スカーフ解禁のための憲法改正案、議会通過
2008年02月10日付 Milliyet 紙

公正発展党と民族主義者行動党による、高等教育機関でのスカーフ解禁を盛り込んだ憲法改正草案が、国民議会の総会にて411票で可決された。共和人民党議員たちはこの決定を「トルコの暗黒革命」と位置付けた。

公正発展党(AKP)と民族主義者行動党(MHP)の「高等教育機関でのイスラーム風スカーフ解禁」に関係する憲法改正案が、議会総会にて411票で可決された。この改正案は司法、大学管理側をはじめ社会の様々な方面から反発をうけ、何日もの間、トルコの重要な政治課題のひとつとなっている。

トルコ大国民議会のキョクサル・トプタン議長は、投票の開始に際して「寛容と妥協」を呼びかけた。その一方で共和人民党は、公正発展党と民族主義者行動党に対し、「世俗主義」を軸に厳しい批判を向けた。共和人民党は、第2回投票で女性議員を壇上に登らせ、法案を「暗黒革命、政治体制にかぶせられた袋」と位置付けた。
トゥンジェリ選出の無所属カメル・ゲンチ議員が「占拠」を呼びかけ、演壇にとどまったことで緊張が生じた。この法案は、国民投票にかけることができる367票を大幅に超えた票で承認されたため、人々の注目は、「今回の改正を国民投票にはかけない」とメッセージを発したアブドゥッラー・ギュル大統領に向けられた。

■緊張の集会
総会で4時間半議論されたこの法案の第2回投票は、緊張の中で行われた。トプタン議長は自らのスピーチの中で、トルコが民主的、世俗的、社会的な法治国家であることを強調した。そして、この特徴が同時に共和国の特徴であると述べた。トプタン議長は、「共和国の基本的特質を断念することは、国家の特徴を放棄するようなものだ。誰もそのようなことは考えないし、考えられない、そのようなことはしないし、出来ない」と述べた。

共和人民党、民主トルコ党(DTP)、民主左派党(DSP)、そしてゲンチ議員の提出した変更案は、公正発展党と民族主義者行動党の票によって否決された。全体で行われた投票でこの法案は、反対103票、賛成411票だった。1票が棄権、1票が無効票だった。
改正法案は、憲法の第10条「法の下における平等」に関する変更を盛り込んだ第1条が、反対107票、賛成403票で承認された。この投票では4票が棄権、5票が白紙票だった。憲法の第42条「教育・指導を受ける権利」を改定した第2条については、賛成が403票、反対108票、棄権2、白紙票5だった。施行について定めた第3条は、102票の反対票に対し、賛成411票で承認された。

■「トルコの暗黒革命」
法案の第1回目の投票前の議論では、主に公正発展党の女性議員たちが意見を述べる一方で、9日(昨日)は共和人民党の女性議員が演壇に登った。共和人民党のイズミル選出のジャーナン・アルトマン議員は、イスラーム風スカーフが、教団や帝国主義の旗のような政治的シンボルであり、制服であると述べた。アルトマン議員は、次のように述べた。「ウクライナの『オレンジ革命』のように、これはトルコの『暗黒革命』です。暗黒革命の目的は、トルコ共和国を設立したあの自由な精神の力を、暗闇で覆うことです。暗黒革命は、狡猾な独裁主義で実現されています。この黒い短剣が国の心臓に突き刺さる前に、立ち止まって考えるべきです。その傷からでる光が、彼らの目を見えなくしてしまうでしょう」

■「民族主義者行動党は予備のスペア・タイヤ」
共和人民党、イスタンブル選出のビフルン・タマイルギル議員は、「ここでただスカーフについて議論しているわけではありません。共和国の頭にイスラーム風スカーフをつけていかに破壊するか、政治体制にいかに袋をかぶせるかを考えている政権の策略を議論しているのです」と話した。タマイルギル議員は民族主義者行動党を「スペア・タイヤ」と位置付け、「あなた方のスペア・タイヤである民族主義者行動党がかつてあなた方の前に投げ出した「油のついたヒモ」が、今日、世俗的で民主的な共和国の首に巻きついていると喜ばないように。共和国に報復しよう、世俗主義にリベンジしようとしないで下さい」と語った。

■演壇の占拠を呼びかけ
第1条について発言したケマル・ゲンチ議員は、「憲法の頚動脈が切られようとしています。あなたたちは今日、トルコを埋葬しようと話し合いをしているのです」と述べた。
ゲンチ議員は「演壇の占拠」を呼びかけ、次のように述べた。「血と闘争でつくりあげられたこの共和国が破壊されるというときに、我々はどうして寛容を示し、黙ることができるでしょう?世俗的な共和国を守ることは、統治者の言葉によってではなく、行動によってなされるのです。さあどうぞ演壇のまわりを囲みましょう。行動とは、こうすることです。あなたたちは世俗的な共和国を第一回目の投票で集中治療室に運びました。今回の投票で殺すおつもりでしょう」

