コラム:イラク・クルディスタンとトルコ軍の関係
2007年06月26日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ 猛暑の夏に過熱する事案

2007年06月26日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)論説1面

【ダーラークスルー・ハミード】


イラク・クルド自治区の気温は、トルコ軍の「温度計」で見ると上がったのだろうか?世界のメディアを賑わしている疑問である。

我々がトルコ軍と言うとき、それは文民政府に従う軍ではなく、影の部分を支配する軍事及び経済機関を指す。

イラク・クルディスタンは複雑かつ微妙な時期にさしかかっており、指導部には、異なる様々な方面と慎重に巧みに交渉することが求められている。アメリカの著名なジャーナリスト、トマス・フリードマンはインタビューで、「クルド問題が人道問題であっても、トルコ・クルド政府間の重要な局面に際し、合衆国は自身の利益のためにトルコ寄りの態度を取るだろう」と述べ、上院集会でのライス国務長官発言、「合衆国はエルドアン氏の政府を支持する」がそれを裏付けている。

そしてエルドアン首相は、文民政府によるトルコ軍への力強い支持を次のように表明している。「トルコ軍が北イラクにおいて、クルド労働者党の軍に対する軍事行動を実行するのに議会の承認を求めるとすれば、私はその承認を取り付ける用意がある。」

国民投票法案に対するセゼル大統領の拒否権行使等もあり、来る7月22日の大統領選キャンペーンに没頭するエルドアンの立場は複雑である。同氏は、非常事態法により、クルド地区の票の大多数が公正発展党に入る事をよく知っている。2002年選挙でも、クルド候補、つまり中産階級かそれ以下の階層出身の候補は、公正発展党に益するよう投票した。つまり、エルドアンは、選挙キャンペーンを成功させるべく働きかける一方で、軍の信認も失わないよう動いている。

イラク・クルディスタンへのトルコ軍の侵入については、米トルコ関係という角度から見ることもできる。最近トルコの各都市で起きた爆発の後、軍事行動の必要性を見出したトルコ軍はその地域を恐怖に陥れたが、アメリカの承認を待って行動が遅れたとみなす分析もある。

しかしトルコは、その目的達成のためには、アメリカとの関係を犠牲にしても構わないという事を過去に幾度か明確にしている。2003年、イラク前政権に対する北部戦線を開こうとした米軍に、その領土の通行許可を出さなかったのが良い例である。そして最近のトルコには、トルコ民族国家称揚のためなら手段を問わないナショナリズムの趨勢が見られる。

アメリカの方は、ジョージ・ブッシュ大統領の大中東構想宣言の後、中東の政治舞台で「穏健派」イスラム政党の支持に熱心である。ブッシュ大統領は、公正発展党をこの地域における理想的な支配イスラム政党のモデルと見ており、同様の政党が増えることを奨励している。

イラク情勢において、クルディスターンは比較的平穏と安定を享受しているイラクの一地域であり、合衆国はこれを成果として誇れる。過去数週間、治安問題の責任を自治政府に引き渡していく一連のプロセスが行われた事などが良い例である。この地域でバランスを覆すのは難しい。それは、クルドと彼らの当然の権利のためではなく、合衆国がその外交政策において面子を保つためなのだが。

私がフリードマン氏と意見を異にするのは、合衆国はその利益のために、トルコ軍が北イラクで軍事行動をおこすのに目をつぶるかもしれないが、ヤシャル・ブュユクアヌト参謀総長指揮下で腐敗しているトルコ軍は独自の経済構造体であり、それが、エルドアン氏もアメリカもひっくるめて射程内の標的とみなすかもしれないという点だ。特に、軍事行動を自制したり縮小したところで、トルコのEU加盟の役に立たないという事が分かった後は。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:11258 )