論説:ヤズィード派クルドに対するテロ
2007年05月02日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ クルディスタンの夜明け、アラブ化の時代は過ぎ去った

2007年05月02日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面

【アーザー・ハシーブ・カルダーギー】

アル=カーイダとその同盟者達の組織が、イラク憲法第140条の適用地域にテロ作戦を集中しているのは明らかである。前政権は、それらの地域の人口をアラブ化するため行政区域の分離合併を行ったが、同条項は、それにより生じた状況を元通りにする事を目的としている。

第140条の適用地域は、キルクーク市とその周辺の市町村、モースル県の一部を含んでおり、アル=カーイダは当初、キルクークを作戦拠点にすべく攻撃を集中し、特にクルド住民が多数の地域を狙った。脅かされた住民がキルクークから避難し、憲法が定めるところの国民投票、キルクークをクルド自治区に併合するかどうかを決める投票に参加できなくなる事を意図したものである。

アル=カーイダとその同盟者達は、キルクークでは第140条に対する戦いに敗れ成果を得られなかった。そこで、より弱いと想定される地域、そこに影響力を及ぼす事ができれば、直接あるいは間接的に国民投票の結果を左右できるような地域に矛先を向けた。それが、ヤズィード派クルド住民〔訳注:ヤズィード派はイラクのクルディスタンの一部で信奉されている宗教で、スンナ派イスラームを信仰するクルドの多数派からは異端視されることもある〕を多数とする地域である。これらの地域に対するテロ攻撃が始まっており、最新の事件では24名のヤズィード派労働者が惨殺された。

過去3年以上の間モースルで、クルド、ヤズィード派クルド他、キリスト教徒などの少数派住民に対し、一連の犯罪的テロ行為が起きているが、これもその一つである。モースル大学では、これら少数派の学生に対する脅迫行為があり学業を断念させられるなどの事件も起きている。

最近の傾向として、この流れはより大規模な悪意あるキャンペーンと化しており、今年の終わりまでに予定されている国民投票に備え当該地域を再度アラブ化するという目論みのもと、クルドやキリスト教徒の全人口を追い出そうとしている。意図は明らかであり、加担しているのは、アル=カーイダの支援者達、そして以前と同じアラブ化政策及びバアス化政策の立案者達である。

従って、これらの地域で発生する事件については、その規模や要因、性質に関わらず、意識的に警戒すべきである。アル=カーイダとその同盟者達は、これら地域の中に浸透すべく、どんな小さな穴でも探し出そうとしている。彼らは、自分達の政策実施に役立つあらゆる口実を求め、家族関係や社会関係さえ利用して問題を起こす用意をしている。これらは、人々を混乱させ精神的な弱点に付け込む彼らの手段である。これを通じて人々を互いに敵対させ、また、問題が宗教的なものであるかのように装い、自分達に敵対する者に背信者の烙印を押し好きなだけ流血沙汰を起こす。

アラブ化の時代は過ぎ去った。ヤズィード派クルドは、このような陰謀に打ち勝ちそれを挫く力がある。かつてバアスの計画を挫き、元々の民族〔訳注:クルド民族〕への帰属意識を保ち続けたように。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:10794 )