パレスチナ人の苦難を描いた壁画でベツレヘムの観光業振興を図るイギリス人アーティスト
2007年12月04日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ パレスチナ人の苦難を描いた壁画でクリスマスのベツレヘム訪問振興を図るイギリス人アーティスト
2007年12月04日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ベツレヘム:レベッカ・ハリソン記者(ロイター)】
壁画アーティストであるバンクシーは、キリストの生まれた聖なる街ベツレヘムで、壁画を通して今年のクリスマスに観光の活性化をもたらす試みを行う。彼は、ベツレヘム市内の建物の壁の上に防弾チョッキを着た平和のハトや、イスラエル兵のボディーチェックをする女の子の姿をはじめとする6つの新しい絵を描いた。
バンクシーは皮肉で挑発的な絵で評判を得ている。ベツレヘムの聖誕協会向かいのファーストフード店を、パレスチナや海外からのアーティストたちのための展示場に変えた。彼の絵はオークションで何十万ドルもの値がつけられており、ハリウッドの有名スター・アンジェリーナ・ジョリーもその買い手の一人だ。しかしバンクシーはその正体を秘密にしており、殆どどんなインタビューにも応じない。
ベツレヘムで展示を行っている他のアーティストたちは、この展示が占領下にある西岸地区での暮らしの有様への興味を引き、また地元のアーティストと世界各国のアーティストの繋がりを構築する一助となることを願っていると言う。イギリス人アーティストのピーター・ケンナードはロイターに対し、「単に美術作品の収集や電話での取り引きをするのではなく、人々がベツレヘムを訪ねて何が起こっているのかを実際に見ることが重要だ」と言う。ベツレヘムの住民たちによると、イスラエルが西岸地区に設けた軍の検問所とパレスチナ自治区を分断する分離壁は、観光産業を窒息させ、ベツレヘムの経済に損害を与えている。
バンクシーは2005年、イスラエルが自爆攻撃者を遠ざけるために建てたと主張している分離壁のパレスチナ側に風刺画を描き、各新聞の見出しを独占した。今回の新しい絵は、さらに興味を引く魅力的なものである。クリスマスにベツレヘムを訪れる人々は、弾痕dらけの民家の壁に描かれたハトの大きな壁画を目にするだろう。ハトはイスラエル軍監視塔の前におり、防弾チョッキを纏っている。他の場所では、バンクシーの絵の有名なキャラクターであるネズミが他の監視塔に対してパチンコを構えている。展示会では、石に腹部を貫かれ傷口から血が流れる天使の彫刻が展示されている。これらの展示物は最高価格で買い取られ、利益は地元の慈善団体に寄付される。
一部の市民は、イスラエル兵がロバに身分証明書を出すよう求める風刺画を理解せず、屈辱的なものと考えた。しかし展示会場の向かい側にある土産物屋の主であるサーリム・サルマーンは「この展示は笑えるし、政治的意図は正鵠を射たものだ」と言う。処女マリア像をエルサレムからの訪問者たちに売るサルマーンは、「この絵は気に入っている…ここの状況、つまり占領を描写している。イスラエル兵たちがいかに私たちを動物のように扱っているかを表している」と語った。
アメリカのミネソタから3か月前にベツレヘムへやってきたカトリックのトム・ウォーカー神父は、この絵に特に魅了されたと言い、作品は大きな政治的意味をもつものであると言う。ウォーカー神父は、「バンクシーの作品は本当に気に入った。特に、イスラエル兵がロバの証明書をチェックしている絵は私を魅了した。私は個人的に、検問所を何度も通り、侮辱を受けたことがある」とコメントした。
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( 翻訳者:並木麻衣 )
( 記事ID:12712 )