レバノン停戦決議案、修正へ向けて各国が協議(アル・ナハール紙)
2006年08月11日付 Al-Nahar 紙
■ クライティム地区付近の放送施設に爆撃
■ イスラエルからハリーリー議員への「不満のメッセージ」
■ レバノン、大国による合意の受諾か、決議なき状態か
■ マルジャアユーン陥落 国軍駐屯地制圧 ヒズブッラー、ヒヤームで抗戦
2006年08月11日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
レバノンに対する激烈な戦争の闇のなかで、30日ぶりに停戦に向けて「かすかな光」が瞬いた。しかし戦場においては新たな展開があり、イスラエル軍は大規模地上攻撃は「まだ始まってはいない」と発表しながら、レバノン南部の東部地域に侵攻してマルジャアユーン市を制圧した。
本紙の得た情報によれば、アメリカとフランスによる国連安保理決議案の草案をめぐり昨日、ベイルート、ニューヨーク、パリ、エルサレムの間で何度も協議が重ねられた。草案では、南部に駐留する国際部隊の役割について「文言が緩和される」予定であるが、武力行使を認める国連憲章第7条の枠組みの中に位置づけるべきだとの強い主張が今もある。 国際部隊に参加する諸国としては、任務の遂行を妨害する者に対する自衛の権利なくして部隊を派遣することには合意できないということである。
また草案にはレバノン南部における武力を監視すること、レバノン国軍以外の武装組織の存在を認めないこと、安保理決議第1559号とターイフ合意の全面履行、1949年の休戦合意の再生が盛り込まれている。またシャバア農場地帯の問題については国連のコフィ・アナン事務総長にフォローアップを委任すること、イスラエル軍兵士2人をただちに解放すべきこと、レバノン人捕虜の現状について速やかに検討すべきことが述べられている。
(中略)
■ クライティム地区の爆撃
アラブ諸国レベルおよび国際社会レベルで進行中の協議を見守っている政界の情報筋によれば、いかなる軍事目標もなく、クライティム地区[※訳注:西ベイルートのハリーリー邸のある地区]にほど近いラアス・ベイルートに位置するレバノン放送の旧放送施設に対する[イスラエル軍の]爆撃は、イスラエルからハリーリー議員への不満を表明するメッセージのようなものだという。ハリーリー議員はイスラエルの侵略に対抗するため、特にこの二日間、フランス、ロシア、サウジアラビア王国の各国政府に対して働きかけてきた。
これに対してフランスのジャック・シラク大統領は、国連安保理決議案の修正を求めるとともに、レバノンの提案を考慮する方向を推し進める明確な立場をとるに到った。
また同筋によればイスラエルは、アメリカがこれまでの姿勢の見直しを始め、世界各国の大半がイスラエルの立場への支援継続は論理性も正当性もなく事態を複雑化させるだけだと考え始め、ある意味ではイランのマヌーチェフル・モッタキー外相が先日のレバノン訪問に際して明らかにしたイラン政府の反対姿勢に近い姿勢をとり始めたことに対しても、不満を抱いているようだという。
また同筋は、注目すべき展開として「事態打開の始まり」について語り、「ベイルートでの先日のアラブ外相会議においてアラブ諸国の立場が一致したことや、アラブ諸国の代表団がニューヨークへ行ったことが、次第にレバノンの立場が支持を集め、イスラエルのやり過ぎに歯止めをかけるための助けとなった」と述べた。
そして、「ここのところ悲観的な見通しが支配的であったにもかかわらず、事態は打開の方向に向かい始めている。この打開の状況がこれからの数時間の間に安保理決議案の修正につながり、事態が根本的な解決に向かうよう望む」と述べた。
(中略)
■ マルジャアユーン
UPI通信によれば昨日、イスラエル軍はリタニ川を見下ろす位置にある町3ヶ所を制圧し、ヒヤームの町を戦車で包囲した。イスラエルは郡の中心都市であるマルジャアユーンを制圧し、部隊が市内のレバノン軍兵舎の中に入り、レバノン軍兵士350~400人と国内治安部隊隊員1人を軟禁状態においた。
イスラエル軍のマルジャアユーン制圧に先立つ戦闘の間、イスラエル軍車輌がシリア民族社会党の党員からなるグループの攻撃を受けた。同グループはまもなく退却した。
ヒヤーム周辺での戦闘においては、ヒズブッラーの戦闘員の攻撃によってイスラエル軍戦車2台が破壊された。
占領された町や村では3日間の外出禁止令が発せられたと伝えられている。
(後略)
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( 翻訳者:香取千晴 )
( 記事ID:3270 )