トルコ政府に目立った動き見られず -トルコ刑法第301条改正問題
2007年01月26日付 Radikal 紙
アゴス新聞総発行人のフラント・ディンクが殺害された。彼が標的にされる原因をつくったのが「トルコ人に対する侮辱(国家侮辱)」罪であるといえる。彼の死をもってさえも、この罪をつくりだしているトルコ刑法第301条改正のために、政治を動かすことはできなかった。アンカラの政治の舞台裏では、各政党が国会において、近づく総選挙で民族主義者の票を失いたくないため、301条に関連し働きかけることを放棄していると語られている。政権与党である公正発展党は改正への第一歩をしるすことを望んでいないように見える一方で、共和人民党は「301条改正には着手させない」という態度を示している。
301条は思想の自由にとって最大の障害であり、フラント・ディンク暗殺の直後に「301条は殺人者」というスローガンが掲げられるきっかけとなったが、その条項が改正されるために今まで具体的な進展はなかった。
■チチェキ法相は軽くかわした
法務大臣であるジェミル・チチェキは、ディンクの暗殺後にむけられた「301条は改正されるのか」という問いに「今はこの話題は出さないで欲しい。葬儀が滞りなく行われますように、と述べておきましょう」とかわした。
当初から301条の改正が必要だというメッセージを出していたアブドゥッラー・ギュル外相は、ディンクの暗殺の後も同じ意見を繰り返した。ギュル外相は、一昨日行なった会見において、301条のためにいくつかの問題が起きていることを述べる一方、「いくつかの改正を行なうことの必要性はわれわれも感じている。このために幾つかの市民団体と話し合っている」と述べた。
他の公正発展党執行部役員らは、301条の問題が作り出している現状を受け入れることを避けているだけでなく、改正に向けて具体的な第一歩を踏み出す必要があるという問題においても、明確なメッセージを発信することをしていない。
公正発展党党首補佐のエユプ・ファトサは、301条が改正され、訂正されることの必要性を述べる一方で、以下のように話した:「トルコには異なったエスニック・グループが存在する。単に「トルコ人に対する侮辱」を根本にすえるなら、これはだめである。「トルコ国民」という表現を「トルコ人」のかわりに用いることができるであろう。この条項はこのままでは平等、愛、同胞としての一体性のためにならない」
■「更なる改正が必要」
公正発展党党首補佐のファルク・チェリキはというと、301条が新たに改正されることに賛成であると述べる一方、「改正を実現するために、周りからの提案が必要である。市民団体はこの問題について提案を提出することができなかった。この問題は党執行部や閣議において議論されうるものだ」と話した。憲法委員会委員長で、公正発展党議員であるブルハン・クズの考えは次のようである:「301条を残す方向で、改正を加えることは可能である。「トルコ人」の代わりに「トルコ国民」という概念を追加することができる。根本にあるものは、検事たちや裁判官らの考え方を変えることである。」
公正発展党では、301条をめぐる論争の最終決定権はタイイプ・エルドアン首相にあると考えられている。エルドアン首相はまず党の中央執行委員会(MYK)と閣議にこの問題を議題として提出し、改正に向けてイニシアチブを取ることになるであろうと解釈されている。まずは党中央執行委員会においてこの問題が着手されることが期待されている。
■「暗殺と改正問題を一緒にすべきではない」
共和人民党は301条に関して、政府を攻撃する態度を続けている。共和人民党副党首であるヤルドゥムジュ・オヌル・オイメンは、フラント・ディンク氏暗殺後にこの問題について語る際、以下のように述べた:「このような事件や暗殺を、トルコの政治的な重要課題と一緒にすべきではない。暗殺が理由となって「トルコの政治的重要課題を改正しよう」というならば、これはあってはならない。301条は発言することをではなく行動することを裁く条項である。EU諸国にもこのような条項は存在する。裁判所などで間違って適用された場合には修正すればいい。しかし行動を有罪とすることをやめようと言うならば、こうした行動が合法的なものとなってしまう」
政府の、動き出すためにはまず「適用優先」というアプローチのしかたは、ディンク氏の裁判での判決だけでなく、その判決の根拠をもかなり失わせてしまった。最高裁判判決委員会は、検察局の破棄要求に対しディンク氏に関し、「トルコ人への侮辱」罪で6ヶ月の有罪判決を認めた。
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( 翻訳者:近岡由紀 )
( 記事ID:4457 )