ディンク暗殺犯、軍警察署で英雄扱い -アタテュルクの言葉をバックに写真撮影
2007年02月02日付 Radikal 紙
フラント・ディンク殺害事件の容疑者であるサマストがアタテュルクの言葉をバックにして撮影された写真は、サムスンのバスターミナル内にある軍警察(ジャンダルマ)署において楽しそうに撮影されたものだった。
全ては、1月21日の日曜日、ドーアン通信社によって各報道機関に配布された一枚の写真から始まった。写真はドーアン通信社の記者イスマイル・テミズが撮影し、その写真の下にはただ次のように書かれてあった。「オギュン・サマスト、サムスンにおいて逮捕された」。この簡単な但し書きで報道機関にばら撒かれた写真は、フラント・ディンクを殺害した人物の精神状態を証明するものであることが、昨日明らかとなった。
オギュン・サマストがフラント・ディンク殺害の容疑者であることは父親の告発によって明らかになった。彼は殺害したその次の日、1月20日の土曜日午後11時頃、サムスンのバスターミナルにおいて逮捕された。逮捕は軍警察と警察が同時に行なった。全てのメディアでは事件の容疑者の逮捕はニュース速報として伝えられた。同じ時刻、イスタンブルでは県知事であるムアメル・ギュレルは、事件の容疑者が殺害の凶器とともに「殺人事件のシンボル」とまでなった白いベレー帽を所持していたことを明らかにした。その後、漏れ伝わった情報によればオギュン・サマストの持ち物からトルコ国旗がでてきた。
その夜サマストは、逮捕後すぐにサムスン・バスターミナルの軍警察署に連行され、さらに午前2時頃にはサムスン警察署に連行された。サマストは明け方近く、特別機で殺害した現場であるイスタンブルに連れて行かれた。
同じ晩、サマスト逮捕に関するニュースの中で、ドーアン通信社が報道各社に送ったスキャンダルな写真は、多くの人々の注目を集めはしなかった。1月22日付のヴァタン紙において初めて、キャプションなしのこの写真が一日遅れで論争を巻き起こしたのだ。スター紙は1月23日付けの新聞で、「ディンクがトルコ人を侮辱したので殺したんだ」と語るサマストのまるでポスターのような写真を一面に載せ、物議をかもし、「この責任は誰にあるのだ?」と問うた。
アタテュルクの「国土は神聖である。われわれはあきらめてはならない」、という言葉が印刷されているトルコ国旗の下でポーズを取っているサマストの写真は、全トルコに反発を引き起こした。写真がどこで撮影されたものなのかさえ伝えられていなかった。様々な反発に対処するため、公式な会見がすぐ行なわれた。軍警察司令本部は、書面による釈明で、写真が軍警察署で撮影されたものではないと主張し、「いくつかのメディアは、新聞記者であるフラント・ディンク氏が殺害された事件に関連し、サムスンで逮捕されたサマスト容疑者の『ポスター以前の』写真について軍警察司令本部を非難するニュースや記事を報道している。問題の人物はサムスン中央イェシルケント軍警察署で拘束され、様々な手続きが取られていたが、その間どのような形であれ、写真は一枚も取られなかった」と述べた。
これに伴い、疑いは警察に向けられた。イスタンブル県警は、写真がイスタンブルで撮影されたと聞かされた。1月25日には県警スポークスマンであるイスマイル・チャルシュカンが最も簡潔な会見を行なった:
「写真はイスタンブルではなく、サムスンで撮影された」と。
サムスンのバスターミナルにおいてサマストを逮捕した警察と軍警察には、任務遂行をたたえる賞状が与えられることになると述べたサムスン県知事のハサン・バスリ・ギュセルオールは、チャルシュカンのこのような会見の後、行動を開始した。すなわち内務省に対し調査を行なうよう要求したのだ。内務省はこの要求を承諾し、トルコ国旗とアタテュルクの言葉の前でのサマストの写真がどのような形で撮影されたものなのか、どのようにして広まったかを調査するためにサムスンに二名の調査員を派遣した。
調査員が何日もかけ事件の解明に努めていたとき、衝撃的なニュースを昨晩TGRT(トルコ・新聞・ラジオ・テレビインターネットサイト)がトップニュースとして伝えた。憲兵司令本部の会見が真実を伝えていなかったということだった。写真は軍警察署において撮影されたことがわかった。さらにTGRTニュースの見解では、問題は写真に表されている以上のものであることが明らかとされた。
TGRTのニュースによると、逮捕活動に参加した警察も、例の軍警察署においてサマストを英雄のように扱った。軍警察の隊員や将校そして警官は、腕を組みサマストと一緒に記念写真を撮影した。写真撮影の前にサマストの手にトルコ国旗を手渡す警官たちは、目の前の容疑者の髪の毛を整えるのを忘れなかった。軍警察署にいた人たちと一人ずつ写真を撮影したサマストもとても落ち着いていた。写真を撮影した人はサマストの頭とアタテュルクの言葉の部分が重ならないように最大の注意を払った。
約6-7分の間続いた記念写真撮影の間、警察と憲兵の間では、以下のような衝撃的な会話がなされた:
「書いてあること(アタテュルクの言葉)を頭の上にちゃんと一緒に撮れるかい?」
「もうそのようになっているよ」
「国土は神聖だって書いてあるだろう・・」
「髪を整えたらいい。さあこっちから撮ろう・・」
「お前は帽子を取らなかったらよかったのに。お前は帽子を脱いだほうがいいよ」
「今度はこっちから撮ろう。さあ髪を直して」
「お前もカメラで撮ってやろう」
「お願いします」
殺人事件を解決するための治安を担当する権力が、英雄視したサマストをイスタンブルに送検するとき、別れのキスをしたかしなかったかは明らかではない・・・
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( 翻訳者:近岡由紀 )
( 記事ID:10064 )