イランにおける女性関連法規は公正そのもの シャルグ紙
2006年06月15日付 Sharq 紙

2006年6月15日付シャルグ紙5面

 「我々はイランのフェミニスト運動に賛同しない。今日の世界において、このような運動がいかなる根源を有し、機能を果たし、結果をもたらしているのかを検討するならば、なぜ我々がフェミニスト運動に反対しているのかが明らかになるだろう」。

 これは、エスファハーンの宗教指導者であり、同市選出の第7議会議員、さらには現在同市の暫定金曜礼拝導師も兼任している、モハンマド・タギー・ラフバルの発言である。モハンマド・タギー・ラフバルのこの発言は、先日テヘラン市のハフテ・ティール広場で開かれた女性集会〔*1〕に対する反応として示されたものだ。同師はその一方で、女性らが抗議の声を上げている女性関連の問題の一部については、イスラーム法の基礎原理に抵触するものでなければ、改正することが可能だ、とも述べた。

 〔このような柔軟な姿勢〕にもかかわらず、ラフバルはフェミニスト運動や女性差別撤廃条約批准〔*2〕へ向けた動きに対しては異を唱え、次のように述べた。「第6議会では、女性差別撤廃国際条約へのイランの参加を実現すべく、さまざまな試みが行われたが、イスラーム法学者らの反対によって、この動きは阻止された」。

 さらに、次のように付け加えた。「最近になって〔再び〕、条約ヘの参加に向けた動きがひそかに大きくなってきているようだ。例えば、ホグーグダーニー女史は、このような趣旨のことを提起している。これに対して女性・家族センター所長のタビーブザーデ・ヌーリー女史が、『私の目が黒い限り、イランがこの条約に参加するような事態は阻止する』旨、明言したほどだ」。

 その上で、ラフバルは次のように述べた。「我々も〔女性差別撤廃条約への参加には〕反対である。なぜなら次に見ていくように、今まで我々は西洋の法体制に何ら優れた点を認めてはいないからである」。さらに続けて「我々は西洋の法体制を採用する必要はない。この条約に参加することは、イスラームの法規定に欠点があることを認めることを意味する」と付け加えた。その上で同師は「イスラーム法はすべての事柄、特に女性の権利を神の公正に従って考慮しており、目下我々は何の不足も感じていない」。

 ラフバル議員は発言の別の箇所で、西洋の女性像を描写して、「我々は西洋の女性によい印象をもっていない。その一方で、西洋世界、特にアメリカでは、女性に対するもっとも過酷な虐待・蔑視が行われている」と語り、さらに「統計・数値がこの問題をよく示している。このことは証明済みだ」と続けた。その上で同師は「西洋世界では、女性は商売の道具、肉欲の対象となっている。そのようにしておきながら、後になって彼らは『我々は女性の人権を守っている』となどと言っているのだ」と語った〔*3〕。

 国会の原理主義派に属するラフバル議員は、女性に関する西洋の法体制を厳しく批判し、次のように述べた。「女性に関して西洋が行っていることと言っていることは、互いに矛盾している。それゆえ、西洋人によって作られた女性に関する条約など、我々が受け入れられるようなものではない」。こう述べた上で、同師は「こうした問題のすべては、イスラームの根本に反している」とした。

 ラフバル師は、イランの法体制における一部の女性関連法規、特に養育権や遺産相続、血の賠償金(ディーヤ)〔*4〕といった問題に対して見直しがなされる可能性について、次のように述べた。「イスラーム法上、合法(ハラール)であるとか違法(ハラーム)であるとかの問題に属しているのでなければ、すなわちイスラームにとって疑問の余地なき根本的原理に属するものでなければ、改定は可能だ」。

 同師は、女性の養育権問題〔*5〕は特にこのようなケースに属する問題だとし、次のように述べた。「もちろん、常に女性が子供を養育することが適切であるとは限らないが、麻薬中毒者であるなどの理由から男性に適性がない場合、子供の養育権を女性に委譲するよう、法を改正することは可能だ。もちろんその逆も真である」。

