々の政府へ要求することです。

■核兵器があることでトルコは立場を弱めている
〈イランが所有する原子力発電所ではじまったウラン増加計画は中東にとって大きな脅威をもたらすものでしょうか？アメリカはこれを理由にイランに軍事介入の機会を探っている。イスラエルも核兵器を所有していることを我々は忘れないでおきたいですね〉

核兵器から解放された世界像はグリーンピースの望むものです。これがトルコから中東へ広まり実現できれば良いと思います。トルコ政府はイランの問題に遺憾を感じることを述べる一方で、トルコの国土にアメリカの核兵器があることにより自身の立場を弱くしている。これらの兵器がインジルリク基地にある限りトルコは他の国々へ核兵器撤廃を望むことはできません。
インジルリクにある核兵器はNATOの所有する兵器です。冷戦はとうの昔に終わっています。イランの原子力発電所はアメリカに軍事行動のチャンスを与えてしまうものです。インジルリク基地の核兵器も今後予期される危機的シナリオの一部分を占めたりしないようにすべきと考えます。2006年11月にはNATOの戦略が再び議論されることになっています。
リガ・サミットはトルコや他の核兵器が置かれているNATOの国々から核兵器が撤廃される良い機会です。90基の核兵器がトルコ国土からなくなれば、中東における核撤廃につながります。


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（ 翻訳者:堀ノ内 夏子 ）
（ 記事ID:2563 )