レバノン南部に国軍が展開、30年ぶりに国軍の管轄下に(アル・ナハール紙)
2006年08月18日付 Al-Nahar 紙
■ ジュンブラート議員、ナスルッラー師にターイフについての問いを浴びせる
■ アサド大統領に対するハリーリー議員の炎の返答
■ レバノン南部、30年来初めて国軍の管轄下に
■ 展開は30カ村を含み、近日中にブルーラインまで完了
2006年08月18日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
昨日、リタニ川以南の広い地域にレバノン国軍が展開し、国連決議第1701号履行のためのプロセスは戦争行為の停止と、イスラエル軍が対レバノン戦争で占領したレバノン南部地域の大部分からの撤退の後、基本的な第3の段階に入った。
このレバノン国軍の南部展開は軍事的および政治的な面において歴史的な意味合いを帯びたものとなった。というのも、南部が30年来初めて国軍の管轄下へと回復されたからである。来る数時間のうちに国軍の展開は「ブルーライン」に及び、南部に対して国家の完全な支配が確立されたことの原則的な証しとなるであろう。それは1989年のターイフ合意以来、また2000年のシャバア農場地帯を除く南部からのイスラエル軍撤退と解放以来、先例のない進展である。
そうした状況のもとでは、イスラエルの暴虐な戦争によって破壊され、その影響で疲弊した南部において、国軍が人民の喜びと歓迎をもって迎え入れられたということは、驚くことではない。それは国軍部隊に対して[歓迎の証しとして]米粒やバラの花がまかれる場面と数十人の犠牲者たちへの葬列の場面とが入り混じる印象的な光景であった。南部の町や村では今も、犠牲者の遺体を瓦礫の下から回収する作業がつづいている。
政治的な次元について言えば、国軍がイスラエル国境の数カ村を含むリタニ川以南の30カ村以上に昨日展開したとは言うものの、拡大国際部隊への参加が予定されている国々の姿勢につきまとう曖昧さに対する不安はなおも続いている。この部隊に加わることへの躊躇の様相がここ数時間で浮上し、それによって、国連決議第1701号にうたわれている国軍の任務支援のための国際部隊兵員約1万5000人の展開という実務上の第4段階の行方に対する不安が高まっている。
(中略)
■ 三方向からの反撃
レバノン国軍が南部に展開する一方で、政治の領域ではシリアのバッシャール・アル=アサド大統領の演説に対する辛辣な反撃が相次ぐ「炎の」一日が展開された。反撃は国会内会派「ムスタクバル」ブロックのサアド・アル=ハリーリー代表の演説、「民主主義会合」代表のワリード・ジュンブラート議員の記者会見、3・14勢力の幹部が水曜夜に開いた非公開会合を受けて木曜日に発表した声明というかたちで相次いで行われた。
ハリーリー議員はアサド大統領が「アラブ人からの恩を忘れ、レバノンの争乱を煽ろうとしている」とこれまでにない激越な非難を展開し、シリア大統領が「レバノン人がイスラエルの占領に立ち向かうのに対して投機を目論むパートナーとして関わろうとしている。その共同事業をゴラン高原の占領地で実施することが出来ないものなのか」と述べ、「ムハージリーン宮殿[※シリアの大統領宮殿]はムタージリーン[※商売人]宮殿と化している」と述べた。また「レバノンの同胞に対する第一の支えであるシリアの人民」に語りかけ、「シリアの体制はカナやガザやバグダードの子供たちの血を取り引きの材料にして、レバノンとパレスチナとイラクに争乱をもたらそうとしている」と主張した。
同様にジュンブラート議員はシリア大統領を「大犯罪人」と呼び、「アメリカとの交渉の条件を有利にするためにレバノンを瓦礫と化し南部住民を犠牲にするような抵抗運動しかあり得ないのだろうか?」と疑問を投げかけた。また、「[アサド大統領は]レバノンの国内に政変を起こして政府を打倒し、国際法廷による裁きを回避したいと思っている」と述べた。
しかしジュンブラート議員は記者会見の大部分をヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長に対して「運命に関わる本質的な」一連の問いを発することに費やした。ジュンブラート議員はナスルッラー書記長のターイフ合意および[1949年の]休戦協定に対する立場について数多くの問いを「雨のように浴びせかけ」、戦争中にナスルッラー書記長がテレビ演説で表明した見解に反論しつつ、ナスルッラー書記長が国家の存在に「疑義を呈している」と指摘した。そして「もしもターイフ合意および49年の休戦協定を確定して抵抗運動を国軍に編入するという最終的な形で合意ができなければ、我々の行く先は全くの未知である」と述べた。
また3・14勢力は、「アサド大統領が常にレバノンの殉教者の血を犠牲にして自分の体制の空想上の勝利を築き上げようとしていること」に遺憾の意を表明し、「あたかもレバノン国民の犠牲によって、アサド大統領の利益や中東地域における同盟関係に奉仕するためだけに我々が生まれたかのように振舞っている」と非難した。
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( 翻訳者:田中裕子 )
( 記事ID:3441 )