ナーセル・ザラーフシャーン、釈放される

【ルーズナー】知識人連続殺害事件の弁護士を務め、イラン作家協会の会員でもあるナーセル・ザラーフシャーン博士は、5年間にも及ぶ拘禁状態を耐えた末、木曜日正午エヴィーン刑務所から釈放された。

　ナーセル・ザラーフシャーン氏は、シーリーン・エバーディー氏とともに知識人連続殺害事件の弁護士を務めていた。

【解説】1946年生まれのナーセル・ザラーフシャーン氏はイランの著名な作家・翻訳家兼弁護士。同氏は、1998年11月〜12月に起きたイラン知識人連続殺害事件で殺害された2名の作家の遺族の代理人を務めた。

　同氏は、シーラーズ市での講演で同連続殺害事件の背後には国の諜報機関が関わっていると述べたことから、機密情報を漏らしたとして2000年10月に逮捕された。その後ザラーフシャーン氏の事務所などが捜索を受け、銃器やアルコール飲料が発見されたとされた。その後2002年3月に軍事法廷で国家機密情報漏洩罪で2年、銃器所持罪で3年、合計で5年間の禁固刑を言い渡された。またアルコール飲料所持罪で70回の鞭打ち刑にも処せられている。ザラーフシャーン氏は、銃器およびアルコール飲料所持の容疑を否認している。

　イラン知識人連続殺害事件とは、イランの民主化を求め、積極的に体制の批判を行っていた知識人5名が、1998年に連続して殺害された事件。1950年代初頭にイラン国民党を設立するなど、パフラヴィー時代から一貫して体制に批判的な政治活動を行ってきた民族主義者ダーリユーシュ・フォルーハル氏とその妻パルヴァーネ・エスキャンダリー氏が1998年11月にテヘランの自宅で殺害され、その後連続して雑誌「イーラーネ・ファルダー」誌の編集者マジード・シャリーフ氏、作家のモハンマド・モフターリー氏、モハンマド・ジャアファル・プーヤンデ氏らが遺体で発見された。

　これらの知識人殺害事件を受け、当時のハータミー政権は事件の犯人として情報省職員数名を逮捕、首謀者を同省元次官のサイード・エマーミー氏であると断定した。その後当時の情報相ドッリー＝ナジャフアーバーディー師（現検事総長）は責任を取って辞任、サイード・エマーミー氏は1999年に獄中で自殺したとされる。

　しかし政府批判の急先鋒に立つジャーナリスト、アクバル・ギャンジー氏は同事件の真相の暴露本を出版、1994年のスィールジャーニー氏獄中変死事件など、それ以外にも多くの知識人暗殺事件が1989年から97年までのラフサンジャーニー大統領時代にあったことを明らかにした。そのため、ギャンジー氏は「ベルリン会議」から帰国後の2000年に、当局によって逮捕される。

　同氏は法廷で、同事件の背後にはエマーミー氏が次官を務めていたときの情報相であったアリー・ファッラーヒヤーン師（1992年にドイツで起きたミコノス・レストラン爆破事件でイラン・クルド民主党員暗殺に関与したとして、ドイツより現在国際手配中）がいたとし、さらにそのまた背後にはメスバーフ＝ヤズディー師（アフマディーネジャード現大統領の精神的支柱とされる）が暗殺を教唆するファトワー（教令）を発したとも指摘した。ギャンジー氏はさらに、当時「聖職者特別法廷」の裁判長だったモフセニー＝エジェイー師（現情報相）が1998年8月に起きた左翼政治活動家ピールーズ・ダヴァーニー氏失踪事件に関与したともした。

　この事件に絡み、2000年3月には、元情報省次官で、当時改革系紙「ソブヘ・エムルーズ」の編集長を務めていたサイード・ハッジャーリヤーン氏が銃撃され、瀕死の重症を負う事件も起こっている。ハッジャーリヤーン氏はギャンジー氏の情報源であったともされている。

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（翻訳者:斎藤正道）
（記事ID:10447 )