大統領府は広範囲にわたる権限をもつために、行政機関の中で重要な位置を占める。このため、過去の大統領選は数回を除いて常に苦痛をともなうものだった。首相や党首らが脅迫される一方で、国民議会はまるで閉会になったように機能不全に陥った。
アリ・フアット・バシュギルのときにあったように、ふさわしくない候補者たちは武力で脅かされ、断念させられたのだ。この戦いは「チャンカヤ戦争」としてトルコ政治史に刻まれてきた。しかし、84年という歳月の中で、選挙が時を経てより民主的になったこともまた事実だ。トルコ共和国初期の大統領は、軍部出身で国づくりを担った人々だった。アタテュルクとイスメト・イノニュは、一党制のなかで各4期、大統領を務めた。イノニュの後に大統領となったジェラル・バヤルは、トルコ初の文民大統領であった。しかし、10年間続いた民主化プロセスは、5月27日のクーデターで途切れる。1960年代から再び始まる軍部出身の大統領の時代は、1989年にトゥルグト・オザルが選出されることで幕を閉じる。オザルに始まった文民主導は、スレイマン・デミレル、そしてアフメト・ネジュデト・セゼルへと続いた。過去3期では政党が主導権をもった。
そして今また大統領府は文民の大統領を迎え入れようとしている。
■大統領選の過程
-選挙期間は1ヶ月間
憲法によると大統領を選出するプロセスは、現大統領の任期が満了する1ヶ月前に始まる。大統領選挙はこのプロセスが始まる日から数えて30日以内に完了しなければならない。
このプロセスの最初の10日間で候補者受付が行われ、残りの20日間で選挙が完了しなければならない。
■立候補者受付期間10日間
現セゼル大統領の任期は5月16日で満了する。このため候補者受付は今日、4月16日に始まった。立候補者、または推薦を受けた候補者たちは4月25日水曜日24時までに届出書をトルコ大国民議会の議会運営委員会に提出する必要がある。届出が完了すると、国会諮問委員会が投票の日時を決定することになる。
-184名の国会議員の出席で十分
選挙日に召集される総会に184名の国会議員が出席すれば、選挙は実施されることになる。投票は無記名で行われる。
-最初2回の投票で367票が条件
憲法によると大統領になるためには、初めの2回の投票で全国会議員(550人)の3分の2(367人)の票を得なければならない。
-3回目の投票で276票が必要
初めの2回で367票に達しなかった場合、3回目の投票では過半数票を得ることが求められる。つまり議員550人からなる国民議会では276人ということになる。
過半数に達することができなければ、最も多くの票を獲得した2人の候補者が4回目の投票にコマを進める。
-4回目の投票で2人の候補者が競う
4回目に進んだ二人の候補者のうち、多数の票を獲得した者が大統領に選ばれる。大統領がこの投票でも決められなければ、議会が解散され、選挙となる。
■大統領になるための条件
-被選挙権:満40歳以上で高等教育を受けた者
大統領になるためには、満40歳以上で、高等教育を受けており、国会議員立候補に必要な条件を満たしている必要がある。国会議員は、単独で大統領選挙候補者になることができる。国会議員でない者は、110名の国会議員の推薦文書があれば候補者となれる。大統領の任期は7年である。再選は認められていない。大統領に選出されると、現在所属している政党との関係は切られ、国会議員のとしての地位もなくなる。
■権限は広範囲、免責あり
・大統領は会期初日に国会を開会する。必要であれば国会を召集する。法律を公布する。不適当と判断される法案は、再度審議させるために議会に差し戻す。
・国会を通過した憲法改正法案について、必要と判断した場合に国民投票に付託する。憲裁判所にて法律の無効請求裁判を起こす。
・憲法裁判所の裁判官、行政裁判所裁判官の4分の1、最高裁判所の検事長及び副検事長、軍事最高裁判所の裁判官、軍事高等行政裁判所の裁判官、裁判官・検事高等委員会の委員を選出する。
・首相を任命する。大統領は議会の名の下に国軍最高司令官に就任する。参謀総長を任命する。国家安全保障評議会を招集し、議長を務める。
・特別な場合に減刑、または刑を免除する権限をもつ。国家監査委員会の委員を選出し、調査・研究させる。高等教育機構(YÖK)の委員と大学学長を任命する。
・大統領が自らの意思で署名した決定、命令について、憲法裁判所を含む司法機関に提訴することはできない。国民への裏切り行為があった場合のみ、弾劾される。このためには具体的証拠と議会の4分の3の票が必要となる。
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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:10661 )