ゲンチ議員の持ち時間が終わったにもかかわらず演壇から離れないので、トプタン議長は、「議論を妨害しないで下さい」と警告した。トプタン議長は、ゲンチ議員が演壇から離れないので議会を休憩とした。
この時、公正発展党の国会管理統括官のムフイェッティン・アクサク議員と、ビンギョル選出のユスフ・ジョシュクン議員がゲンチ議員のそばまで行って、演壇から離れるよう要請した。この試みにCHPの議員たちは反発した。求刑の後にゲンチ議員が再び演壇に立つことを要請すると、トプタン議長はそれに反発し、「どういう行動なのでしょうか?発言すべきことは、すでに発言されましたよね。お座りください」と言った。
民主左派党のエスキシェヒル選出タイフン・イチリ議員は、「政府は国民、軍部、欧州人権裁判所を恐れているのか?それらを恐れていないのなら、国民を恐れているのだろうか?恐れていないのであれば、ここに明確に『イスラーム風スカーフ』という表現を使っただろうに」と述べた。

■公正発展党と民族主義者行動党で少なくとも7票減少
スカーフ法案の投票では、公正発展党・民族主義者行動党側は少なくとも7票を失った。民主市民党議員が「賛成」票を投じたとすれば、公正発展党・民族主義者行動党同盟の減少した票は15票となる。投票結果の分析は次のとおりである。

・第1条
408票あるべき賛成票は、無所属のセイト・エユボウル議員と大統一党のムフシン・ヤズジュオール党首が賛成票を投じたことに着目すれば、全部で7票減少した。民主市民党が賛成票を投じたのならば、減少数は15に上る。共和人民党と民主左派党が97票であったにも関らず、107票の反対票がでた。3人の無所属議員、 ÖDPのウフク・ウラス党首と8人の民主市民党議員も投票にいたことに注目すると、これらから10票が反対側に動き、2票が賛成側から動いた7票とともに棄権票と白紙票となった可能性があるという見方が示された。

・第2条
共和人民党で不参加の議員数は17人に達した。公正発展党・民族主義者行動党からは408人の議員が投票に参加した。民主市民党からの参加者は8人から10人に増加した。共和人民党からの参加が3人減ったにも関らず、「賛成」票に変化がなかったことは、「反対」が1票増えたことと、2人の民主市民党議員が反対票を投じたことを示している。

・第3条
民族主義者行動党と公正発展党の合計は406票である必要があるが、賛成票は411票だった。共和人民党の出席者は一人追加で82人だった。民主左派党および民主市民党はそれぞれ13人、10人だった。無所属議員5人のうち3人が欠席したため、3票は投票されなかった。共和人民党と民主左派党あわせた「反対」票は、95票である必要があるが、7票多かった。

・法案全体に対する投票
公正発展党・民族主義者行動党は、408人の議員で投票に参加した。「賛成」票が2票増えるはずのところ、411票が投じられ、反対票は1票増えて103票となった。1票が棄権、2票が白紙、さらに1票が無効票だった。この状況により、公正発展党の2票が、「賛成」票として投じられなかった可能性が協議された。

■今後はどうなるのか?
法案が、367票という国民投票のラインを越えて承認されたため、人々の目はギュル大統領に向けられた。憲法はギュル大統領に、「法案をトルコ大国民議会に戻す」、「承認」、もしくは「国民投票にかける」という選択肢を与えている。しかし以前にギュル大統領は、基本的人権と自由が国民投票の対象となることに反対であることを強調しており、今回の改正を承認すると見られている。見込まれているギュル大統領の承認後、改正は官報で発表された時から有効となる予定だ。

高等教育機構法の補則第17条の調整が国民議会を通過しないままで、憲法改正が有効となると、この状況は大学の入口で起こりうる議論の原因となるだろう。大学当局は、関連法での変更がないことを理由に、イスラーム風スカーフを着用した学生たちが大学に入構することを妨害することができる。

■どの条項が改正されたのか?
第1条では、憲法の第10条「法の下における平等」は、「政府機関や行政局は、全ての手続きやあらゆる公共サービスを供与する際に、法の下での平等原則に適したかたちで行動しなければならない」と変更される。

第2条では、憲法の第42条「教育・指導の権利と義務」を、「法に明記されていない理由によって、いかなる人も高等教育を受ける権利をはく奪されてはならない。この権利の行使の限度は、法律によって明示される」と新しい項が追加される。

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:13095 )