論説:フランス新政権が対アラブ政策を大転換?
2007年05月20日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ フランスの対アラブ政策がひっくり返る?

2007年05月20日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトゥワーン本紙編集長】

 フランス新内閣の布陣から見て、ニコラ・サルコジ大統領がド・ゴール政権の遺産と決別し、アメリカ合衆国率いるアングロ・サクソン陣営への加入を希望していることは明白なようだ。そうすることで彼はヨーロッパ内のみならず、アラブ地域におけるフランスの自立的な立場と政策を否定しようとしている。

 サルコジ大統領がベルナール・クシュネル氏を外相に選び、前政権が対イラク戦争でアメリカ陣営に加わることを拒否したのは間違いであると断じたことはどちらも、彼がヨーロッパ内で最も信頼できるアメリカ現政権の同盟者になろうとしていることを示唆している。サルコジはドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリスの次期首相であるゴードン・ブラウン氏と共に、ブッシュ大統領の一番のお気に入りの地位を得るための競争に加わろうとしているのだ。

 クシュネル外相は、対イラク戦争でフランスがアメリカ側に立たなかったことへの遺憾の意を表明した。同外相は戦争に先立つ危機の段階で合衆国とその同盟国から距離を置いたフランスの外交政策を激しく批判したが、「戦争を止める唯一の方法は、断固たる解決へと到達するためにアメリカ側に立つことだった」と述べるなど、その理由付けは十分でなかった。

 もし合衆国がこの戦争に勝利し、イラクに安定し繁栄する民主主義を根付かせたならば、我々はこの立場を理解できる。しかし、合衆国の現政権はイラクでは勝利を収められず、軍の撤退も問題だが残留はさらに大きな問題であるという、抜け出すことのできないジレンマにはまっている。

 戦争がイラクと中東全体に成果をもたらしたのであれば、クシュネル外相が遺憾に感じたとしても不思議はない。なぜならその場合フランスは、豊富な戦利品の分け前にあずかれず、世界を管理しいくつもの勢力圏に分割する決定において大きな役割を果たしたり、より深く関与して利益を得たりすることからも除外されたであろうから。しかしブッシュ政権は勝利を果たせず、議会の反対に直面し、議会の中間選挙でアメリカ国民の示した結果は民主党への支持であった。

フランスの前政権がとった政策のどこに誤りがあったというのか。正当性と道義性に欠けた戦争への不参加を表明した前政権こそ、明晰で的確な見解の持ち主だったのではないのか。戦争は参加した全ての国々に災厄をもたらし、イギリスとスペインは首都を爆破事件に襲われて前者は数十人、後者は数百人の犠牲者を出すという形で、戦争に参加した高い代償を自国の治安と国民の安全で支払った。

 不可解なことにサルコジ政権は、記録的なスピードでイラクやアフガニスタンでの敗北という奈落へと突き進みつつある米政権が運転する列車の最後尾に追いつこうとしている。同じ頃に他の同盟諸国は列車から逃げ出して、失敗した軍事的冒険から手を引き始めているのだ。スペインでは右派のアスナール政権が、イタリアではベルルスコーニ政権が倒れ、イギリスでは先週行われた地方選挙で労働党が最大の敗北に見舞われた。

 フランスをテロから守り、国家としての独自性を強め、世界中、特に中東地域やイスラーム世界においてその国家像を際立たせ、国益に繋げたフランスの外交政策からの転換がいかなる教訓をもたらすことになるのか、我々にはわからない。

(後略)

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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:10945 )