 その一方で、ラフバル師は「遺産相続のような問題には、まったく見直しの余地はない。なぜならコーランやハディースで、それが述べられているからである」と述べた上で、「もちろん、なぜ女性は遺産を男性の半分しかもらえないのか、という問題についてきちんと説明しなくてはいけない」とした。

 エスファハーン選出の同議員は、この問題の根拠として、男性の家計に対する責任について言及し、「たとえイスラームが女性の遺産相続を男性の半分であるとしているとしても、他方で生活費を賄うことは完全に男性の責任にまかされている」と述べ、「つまり、一種の公正が確立されているのだ」とした〔*6〕。その上でエスファハーン市の暫定金曜礼拝導師は、イスラームの絶対的な法規定と矛盾しない限り、女性関連法規の見直しは可能であると結論付けた。

 同師は発言の別の箇所で、フェミニストを批判して、次のように述べた。「西洋の女性を手本にすることや、すべてのものを画一的にとらえることは、我々にふさわしくない。なぜなら、時に西洋諸国では女性に自由を与えることが、権利を与えることよりも重要視されているからである」。そして「もしもフェミニズムを分析し、それが西洋においていかなる結果を生み出したかを見るならば、我々がそれに反対する理由が歴然とするだろう」とした。

***註***

*註1:6月12日に民主化を求めるジャーナリストや政治活動家らが行ったデモ集会を指す。同デモ集会は内務省の許可なく行われたため、治安当局の取り締まりに合い、女性を中心に約70名が拘束された。詳しくは、http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2006616_2733.htmlを参照。

* 註2:「改革派」議員が大勢を占めていた第6議会(2000〜2004年)で、女性差別撤廃条約の批准案が可決されたが、その後国会で可決された法案をイスラーム法や憲法との整合性の観点からチェックする権限を有する護憲評議会によって、同批准案は2003年8月に却下された。

* 註3:イランでは、女性にヘジャーブの着用を要求し、良妻賢母たることを求める際、この種の「西洋の女性は虐待されている」との議論が頻繁に用いられる。議論は概ね以下のように展開される。

《西洋資本主義世界では、女性を含め、全てが商品化される。商品化された女性は、男性の好奇のまなざしの対象となる。また、西洋の女性は、その本質的な肉体的脆弱性にもかかわらず、重労働を強いられ、搾取の対象となっている。それに対して、イスラーム共和国体制では、女性はヘジャーブによって男性の性的視線から守られ、また相応の場所(家庭)が与えられることで、虐待的な重労働からも解放されている。》

 詳しくは、ズィーバー・ミール=ホセイニー著(山岸智子監訳)『イスラームとジェンダー』(明石書店、2004年)、特にp.146.をご覧下さい。

* 註4:「ディーヤ」とは、身体的危害を加えた加害者に対して、被害者あるいはその親族が賠償金を求める制度。女性の賠償金は男性が殺害された場合の半額であるとされる。そのような格差を正当化する論理として、男性が殺害された場合の経済的損害(扶養者の養育費など)を補填する必要性が挙げられる。このことについては、ズィーバー・ミール=ホセイニー前掲書、特にp.396.辺りを参照。なお、かつて、ムスリム以外の者が殺害された場合も、ムスリムの半額であったが、2003年12月にムスリムと非ムスリムの「ディーヤ」の同額化が決定された。

* 註5:中東イスラーム世界では、子供は基本的に父親に属するとみなされており、それゆえ養育権も父親のもとにある。

* 註6:男女間の遺産相続の格差について、著名な法学者アッラーメ・タバータバーイーは、女性は夫から扶養費の支払いを受ける権利を持っているので、女性の相続額が男性の半額であるとしても、決して女性差別であるとは言えない、という論理を展開している。詳しくはズィーバー・ミール=ホセイニー前掲書、特にpp.335-336.を参照。

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( 翻訳者:村上遥 )
( 記事ID:2754 )