ペロシ米下院議長がシリアを訪問
2007年04月05日付 Al-Nahar 紙

■ ホワイトハウス、ペロシ下院議長に返答「ダマスカスへの道はテロの犠牲に満ちている」

2007年04月05日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【AP、ロイター、AFP、UPI、MENA】

 アメリカのナンシー・ペロシ下院議長は、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領との会談と、ダマスカスへの道は平和への道であるという発言で、ホワイトハウスの中東政策に挑戦状を突きつけた。一方ホワイトハウスは、ペロシ下院議長のダマスカス訪問に対し、テロの犠牲者たちの道を進んでいるとして批判した。この辛辣な反応は、アメリカ政府と民主党議員が掌握しているアメリカ議会の対立を反映している。

 ペロシ下院議長と5人の民主党議員、さらにはオハイオ州選出のディック・ホブソン共和党議員は、3時間にわたってアサド大統領と面会し、その間ダマスカス旧市街で昼食をとった。

 ペロシ下院議長は、シリアの首都を出発しサウジアラビアへ向かう前にダマスカス空港で行われた記者会見で、自身のシリア訪問が必要不可欠で重要なものであり、ジェームス・ベーカー元国務長官と民主党のリー・ハミルトン元上院議員が主導したイラク研究グループの提言に則ったものであること、またそれがアメリカの国家の安全の保持のためであること、会談においてはテロ撲滅について重要なテーマとして話し合われたことを述べた。

 ペロシ下院議長は、シリア国境を通ってイラクへ侵入するテロリストや戦闘員の問題の解決策創出の必要性をシリア大統領に伝えた、と述べた。またシリアのファールーク・アル=シャルウ副大統領とワリード・アル=ムアッリム外相との会談中に、シリアと「ヒズブッラー」およびイスラーム抵抗運動「ハマース」の関係に懸念を表明した、と明かした。ペロシ下院議長と訪問団はシリアとイスラエルの間で中東和平を実現する必要性を強調し、イスラエルがシリアとの和平を望んでいることを含むイスラエルのエフード・オルメルト首相のメッセージを伝えた、と指摘した。

(中略)

■ ホワイトハウス

 ダマスカス訪問中のペロシ下院議長の発言はホワイトハウスに強い影響を与え、ホワイトハウスのゴードン・ジョンドロー報道官は、ダマスカスへの道は平和への道という彼女の発言に対して、「この道は、残念ながらハマースとヒズブッラーの犠牲、イラク入国のためにシリアを通過するテロリストの犠牲、レバノンの民主主義のためにたたかう者たちの犠牲、シリアの自由と民主主義のためにたたかう人権活動家の犠牲に満ちている。…遺憾にもペロシ下院議長は独断でシリアを訪問したが、我々はそれが無意味であったとみなすほかはない」と述べた。しかしジョンドロー報道官は、「中東におけるペロシ議長の協議内容について報告するようホワイトハウスから要請があったかどうかは知らないが、ペロシ議長が中東から帰国した際にはアメリカ政府は彼女の報告に耳を傾けるだろう」と述べた。

 ディック・チェイニー副大統領はさらに辛辣な反応を示し、「ペロシ議長はアサドの悪行に報酬を与えた」と非難した。チェイニー副大統領は英国放送協会(BBC)への談話において「アサドは自らの悪行ゆえに孤立していた」が、「(ペロシ議長と会談したことで)国際社会の観点から受け入れられるために求められていることを何ひとつすることなく、彼はアメリカ高官の訪問を受けた。言い方を換えれば、彼は悪行の報酬を得たのだ」と述べた。

 ホワイトハウスの返答に対して、ペロシ下院議長のスポークスマンであるナディーム・アル=シャーミー氏は、下院議長はアメリカが懸念する問題についてアサド大統領に圧力をかけた、と述べた。さらに、「アメリカ政府はシリアとの対話を求めるベーカー=ハミルトン提言を拒否しており、この問題に関する共和党議員と民主党議員の論争を続けさせている」と付け加えた。

■ アサド大統領

 シリアではシリア・アラブ国営通信「SANA」が「(アサド大統領はペロシ下院議長と訪問団に対して)彼らのシリア訪問は対話と和平こそが各国人民の間の共通の言語であるという明確なメッセージを包含するものであると強調した」と伝え、「直接対話によって多くの事実が明らかになり、両国および地域の安全にとって重要な課題に対処することが可能になる」と述べた。

 またSANAによれば、「(シリア大統領は)シリアが平和を望んでいることをあらためて伝え、マドリードにおいて和平プロセスが始動して以来シリアとアメリカ合衆国が果たしてきた役割について強調するとともに、その後の協議を経てシリアがアラブ和平提案を承認するに到ったことは、シリアが戦略的な選択として和平を志向していることの信用性を証明するものであると述べた」という。

 イラク情勢については、SANAの伝えたところによれば「アサド大統領は包括的な国民融和と外国軍駐留部隊の撤退日程の明示によってイラクの統一、独立の回復、国内の安全と安定を実現することを重視していると強調した」とのことである。

■ ムアッリム外相

 ヒズブッラーとハマースの捕虜となっているイスラエル軍兵士の解放への努力にシリアが寄与するよう米議会が要請していることに関して、シリアのムアッリム外相は「我々はシリア人、レバノン人およびパレスチナ人の捕虜もいることを代表団に説明した」と述べ、アサド大統領がこれらの捕虜とイスラエル兵捕虜の交換に向けて努力すると約束したことを明らかにした。

■ オルメルト首相

 テル・アビブでは、イスラエルのエフード・オルメルト首相の事務所は、イスラエルがシリアとの和平交渉の用意があるというペロシ下院議長の発言を否定した。

 また、「和平への本当の交渉を行うためには、シリアはテロ支援を停止し、ハマースとイスラーム・ジハードに拠点を提供することを停止し、ヒズブッラーへの武器の密輸を許してレバノンの安定を破壊することをやめ、イラクにおけるテロの支援を停止し、イランの過激派体制との戦略的関係を放棄しなければならない」と述べた。

 また、「シリアのこれらの条件の履行が、イスラエルとの和平到達へのシリアの真剣さをはかることを可能にする」と指摘した。

(後略)

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( 翻訳者:鳥居洋介 )
( 記事ID:10616 )