《社会的安全向上計画》特別レポート:金で雇われたマネキンたち
2007年05月09日付 Iran 紙


【社会部:モフセン・ジャンダギー】社会的堕落は多くの場合、社会の安全を混乱におとしめる端緒となっている。女性の貞操〔=家族の名誉〕に対する迷惑行為、放縦、そして堕落といったものが現れると、何よりもまず安全が脅かされる。社会的堕落を示す数値が上昇し、女性の貞操に関わる不道徳な家庭用〔ビデオ〕CDが出回っていることが、社会的安全向上計画の実施を治安維持軍に促した一つの要因となっている。

 計画の続行に85%の市民が賛成

 社会的安全向上計画は、何も新しいものではない。それは過去何年も前から行われてきたものだ。

 社会的安全が危機に瀕していると感じてきた人々や、自分の子供のことを心配してきた家族らは、治安維持軍に対して計画の実施継続を訴え、それを大いに歓迎してきた。世論調査によれば、市民の約85%が社会的安全が完全に確立されるまでこの計画を継続するよう、治安維持軍に求めていたのである。

 言うまでもなく、社会的安全向上計画に反対する人々の多くは、この計画が社会に疑念を生じさせるものであるかのごとく主張し、この計画の実施目的を歪曲しようとしてきた。

 メディアの罠

 社会的安全向上計画はさまざまな部門からなっており、バッドヘジャーブ取締りもその一つである。言うまでもなく、乱れた衣服を着用し、シャリーアと慣習を遵守することなく、むしろそのような行為を繰り返し、拡大させることは、社会の雰囲気を悪化させ、風紀の乱れがあたかも自然なものであるかのように見せてしまう。

 このような行為は、多くの社会的堕落を生む元凶となりうる。ところが、社会的堕落に対処するための包括的計画の一部門であるはずのバッドヘジャービーへの取締りが、多くのプレスの批判の中心に位置づけられてきた。この種のプレスは、外国の通信社やウェブサイトと同調して、社会的安全向上計画を「バッドヘジャービー取締り」としてのみ取り上げ、バッドヘジャーブな人間が逮捕されている写真を掲載しては、社会的安全向上計画の実施が社会的堕落ではなく、市民を取り締まっているかのように報じてきた。しかし、これら一部の敵意あるメディアの努力とは裏腹に、この計画は一般の市民や家族からはかつてないほどの好評を博してきたのである。

 政府関係者・国会議員らの支持

 社会的安全向上計画の実施に対する市民からの支持の声に続き、政府関係者や国会議員らからも、同計画を歓迎し、その継続を求める声が上っている。

 203名の国会議員は大統領に書簡を送り、社会的安全の向上を断固支持する旨表明、同計画の貫徹・継続を求めた。また国の行政関係者も、秩序を乱す商品の製造業者や、武器・アルコール飲料・麻薬・向精神薬の密輸業者、毒された思想を撒き散らし信仰を破壊する者たち、ごろつきどもや不道徳〔ビデオ〕CDの流通業者などが跋扈する現状を指摘した上で、このような業者らを取り締まる必要性から社会的安全向上計画を支持すると表明した。

 治安維持軍長官のエスマーイール・アフマディー=モガッダム司令官は、このことについて次のように述べている。
「残念ながら、家族がちょっとした娯楽のために公園に行ったり山に登ったりするのにも、安全が確保されていない状況が社会に生じてしまった。こういった場所にも密輸業者やごろつきどもが潜んでいるために、家族はこれらの場所に行こうとも思わなくなってしまったのだ。こういった場所がごろつきや堕落した人間どもにとって気楽な場所となり、一般市民や家族にとっては危険な場所となってしまったというのは、実に皮肉な話だ。この計画は、社会的安全を向上させるためのものであり、市民に制限を課すことを意図したものではない」。

 社会的病理にどう対処するか

 治安維持軍社会問題担当次官のトウヒード・アブディー博士は、イラン紙とのインタビューの中で、社会的安全向上計画に関し、同計画のこれまでの経緯について次のように述べている。
「随分前から、社会の逸脱や混乱を目にしてきた。社会の安全の確立には関係者の自覚が必要だった。反道徳的な〔ビデオ〕テープやCDが氾濫していることによって婦女暴行事件〔が誘発されている現状〕、社会の秩序の混乱、ごろつきどもへの市民の恐怖、そして国内における社会的病理の防止〔の必要性〕が、専門的な検討・調査を経た上での計画の実行を後押しした。

一部の女性が不適切な服装をしていることも、社会の道徳的安全が脅かされ、婦人たちが社会で迷惑を蒙る原因となってきた。警察は、法的な組織として、政府の政策の実行役である。社会の規律を混乱せしめようとする者どもに対処すべく行動を起こすことは、われわれの責務である」。

 治安維持軍国会対策担当次官であるメフディー・モハンマディーファル博士も、社会的安全向上計画について、イラン紙に次のように語っている。
「この計画の実施は、昨年から始まっている。危険な麻薬常習者たちや、カメラをもって他人のプライヴァシーに侵入しようとする者たちを一斉検挙して欲しい、《マネキン主義》〔の蔓延〕を防止して欲しいとの市民の声に応えるために、治安維持軍はこの計画を実行に移したのである」。

 生けるマネキンたちは金で雇われている

 通りを歩くマネキン女たちは金銭の見返りに、喜んでけばけばしい身なりで公衆の面前に現れていたのだ、などというのは信じがたいかもしれない。しかしアブディー博士は、このことについて次のように語っている。
「逮捕者らの中には、金で雇われて、喜んで要求された服を着て公衆の前に現れたというケースが複数あった。このような問題は、社会の秩序に混乱をもたらすものだ。

