ガザ地区住民数十万人が通行所を越えてエジプト領内に入国
2008年01月24日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ ガザ地区住民が食糧、タバコ、家庭用品、電化製品の購入のために殺到
■ ラファハの壁の爆破後、パレスチナ人数十万人がエジプトに流入
2008年01月24日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ラファハ:本紙アシュラフ・アル=ハウル】
昨日水曜日、イスラエルがガザ地区に対して行っている封鎖の結果不足した食料・燃料の購入と備蓄のため、数十万人のパレスチナ人が、活動家らの爆破した国境の壁を通ってガザ地区からエジプトへ流入した。ハミーダというファースト・ネームのみを明かしたエジプト人店主は、ガザ地区住民がエジプト・ポンドやイスラエルのシェケルで商品を買ったことで空っぽになった棚を見ながら、「彼らは、自由と食料とあらゆるものを渇望している」と語った。
エジプト外務省は、「国境協定の回復の方法について、イスラエルおよびパレスチナ自治政府とともに見直しを行うことを提案した」と語った。ラファハの住民は、「パレスチナ人活動家らが夜間に爆破を繰り返し、ガザ地区とエジプトの間に建っていた高さ6メートルの金属製の国境の壁を約200メートルにわたって破壊した。この壁は2004年、ガザ地区からの軍と入植地の撤退の1年前にイスラエルが建設したものだった」と語った。夜になっても、パレスチナ人がラファハのエジプト側へ流入しつづけた。中には家族全員を連れて行く者もあった。地元の責任者らは、住民が「大きな刑務所」と形容するガザ地区を出る稀な機会を捉えて少なくとも35万人が国境を越えると見積もっている。小さなカートを引いていたムハンマド・サイードは、「数ヶ月間暮らすのに十分なあらゆる家庭用品を購入した。食料、タバコ、そして自分の車のディーゼル燃料を2ガロン購入した」と語った。
ハマースの統治するガザ地区から度重なるロケット弾攻撃を受けていたイスラエルは、ガザ地区への圧力をかけ続けることに努めていたが、物品や燃料の不足とパレスチナ人の苦境に対して国際的な批判に直面する中、ラファハの壁の崩壊によりイスラエルの企てに新たな穴が開いている。しかし、イスラエルの主要な同盟国であるアメリカは、イスラエルを弁護し始めている。ホワイトハウスのダナ・ペリーノ報道官は、「ガザ地区のパレスチナ人はハマースのせいで無秩序の中で暮らしている。全ての非難はハマースに向けられるべきである」と語った。
ラファハからエジプト側へ流れ込んだ人びとの一部は、ロバに引かせた荷車に乗って、消費物資を詰め込むためのバッグを持参していた。カイロでは、エジプトのホスニー・ムバーラク大統領が、「ガザ地区からエジプトへのパレスチナ人の入国を許可するよう治安部隊に命令した」と語り、「武器を所持していない限り、食事をしたり食料を購入して帰還することを許してやるよう指示した」と続けた。
ガザ地区に対して行われている封鎖に関する一時的でなく恒久的な解決策が得られる可能性についての質問に対して、エジプト大統領は「恒久的な解決のために第一にすべきことは、パレスチナ人同士の紛争を停止することである。対立の継続こそ敵の最大の望みであり、敵は実際にそのように欲している」と語った。
しかしエジプト大統領は、ガザ地区の現在の状況をもたらした責任はイスラエルとハマースの双方にあるとの見解を示し、「ハマースがロケット弾発射をすることによって、イスラエルにこの困難で複雑な状況に至る機会を与えている」と発言し、この困難な状況を終わらせて、状況の打開にむけたメカニズムの糸口を見出そうと我々が努力しているのだから、ハマースはロケット弾発射を停止するべきだと求めた。
