トルコは満足 -マーリキー首相が動かなくても合意文書がある
2007年08月09日付 Zaman 紙

トルコ首相レジェプ・タイイプ・エルドアンとイラク首相ヌーリー・アル=マーリキーが一昨日(7日)、対クルド労働者党(PKK)闘争に関する「同意外交覚書」に調印したことが様々な論議を呼んでいる。

ザマン紙に対しコメントした外交筋は、「新たな段階に到達した。対テロ闘争の法的基盤がつくられたのだ。イラク・トルコ間でこの文書において初めて、PKKがテロ組織として言及されている。文書はイラク全体を包括している」と話している。

専門家らは、イラクの現状とバランスを考慮した際、イラク政府が具体的な行動に移る可能性はあまり高くない、との見解をとっている。また、長い間議論されてきた「越境作戦」の可能性は、これからの数ヶ月間議題にのぼることはない、と強調している。

マーリキー首相の訪土を評論した国際戦略研究機関(ISRO)所長のラチネル准教授は、同意外交覚書への調印が十分でないとの見解。同准教授は「PKKがテロ組織であるということに関し、たった一文の協定さえ十分な効力を持ちうる」と述べている。また、「私としては二国の首相の会談は何の結果ももたらさなかった。『PKKはテロ組織であり、戦うべき相手である』というような一文の協定もありえただろう。同意外交覚書は何ら拘束力も持たない。手帳に記されたメモのようなものだ」と語った。

ラチネル准教授はさらに、調印した文書の内容をマーリキー首相が実行に移す際支障を被ると指摘。また同首相が政府内で経てきた困難、特にスンナ派とイヤード・アッラーウィー派閣僚による閣議のボイコットに注目した。准教授は「2ヶ月後マーリキー首相は在任しているだろうか?いなくなるのだろうか?」と問い掛けている。

■越境作戦は延期

ラチネル准教授によると、トルコに対し執拗な追跡の機会を与えていたサダム・フセインの政権時に、二国間で調印された1984年付の協定が同意外交覚書に加えられなかったことも欠落であるという。同准教授は、この状況をクルド人の反対が生んだとする。また「トルコが求めているのは、同意に達しようとしない国としてのイメージから脱すること、そして法的基盤を強化することである。イラク側はPKKがテロ組織であることを認めた」と語った。

防衛の専門家ニハト・アリ・オズジャン博士もまた、マーリキー首相がテロ組織PKKに対し闘争を行わないとの考え。同博士は「マーリキー首相には政府内に問題がある。アメリカとの問題もある。そして北イラクの自治政府との問題がある。これら3つが重なれば、外交覚書に調印したことにかかわらず、実際上行動に移ることは不可能だ。テロ組織の、特にイラク国内における係わり合いを考慮に入れた際、マーリキー首相が調印した文書はなんの意味も持たない」との見解を語っている。

オズジャン博士はまた、調印された文書の持つ意味について、「後々役立つ文書となる可能性もある。あらゆる外交手段を試したとして。トルコが自国の意向のみで対PKK攻撃を行う機会を与えるかもしれない」と説明する。同博士はこの同意によって、越境作戦が来春に延期されたとの見解も語っている。

■アメリカは同意を支持

退役陸軍准将アルマアン・クルオールもまた、同意外交覚書によって越境作戦が来春まで議題に上らないと述べている。トルコは昨年7月、対テロ組織闘争に関しイラク、アメリカ側がまったく行動を起こさないことに対し、声を上げた。その結果アメリカはテロ闘争担当責任者を任じた。トルコ政府も昨年を振り返って、この仕組みがただの時間つぶしであったと認めている。

クルオール氏は、マーリキー首相が協定ではなく同意外交覚書に調印したことについて、「協定に調印しなかったのは法的拘束力を持つからである」と解釈している。またトルコが再び対話の路を選んだことについては、「トルコはアメリカとの関係を壊さないためにイラクと会談を行った」と評論している。クルオール氏はまた、マーリキー首相が対テロ闘争に関して結んだ約束を守りえない、との見解をとっている。

アメリカはというと、トルコ・イラク間において一昨日、対テロ闘争に関しアンカラで調印された同意外交覚書を肯定的に受け止めた。アメリカ国務省のある高官は、同意外交覚書の調印が「プラスの展開、前進である」と位置づけた。同高官は、二国の首相が会談し、テロやイラクに関する他の諸問題を話し合うことは、建設的と受け止められるべきだ」と述べた。

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( 翻訳者:上田悠里 )
( 記事ID:11612 )