憲法学者ジェム・エロウル氏は、「国民投票にかけられる(憲法の)条項文は変更不可能であるのに、議会は権限を逸脱した」と主張した。また同氏は、「ある条項文を国民投票にかける権限は大統領にしかない。ギュル氏はこの権限を行使しなかった」と語った。
トルコ議会制度の限界を圧迫するだろう憲法改正の国民投票実施に一日を残し、法に関する大論争が始まった。
アンカラ大学政治学部の憲法学者ジェム・エロウル教授は、憲法には「国民投票にかけられる条項文が(後になって)変更されることに関していかなる規定もない。しかしトルコ大国民議会は変更を行い、明らかに議会の権限を越えた」と発言した。
同教授は、憲法ではある条項を国民投票にかける権限が大統領にのみ付与されていると指摘する一方で、「大統領は、変更された条項についてこの権限を行使しなかった」と語った。またエロウル教授は、このプロセスを停止しなかった高等選挙委員会(YSK)にも権限の逸脱があったと述べた。
■ 新たな条項文
エロウル教授は昨日(19日)のジュムフリイェト紙に掲載された論説で主として、「第11代大統領が国民投票で選出される」ための準備について、国民投票に提示されてから憲法改正パケットが出されたことに着目した。
エロウル教授は、現行憲法には国民投票のために提示された条項文の変更を可能とする方法はひとつも示されていないと強調する。そして現行憲法が許可している唯一の方法が、「国民投票にかけられる条項文全ての効力停止」であることに注意を引いた。同教授は次のように続けた。
「それなのにトルコ大国民議会は、国民投票の5日前(10月16日)に承認した新たな憲法改正にともなって、国民投票にかけられる条項文を差し替えた。この手続きにより、国民に新しい条項文が提示された。現行憲法の第6条によれば、いかなる機関も、憲法に示されていない国家権限を行使することはできない」
■ ギュル大統領と高等選挙委員会(YSK)を批判
「疑いなくこの条項はトルコ大国民議会(TBMM)をも縛るものである。憲法改正に関する憲法第175条も、その他のいかなる条項も、トルコ大国民議会に対し条項文を国民投票にかける権限を与えていない。この権限は唯一、大統領に属する。大統領は、変更後の条項文に関してこの権限を行使しなかった。実際、これを大統領が行使していたならば、「憲法改正国民投票法」に従い、この新しい条項に関する国民投票は約4ヶ月後にしかできなかっただろう」
エロウル教授は、「トルコ大国民議会は明白な権限逸脱行為を犯した」と主張し、次のように続けた。
「この手続きが憲法裁判所に持ち込まれれば、取り消しはもとより、適用すべき法がないという決定が出される可能性もある。トルコ大国民議会は、憲法が全く認めていない権限を行使した。権限を逸脱していれば、確実に無効の判決が下る。
私が例示したとおり、権限の逸脱がそこまで明らかで確実であれば、適用すべき法がないという決定が出される可能性もある。残念なことに、この明らかな無法状態に、ギュル大統領も最後の法案を議会に送り返す、または国民投票に提示することをしなかったことで、明らかに共犯となったのだ。高等選挙委員会(YSK)も内容精査する際に核心を見逃したのだ。全てのことに反して高等選挙委員会が国民投票実施を決定したことで、自らの権限を逸脱した。これからできる唯一のことは、国民投票を延期し、関係機関が憲法に適した新しい準備をすることだ」
現地の新聞はこちら
( 翻訳者:杉田直子 )
( 記事ID:12209 )