論説:イラクにおける情報公開問題
2007年04月29日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ 論説:表現の自由

2007年04月29日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面

【ジャワード・アル=ハーシミー博士】

 世界人権宣言第19条を確認しておこう。「全ての個人は意見を自由に表現する権利を有する。これには、干渉されることなく意見を持ち、国境を超えて如何なる形態のメディアを通じてでも、情報を求め受け取り発信する権利が含まれる。」

 情報公開という課題については、国際法並びに各国の法において着実な発展が見られる。知識欲は人間の本然であり、人類史は己とそれを取り巻く環境についての知識の発達の記録であるとも言える。従って、情報を得る権利というのは自明の権利の一つであり、あらゆる法で尊重される。

 公式情報にアクセスし知識を得るのは基本的権利であると共に、人権宣言に記されるように全ての個人にとっての法的権利である。これは、この原則を憲法や国内法に取り入れている多くの国々にとって、国際法の源の一つとなっている。

 知る権利に言及した法は、2世紀以上も前にスウェーデンで成立しているにも関わらず、民主国家がそれを適用し始めたのは過去20年程のことである。特にこの10年、組織的汚職が世界中で問題となったのを受けてこの傾向は増大し、75カ国以上で情報開示に便宜を図る法が作られた。

 過去20年の間に独裁体制の崩壊が相次ぎ、歴史の必然として民主体制が現れたのも、この流れの一因である。これに加えて、汚職に対抗し透明性を増そうとする世界銀行、国際通貨基金他、国際援助機関からの要請と、情報にアクセスし行政に参加すべきとする市民社会、報道機関からの要請が増した事も要因として上げられる。

 ところでイラクにおいては、このような法律、特に公の情報にアクセスし知る権利に関する法が存在しない(国会が法案を受理しているにも関わらず、今日まで討議が行われていない)。この事態の原因は、非間接的に、腐敗した幹部が追及される事なく残存している米政権の政治的支配に求められる。民主体制においては、監査により透明性を保つのが基本的条件の一つである。公明正大さを義とする一般道徳が弱まっている事も、もう一つの原因である。

 我々の憲法は、情報にアクセスする権利を確保する法を制定するのに適した枠組みを有している。報道関係者や非政府組織は、イラク憲法のその部分を取り出して、法律として実施可能にする事を要請すべきである。公の情報へのアクセスを可能にするというのがこの権利の主眼であり基本である。公共の利益並びに国家の安全に反する場合を除いて、これが阻止されるべきではない。

 このような法が制定されれば、イラクは、国際条約、特に人権宣言を適用している国家として、また、憲法を尊重している国として、その格を上げることになる。一方で、この権利の確定を遅らせたり無効にする事は非合法であり、憲法とその精神に反すると見なされる。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:10773 )