コラム:パレスチナ分裂の危機
2007年06月16日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ファタハとハマース:対話の環境は整った

2007年06月16日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム欄

パレスチナ大統領マフムード・アッバースは、挙国一致内閣の解散、臨時政府の形成にサラーム・ファイヤード氏を任命するという手段を採った。これは、ジョージ・ブッシュ米大統領、カルテット(米露、EU、国連から成る四者委員会)、大多数の欧州並びにアラブ諸国政府からの支持を得ている。しかし、今後数日の内に、これらの勢力がどう動くのかという点が大いに疑問である。

合衆国とカルテットは挙国一致内閣を認めず、経済封鎖並びにハマース閣僚らに対する外交封鎖を継続してきた。この対応が、ガザ地区情勢の紛糾、PAとそれに従う治安組織に対しハマースの過激派が宣戦布告し勝利するという事態に、大きな役割を果たした。

アッバース大統領は、どの尺度で見ても危険な賭けに出た。イスマーイール・ハニーヤ氏の内閣を解散し臨時政府に替えるという措置が、闘争中の両組織間の溝を広げ、恐らくは最終的な断絶にまで至らせるであろう事は明らかである。

ハマース側は解散を拒絶し、いかなる臨時政府であろうとも非合法とみなすと述べている。ハマース・スポークスマンの1人は、臨時政府の組閣を任じられた蔵相サラーム・ファイヤード氏に対し、それを拒否し中立の立場を守るよう求めた。二つの異なる政府が同時に存在するという事態へ向かっている。一つは西岸で、欧州、アラブ、アメリカ、イスラエルの承認を得て、もう一方はガザで、それらの勢力の大多数による封鎖に直面して。ごく最近まで、政府には2人の指導者が存在した。今や我々は二つの政府を目の当たりにしている。

ハマース政治局長ハーリド・マシュアル氏によれば、ハマース内の勢力が、ガザで各種の治安組織に対して動いたが、それはファタハそのものに対抗するという意味ではなく、治安計画を乱しその障害となっていた小規模の集団を抑えるためであった。同氏は、アラブ諸国傘下でのファタハとの対話再開を提案した。

しかし、両者の間に大きな亀裂が入った事は確かであり、橋をかけるのは困難となった。ガザでのハマースの勝利は、今後、長期にわたる闘争が開始されることを示している。この勝利が、アッバース氏に対する欧米の明白な政治的支持を軍事的支持へと変えていく端緒を開いてしまったからである。それは、より大規模の流血を伴う対立を導くだろう。

あからさまに偏ったアメリカのアッバース氏支援が、恐らく、このパレスチナの亀裂を深めていく。特に、対イスラエルではなく、対ハマース用に、新たに武器取引やファタハ分子の再召集、教練等が行われた場合、それは、パレスチナ民族とその政治的目標、つまり占領に対して行われていた抵抗運動の危機をもたらすだろう。

パレスチナ政治運動の二大勢力であるファタハとハマースが対話に戻る事が、この壊滅的事態からの唯一の脱出口である。しかし、アッバース大統領の政治顧問、アフマド・アブドゥッラフマーン氏は、彼らが名付けたところの「革命分子」らと席を共にする事はできないという口実でこれを拒否した。致命的なミスである。

アラブ勢力は、この対話を成立させるため真剣に介入すべきである。なぜなら、ガザでの(PAとハマースによる)二重治安体制が解消され、腐敗を根付かせ全面的に外部、特に合衆国と結びついていた国家(PA主導による体制)が終わりを迎えた今こそ、この対話を成功させる好機だからである。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:11162 )