ヒズブッラーが「勝利集会」開催、ナスルッラー書記長が演説(アル・ナハール紙)
2006年09月23日付 Al-Nahar 紙

■ ナスルッラー書記長、再び公の前に「現政権の下では武装解除はあり得ない」
■ セニョーラ首相、ナスルッラー書記長の非難にもかかわらず「対話の強調は未来への展望をひらくもの」

2006年09月23日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は昨日、先月7月12日に戦争が勃発して以来初めて公の前に姿を現した。膨大な数の群衆を前にナスルッラー書記長は国内や中東地域および国際問題をめぐる立場を表明し、それらは数々の反響を呼んだ。

 3・14勢力のある有力な指導者はナスルッラー書記長の国内問題に関する立場を「綱引きを目的とするものであって、破綻をもたらそうとするものではない」と評した。フアード・アル=セニョーラ首相周辺はヒズブッラー書記長が対話的な「手法」を呼びかけたことを歓迎したが、演説の内容の詳細については見解を示さなかった。

 アミーン・アル=ジュマイエル元大統領は、ナスルッラー演説は「武装問題を政権交代に利用しようとするものである」との見方を示した。一方ある観測筋は、ナスルッラー書記長の国内問題に関する意向は、ヒズブッラー系のメディアや政治家の集会前の発言に鑑みれば、状況を悪化させるようなものではなかったと見ている。

 アラブ諸国および国際社会レベルの問題に関しては、ナスルッラー書記長の発言は強硬なものであった。ナスルッラー書記長は抵抗運動[※ヒズブッラー軍事部門]が軍事作戦停止の後に再軍備を行い7月12日以前より強力になったと述べ、シリアとの国境地帯が依然として放置されていることに言及して、各方面の懸念をかきたてている。

 またイスラエルを抑える者がいなければ再びヒズブッラーが南部において活動する可能性もあるとの発言は、国軍および国連レバノン暫定軍(UNIFIL)にとっては「懸念材料」となるものであった。

 観測筋はナスルッラー書記長が「挙国一致政府」樹立の立場を堅持していることで、エミール・ラッフード大統領の立場をめぐって議論が起きる可能性があると見ている。ラッフード大統領がいるかぎり政権の交代は不可能だからである。

 ナスルッラー書記長が公の前に姿を現して立場を表明したことに注目が集まる一方で、アマル運動とアフマド・ファトファト内相代行のあいだで対立が起きている。ファトファト内相代行が公安総局のワフィーク・ジッズィーニー長官に対して20日間の業務停止を命ずる措置をとったことに端を発するものである。アマル側はファトファト内相代行にはこのような措置をとる権限があるのかどうか疑義を呈しているが、これに対してセニョーラ首相は、辞任したハサン・アル=サバア内相が国外渡航中であることに鑑みてファトファト内相代行は法的権限を行使していると回答した。この問題の悪影響を抑えるために各方面のあいだで連絡協議が行われたという。

■ 集会

 ヒズブッラーのいわゆる「神の勝利の集会」においては、ナスルッラー書記長一人だけが演説を行なった。各国の通信社によれば集会の参加者数は数十万人とのことであるが、主催者側は「レバノンでは前例のない大規模な参加者数」だとして、「国内治安部隊の報告を含む正確な情報によれば、参加者数は150万人を超えていた」と語った。

 ヒズブッラーがこれまで集会を開催するのが通例になっていた場所が破壊されているため、今回の集会はハダス地区に隣接するベイルート南部郊外の東端で行なわれた。集会には「国民自由潮流」や「マラダ潮流」、シリア民族社会党、サリーム・アル=フッス元首相、ウマル・カラーミー元首相、スライマーン・フランジーヤ元内相など反政府の政治勢力が参加したほか、大統領および国会議長は代理人を派遣したが、政府および首相の代表は参加しなかった。またシリアから多数の参加者がやって来たと伝えられている。

■ セニョーラ首相

 ナスルッラー演説への最初のコメントとしてセニョーラ首相筋は、ヒズブッラー書記長が対話の問題に集中して言及したことは「よいことであり建設的であり、未来への展望をひらくものだ」との見解を表明した。

 セニョーラ首相筋のコメントは、ナスルッラー書記長が演説の中で「平和的で民主的なメカニズムの内部において競争と対話を行うこと」を呼びかけ、「それは正当なことであり、許されることである」と述べたことを受けたもの。ただしナスルッラー書記長はセニョーラ首相を批判して「涙は誰も救うことはできない」と述べ、戦争中にベイルートで開かれたアラブ外相会議においてセニョーラ首相が涙を流したことに暗に言及した。また「現在の政府はレバノンを守ることも、再建することも、統合することもできない」とも述べた。

■ 国内情勢

 またナスルッラー書記長は3・14勢力に対しても批判の矛先を向け、同勢力が「レバノンで起こった戦争はイランが核問題のために利用しようとした戦争であり、[※ハリーリー元首相暗殺に関する]国際法廷を回避するための戦争である」と述べたことについて「許しがたい発言だ」と述べた。また「民主主義会合」のワリード・ジュンブラート代表に対しては名前を挙げることなく「数日前に2・14勢力のとある有力な指導者が、抵抗運動の支持者たちは何も考えていないと発言した」と述べ、「彼は謝罪すべきである。我々は全体主義政党ではないし、全体主義的なグループではない。私の父親は殿様ではなかったし、私の祖父も殿様ではなかった。私の息子も殿様になることはない」と述べた。

 またナスルッラー書記長は「イスラエルが勝利すればレバノンは内戦に陥るところであったが、それを救ったのは抵抗運動である」との見方を示し、「強力で公正で清潔な国家の建設」を呼びかけた。また「現在の国家の下で、現在の当局の下で、現在の体制の下で、現在の状況の下で抵抗運動の武装解除について取り沙汰することは、レバノンをイスラエルの前に無力なまま曝け出しつづけることを意味する」と述べ、あらためて「挙国一致政府」の樹立を要請しつつ、「誰かを打倒したり、排除したり、追放したりしようと言っているのではない」と述べた。

(後略)



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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:3567 )