女優シベル・ケキッリ・インタビュー~1980年クーデターを扱った映画に主演(Radikal紙)
2006年09月21日付 Radikal 紙
今年のゴールデン・オレンジ映画祭の国内コンペティションは、おそらく長年に渡って忘れられないものになるだろう。デッドヒートが予想されると本紙では既に伝えたが、その通りになっている。監督たちは、まるで申し合わせたかのように、彼ら自身最高の作品を我々に披露した。見た者すべてに衝撃を与えたゼキ・デミルクブズの映画『カデル(運命)』に続き、オメル・ウウルの『エヴェ・ドヌシュ(帰還)』とデルヴィーシュ・ザイムの『ジェンネティ・ベクレルケン(天国を待つとき)』が、初上映され、この2作品は『カデル』の有力なライバルになると見られる。
『エヴェ・ドヌシュ』は、9月12日(訳注:1980年クーデターの起きた日)をダイレクトに取り上げた映画だ。トルコ映画は、9月12日を取り上げることに関しては、いつもその門の入り口で留まっていた。しかし、ウウルは、この門の隙間を開けることに成功している。『エヴェ・ドヌシュ』を、映画を超えて、ドキュメンタリーと見なすこともできるだろう。上映会後の、「この映画をケナン・エヴレン(※)が見たら、どう考えるだろうか。」というある観客の言葉は、非常に意味深長であった。迫真の演技を見せたジヴァン・ジャノヴァが人々の話題に上っていた。ジャノヴァは、助演男優賞受賞に極めて近いと見られている。
映画の主役は、メフメト・アリ・アラボラと、『愛より強く』で存在感を示したシベル・ケキッリが演じた。驚くべきことに、しかし事実なのだが、ケキッリは台本を読むまで、9月12日にトルコで起きたことを知らなかった。このため、台本から、そして昨日初めて鑑賞した映画から深く影響を受けた様子で、長い時間、大きな瞳で見入っていた。上映会を出たところを、ケキッリにインタビューした。
―台本を読んで9月12日を知り、どんなことを考えましたか?映画はあなたにとても影響を与えたように見えました。
トルコでこんなことが起きたなんて知りませんでした。シナリオを読み、ためらいがちに、9月12日とは何だったのだろうと自問しました。たくさんのトルコの映画を見たことがあるわけではありません。でも、今までにこの時のことについて語った映画を見たことはありません。こんなことが起きてしまったのです。トルコ人は、過去を振り返り、ためらったり恐れたりせずに9月12日のことを話すべきです。どんな国の歴史にもこういった悲惨な状況はありました。現代の歴史について、批判的な見方が出されるべきです。そうでなければ、前に進むことはできません。
―撮影の間、大きな感情的な疲れを経験したと発言していますね。どの場面で影響を受けたのですか?
2つのシーンでとても具合が悪くなりました。最初は、ムスタファ(訳注:役名)が警察に連れて行かれ私が追いかける場面、もう一つは、大家が私たちを家から追い出す場面です。これは映画ですが、私は撮影の間、とても具合が悪くなったのです。なぜなら、彼らは夫を連行し、家庭を破壊したのですから。こういった出来事は本当に起きたことです。彼らがどんな状態にしてしまったのかを考えてみてください。こんなことがもう誰にも起きませんように。
―政治的なテーマの映画に出演することに興味があるのですか。というのも、トルコから様々な出演依頼があったにも関わらず、あなたがこの映画に出演したからです。
私のもとに来た台本の数々は、テーマを説明していませんでした。この映画は、重要な出来事について語っています。苦悩をもった映画です。だから、決めたのです。
―トルコ人の監督たちと仕事を続けていこうと思いますか?
はい、監督から依頼があれば、一緒に働きたいと思っています。
―主演女優賞候補に挙げられています。賞についてどう考えていますか?受賞を期待していますか?
まず、こう言いたいと思います。よし、賞を取ろう、と思って、この映画の出演を決め、演技したわけではありません。この映画は、人々に向け、私に向け、メッセージを送っています。『愛より強く』もそうでした。私はそのメッセージを受け取りました。9月12日とは何だったのかということを知りました。トルコがどんな経過を辿ったのか、人々がその間、どれだけ悲惨な出来事を経験したのかを知りました。皆さんも、私のように映画のメッセージを理解して欲しいと思います。私にとっては、多分そのことが一番大きな賞だと思います。
(※)1980年のクーデター時の参謀総長。クーデター後、大統領に就任した。
『エヴェ・ドヌシュ』公式サイト(トルコ語):http://www.evedonusfilm.com/
予告映像:http://www.evedonusfilm.com/teaser/evedonus1.wmv
2006-11-3からトルコ国内で上映。
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( 翻訳者:高田 利彦 )
( 記事ID:3555 )