クルド系イラク人バフマン・ゴバディ監督の、ある音楽家グループの過酷な旅を描いた最近の映画『半月』における批判は、トルコ軍部と警察を利することになった。
この映画は昨日(4月2日)イスタンブル国際映画祭でメディアに公開され、4月10日に一般公開される。内容は、有名なクルド人音楽家であるマモが、フセイン政権崩壊によって35年ぶりに可能となったイラク領内でのコンサートのため、「音楽の申し子達」を集めて旅に出る。しかし彼らは密かに女性ソリストを連れていたため問題を起こす。イラン警察に行く手を阻まれ、進路を変更したメンバーは、イラン・イラク・トルコの国境に辿り着く。そして個々に分かれて進むことになる。その後再会した彼らは道の真中で泣いている運転手を見つける。運転手カコは、マモの息子シャホン、そして途中で一行に加わり手助けをしようとした若い娘との間で以下のような会話をする。
シャホン「ここで何をしている?何故泣いているんだ?」
カコ「我慢できなかったんだ。私は雄鶏とカメラと共に棺桶の中に入っていた。車が出発してしばらくすると、トルコ語で会話をしている声が聞こえて来た。突然、棺桶が開けられ、私に向かって歩いてくる4人のトルコ人警官が見えた。私はトルコ語がわからない。唯一知っているのは「Seni seviyorum(あなたが好きです)」という言葉で、これもどういう意味なのか思い出せない。もう少しで殺されるところだったんだ。彼らは私を蹴ったり、殴ったりした。彼らが何をしたと思う?私のジャケットやカメラは奪われ、気に入っていた髪も切られてしまった。警官の一人が私の雄鶏の首を切り落とした。鳥インフルエンザだからと言っていた。そしてその雄鶏を焼き、私の目の前で食べたんだ。他の警官はマモのサズを奪って壊し、焼いてしまった。」
娘「他の者たちはどこにいたの?」
シャホン「イラク国境へ向かうため、バイクで私達を連れて行く途中、トルコ人兵士たちが私の仲間に暴行した。だから他の仲間が彼をイランに送り届けたんだ。」
映画全体を通してトルコ人兵士や警官は登場することはないのに、終盤になって割り当てられた彼らの役柄は、いささか残酷である。イスタンブル国際映画祭の実行委員長アジゼ・タン氏は、映画にはトルコ人兵士や警官に対する批判は含まれていないとの見解を示した:「この者たちは逃亡してある国に入国しようとしています。さらに兵士に見つかり、行く手を阻まれた矢先に『あなたが好きです』と言う男さえいます。実際はユーモアのある台詞を用いて、こういう者たちの無意識を表現している映画なのです。私達が望んでいるのは、全ての意見が議論されること、そしてこのように、人間の先入観からかけ離れた形でお互いを知ることなのです。」
おそらく、監督が参加する予定の4月12日の上映会が、そのための一つの機会になり得るだろう。
現地の新聞はこちら
( 翻訳者:新井仁美 )
( 記事ID:10554 )