パレスチナ人目撃者は、「国境のエジプト側にいたエジプト治安部隊はパレスチナ市民の殺到に介入しなかった」と語った。イスラエルの治安当局筋は、エジプト・パレスチナ国境が侵害されていることに対して、「今後はエジプトがガザ地区の人道的要求に対応すべきだ」と語った。マアリブ紙インターネット版によると同筋は、「エジプトは昨日水曜日、イスラエルに対して、ガザ地区を完全に分離する決定を下す便宜を図ってくれた。イスラエル当局はガザ地区へ電力の緊急援助を行ってきたが、完全にガザ地区を分離する。ハマース政権は今後、住民への電力・食料・燃料の供給にあたって、エジプトのインフラに頼るべきだ」と付け加えた。
パリを訪問中のイスラエルのエフード・バラク国防相は、エジプトを非難しないよう努め、記者に対して、「私はエジプト側は自分たちの役割を知っており、それを尊重するだろうと考えている。これ以上、この問題に触れることを有益だと思わない」と話した。
最近、ラファハの地下トンネルを通して行われたガザ地区への武器密輸をエジプトが阻止できなかったとイスラエルが非難し、アメリカがイスラエルとパレスチナに促している和平協議の主要な支持国であるエジプトの怒りを買った。イスラエルのエフード・オルメルト首相は、「イスラエルにはガザ地区に人道的な危機をもたらす意図はないが、ロケット弾発射が続く限り、ガザ地区のパレスチナ人がぜいたく品を入手できないようにする」と語った。
また新たな展開としてパレスチナ筋が伝えたところでは、パレスチナ人数千人がラファハ通行所に突入していることに対してイスラエルは昨日水曜日、ガザ地区への燃料・ガスの供給を再度停止した。
ガザ地区の石油会社社主連盟のマフムード・アル=ハザンダール議長は、「連盟は2時間前、ガザ市の東にあるナハル・オズ軍事基地を通しての燃料・ガスの供給停止を公式にイスラエル側から伝えられた」と語った。ハザンダール氏は「今回の新たな措置についてイスラエルは、ラファハ通行所にパレスチナ人が突入して数千人の住民がエジプト領内へ越境したことを口実にしている」と語った。
エジプト側のラファハは、パレスチナ側のラファハの住民を待っていたようで、パレスチナ人は、食料やタバコ、ベッドや布団まで、あらゆる商品を買っている。ガザ地区住民は、携帯電話やテレビなど電化製品の購入に殺到し、ラファハやアリーシュの多くの店舗では在庫切れになっている。エジプト側のラファハの市場の商店主アブー・アフマドは、アラビーヤ・ネットに対して、「ここの商人は、尋常でなく前例のない需要があるために価格を上げた」と語った。
ガザ地区から来た20歳代のパレスチナ人アフマド・ハラーワは、「これは我々にとってのチャンスだ。包囲はもう沢山、ガザ地区で首を絞められているのも沢山だ」と語った。また、子供2人と同行していたウンム・ハサン・アル=グールは、「8人の子どものためにチーズの缶を5つ買った。シャーティー難民キャンプで暮らしており、夫の死後は、私は子どもたちのためのたった一人の稼ぎ手だ」と語った。
一部のパレスチナ人たちは、アリーシュ市(ラファハ通行所から南へ45km)で羊を買っている。また数百人の人々は食糧や生活必需品を詰めた袋を抱え、自動車やロバの荷車が空の状態でエジプトに入り、様々な生活必需品を積んでガザ地区に戻っている。
ガザ地区から来たある農民は羊を20頭買い、自動車に乗せてガザへ運んで戻った。また、セメントや建築資材を乗せたトラックが入っていった。ガザ地区では封鎖のために数ヶ月前からこれらの物資が不足し、建設作業が中断されていた。
パレスチナ治安機関の元メンバーのジャマールは息子と一緒に、空のプラスチック容器4つを持ってやって来て、「もうガザでは手に入らなくなったので燃料を買いたい」と語った。
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( 翻訳者:梶田知子 )
( 記事ID:13055 )