金銭を払った人物の目的はさまざまだ。服の売買を生業にしている者の中には、通りを歩くマネキンたちに、服を着て、公衆の前に現れて、一種の宣伝をしてもらうために、金を払ったという者もいた。もちろん、商売や経済活動といったものは、金銭の授受の一側面にすぎず、これ以外の目的のために、つまり〔社会秩序を維持する上での許容と禁止の〕境界やレッドラインを壊すことを目的に、このようなことに手を染めた者もいた」。

 治安維持軍国会担当次官もまた、《マネキン主義》なるイデオロギーが拡大を見せていることについて、次のように語っている。
「娘たちや女たちの中には、金銭を受け取って、アパレルメーカー1社あるいは数社が求める服を着る者がいたことを示す証拠を、われわれはつかんでいる。例えば、彼女たちは〔ある服を着て〕ヴァナク広場からタジュリーシュ広場まで行って帰ってくる。彼女たちが着ていた特別なファッションや服装が、より多く売れることを狙ったものだ。マネキン主義イデオロギーは急速に拡大していたのだ」。

 堕落を取り締まるものであって、市民を取締るものではない

 社会的堕落取締り計画を実行している治安維持軍の警官らは、違反者を取締ることについてきちんとした説明を受けており、その方法は明確化されている。

 アブディー治安維持軍社会問題担当次官は、このことについて次のように述べている。
「われわれは社会的堕落を取り締まる際、三つのグループに相対している。一つ目は、徒党を組んだり、堕落のネットワークを築いたりすることで社会の安全に害を及ぼそうとする違反者たちである。犯罪者や道を外れた者たち以外に、この種のグループを取締ることに対して反対する者はいないだろう。

第二のグループは、不道徳な恰好をして風紀を乱す者たちである。この種の者たちは、マネキンたちのように、不適切な服装をすることで不道徳を広めようとしている。この種の人たちにも、きちんとした取締りを行う。

第三のグループは、単に慣習を守ろうとしないというだけの人々であり、我が隊員らは彼らに対して優しく注意するよう、指示を受けている。このような人々は指導を受けることになっており、法律や慣習を守るよう願いたい。家族の人たちの中には、第三のグループにいる自分たちの子供たちへの対応が厳しいものになるのではないかと心配する向きもあるが、心配する必要はない。というのも、我が隊員らはこのことについて、きちんとした説明を受けているからだ。

もし万が一、治安維持軍の隊員に不法な行為があった場合は、197番に連絡をして、担当官に事情を説明することも可能だ。またこの番号は、提案を寄せたい場合や、治安維持軍の隊員らに感謝のことばを寄せたいときにも使うことができる。なお、家族の方々にあっては、無関心を決め込むことなく、シャリーアや慣習を守り、社会的安全のために治安維持軍の隊員に協力するよう願いたい」。

 他方、モハンマディーファル次官はバッドヘジャーブな女性への指導の方法について、次のように語っている。
「女性を取締る際には、治安維持軍の教育を受けた女性隊員が、その任に当たることになっている。これらの女性隊員は軍人であり、適切に対応するための必要な教育を受けた者たちである。

我が隊員らは最初のうちは、友好的な態度で指導にあたり、厳しい口調で話したりすることは決してない。しかし、相手が指導を受け容れなかったり、隊員らに対して反抗的な態度を取ったりした場合は、当然のことながら、隊員らの対応も厳しいものとなる。指導を受ける者たちは、我が隊員たちに対して無礼な行為を慎まねばならない」。

 モハンマディーファル次官はまた、バッドヘジャーブな者たちの司法当局への送検について、「警察署に連行されたの者たちの割合は、極めて低い。また、バッドヘジャーブな者が司法当局に送検されたことは、これまでない」と述べている。

 法の施行
「ヘジャーブは歴史的に古く、またわれわれの宗教的義務でもある。それだけでなく、我が国の法律にも明確に義務として記されている」。

 モハンマディーファル次官はこのように述べた上で、さらに次のように語った。
「フランスでは、学生・生徒は授業を受ける際、ヘジャーブを身につけてはいけない決まりになっている。他方我が国の法律では、ヘジャーブは法律で定められている。果たして、この法律を守るよう指導し注意することに、いかなる問題があるというのであろうか?

この計画は、国民の安全を向上させるためのものであり、それ〔ヘジャーブ〕を守ることは、目に見えるなかたちで安全を社会に広めることにつながる。法律に対して嫌だだと言ったとしても、法律とはそういうものではない。赤信号で止まることは、法律で定められている。赤信号で止まるのは嫌だ、などと言うことなどできるのだろうか?」

 モハンマディーファル次官は、イランにおいてヘジャーブは、単なる宗教上の問題にとどまらないとした上で、次のように語った。
「イランにおいてヘジャーブは、国民的な問題である。イランでは2000年前から、女性はヘジャーブを身につけていた。彼女たちの服装デザインは、適切に体を覆うものであった。さらに、現在我が国はイスラーム国家であり、ヘジャーブは宗教的義務でもある」。

 はっきりと分かる変化

 2年に一度イランを訪問している、あるロシア人ジャーナリストがいる。彼は今年のブックフェアを視察するために我が国に来たのだが、彼は自分が見たものを信じることができなかったそうだ。彼曰く、「テヘランの通りに一歩踏み出すと、ヘジャーブなんかなくなってしまったの?という感じがするね。僕が知らないことでも起きたのかってね。女性たちの化粧や服のデザイン、身なりなんかは、イランではもはやヘジャーブは法律で定められていないんじゃないかってくらい変っちゃったんだね」。

 イラン社会にいつもいるあなた方には、彼の言っていることが分からないかもしれない。しかし、数年に一度イランを訪れる人には、このことがよく分かるのだ。実際、ヘジャーブや服装には大きな変化が生じてしまっているのである。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:10857 )