レバノン情勢、大統領選出の延期
2007年12月22日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ レバノン、米シリア間で緊迫
■ ビッリー、大統領選出を来週土曜に延期
■ 反体制派:ブッシュの支持とアドバイスは押し付け

2007年12月22日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ベイルート:サアド・イリヤース(本紙)】

ブッシュ米大統領は、バッシャール・アル=アサド・シリア大統領への苛立ちを表明し、一方、ワリード・アル=ムアッリム・シリア外相は、仏シリア間でレバノン大統領選に関する取引が行われているとの合衆国の疑惑に遺憾の意を表する中、ワシントン・ダマスカス間の緊張が高まり、レバノンは再び域内勢力関係及び国際関係の影響を被っている。ナビーフ・ビッリー国会議長は、本日に予定されていた大統領選出セッションを12月29日に延期した。延期はこれで10回目である。

延期の決定は、ニコラ・サルコジ仏大統領がアサド大統領に対し、既決どおり土曜に選出が行われる事を要請した数時間後に行われた。仏大統領報道官によれば、金曜、アサド大統領との電話会談でサルコジ大統領は、この土曜という期日が尊重され大統領選出作業が行われる事を希望するとし、フランスは、広範な支持を得られるレバノン大統領の選出にかつて無くコミットしていると述べた。

アメリカは長らく、シリアがレバノン内政に干渉し欧米に支持されているその政府を潰そうとしていると主張しているが、シリア側はその嫌疑を否定している。木曜(20日)、ブッシュ大統領は、かなり以前からアサド大統領に痺れを切らしていると述べ、ダマスカスに警告すると共に、1議席でも半数を越えれば、それをもって選出されるレバノン大統領への支持を世界に呼びかけた。

レバノン反体制派議員ミシェル・アウンは、米大統領の表現を奇妙であるとし、1票差で大統領選出が行われると人々に思い込ませようとしているのではないかと述べた。金曜に行われた国会内での同派閥間会合の後、アウンは、与党の様子を見れば1票差の大統領選出などという事が可能とは思えないと発言した。

ヒズブッラー副書記長、アル=シェイク・ナイーム・カーシムは、米大統領の言葉につき、憲法に反して大統領選出を行うよう、レバノン国内の欧米寄り派閥に直接命じたものとして、同大統領を不幸に思うが、2006年7月戦争以来現在まで、ブッシュ政権がレバノン国民に対して引き起こしてきた惨事には、そのような指令が関っている事にも留意していると述べた。

昨日ヒズブッラー代表団はシリアの首都を訪れ、政府高官らと会見し、レバノン情勢については大統領選出が話し合いの焦点となった。一方、アル=ムスタクバル派の長、サアド・アル=ハリーリ議員とファリード・ミカーリー国会副議長、バーシム・アル=サブア議員はサウジを訪問し要人と会談した。

ミシェル・スレイマーン国軍司令官を大統領候補として支持するキャンペーンは既に始まっており、ベイルートはじめ各地で、同司令官の写真の下に「救済者」と書かれたポスターが貼られている。スレイマーン司令官周辺によれば、同氏は1票差の選出から組閣まで、如何なる事についても事前に条件を付けられることを拒んでいる。もし選出されれば、政府の3分の1の権限を確保し同氏に忠実な閣僚を指名するだろう。国民合意の上に建つ政府に与野党が理解を示さなくてはならないが、詳細は、憲法に則り選ばれた大統領と政府に任されるべきとしている。

他方、マロン派総大司教、ナスラッラー・スファイルは、クリスマスメッセージの中で、紛糾している国内情勢に疑念を示し、如何にしてレバノンは、近隣諸国の中でも類を見ない自由と民主主義を自ら廃そうとするようになったのかと問いかけた。総大司教は、レバノン史上初の半月以上大統領不在という事態、半年近く機能していない国会、崩壊し続ける政府の間で国民の声は聞かれず危険な空白状態に至っていると批判し、現状を認識して意識を改めるべき時期であると述べた。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:12720 )