風刺画の次はオペラ? モーツァルトの歌劇イドメネオ上演をめぐる議論(Milliyet紙)
2006年09月29日付 Milliyet 紙

ドイツのウォルフガング・ショイブレ内相は、イスラーム・サミット後に行われた記者会見で、ドイツオペラがイスラーム急進派の反発を受ける可能性を懸念してオペラ作品「イドメネオ」を公演中止とした決定は間違っていると述べた。ショイブレ内相はイドメネオの上演を、自らもそしてイスラーム・サミット参加者達も望んでいることを明らかにし、上演されたあかつきにはサミット参加者と一緒にオペラ鑑賞を行いたいと述べた。

一方でドイツオペラ(歌劇場)当局者は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を筆頭にドイツの政治家たちが厳しく批判したことを受けて、「イドメネオ」が11月のプログラムだけから除かれたことを明らかにした。この作品がイスラーム急進派の反発を懸念して公演中止になったことについては、ドイツの政治家だけでなく、ドイツ国内のトルコ人社会の反発も買った。
ドイツ・トルコ人コミュニティー協会の代表、ケナン・コラト氏は、ドイツオペラの決定を批判した。コラト氏は、「今回の場合、政治的な姿勢の表明ではなく、芸術が表現されているのだ。この決定は間違いだ。」と述べた。

■シェン教授:ムスリムに害を及ぼすだけ

ドイツにあるトルコ研究センター財団の理事長、ファルク・シェン教授も、「イドメネオ」の公演中止はムスリムに害を及ぼすだけだと述べ、次のように続けた。「昨今、再び、ムスリムたちは不寛容であると人々の目に映っている。決定は間違いだ。今は21世紀なのだ。芸術は自由であるべきだ。」
シェン教授は、イスラーム評議会のアリ・クズルカヤ会長がドイツオペラの決定を支持したことについても反感を示した。クズルカヤ会長は一昨日、「問題になっているのは芸術の自由ではなく、他者への敬意である。自由というものは勝手気ままに他者を侮辱することではない。」と述べた。

■トルコでの初公演も危ぶまれている!

ドイツオペラがムスリムの反発を懸念して、預言者ムハンマドの生首を見せるシーンがあるモーツァルトのオペラ「イドメネオ」の公演断念から始まった議論は、イズミル国立オペラ・バレエ(İZDOB)でも問題になっている。
イズミル国立オペラ・バレエは、「イドメネオ」のトルコ初公演について再検討する予定だ。トルコでの初公演が予定されているこのオペラが、今シーズン(2006-07年)のプログラムに残されるか否かは、イズミル国立オペラ・バレエの意思決定権限をもつ委員会が検討した結果、決められる予定だ。イズミル国立オペラ・バレエが再検討を決めたことは、作品の内容が原因なのではなく、世論が作品について間違った情報を与えられたためという。

■「オリジナル作品では存在しないシーン」

1781年モーツァルト作曲で、初めて今年ミュンヘンで上演されるこのオペラには、イスラーム急進派の攻撃を招くような要素はないという。ファルク・イェネル著の「オペラ100選」によれば、「クレタ王のイドメネオが麻袋の中から、『これは預言者キリストのもの、そしてこれは預言者ムハンマドの首だ。』と言いながら、血にまみれた生首を出す」シーンは、オリジナル作品にはない。
オペラ専門家は、この作品では紀元前2~3世紀、トロイ戦争後のクレタ島を舞台としており、当時はまだ多神教が一般的であった。そのため預言者キリストも預言者ムハンマドもまだ生まれていない時代であり、この作品に預言者の生首を出すといったシーンがあること自体不可能なことだと明らかにした。ドイツで議論を巻き起こしているシーンは、完全にドイツオペラの監督の解釈である可能性が高いという。


Tweet
シェア


現地の新聞はこちらから

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:近岡由紀 )
( 記事ID:3600 )